34.魔王の記憶 その4
アイカ「早く、あいつら帰ってこないかなぁ」
リョウキ「息するのもめんどくせぇ」
アイカはリョウキを見て、深いため息をついた。
そこへ
「お待たせ!!」
サクナたちが手を振りながら戻ってきた。
アイカ「おせぇよ。何時間待たせんだ」
サクナは苦笑しながら、手にした剣を見せる。
サクナ「ごめんね。この剣に合う“さや”をドワーフの職人さんに作ってもらってたの。時間かかっちゃって」
アイカはリョウキを指さした。
アイカ「じゃあ早く、こいつの息の根を止めてくれ」
サクナは静かに剣を抜いた。
刃の周りに炎が舞い上がる。まるで生きているような、不思議な炎だった。
次の瞬間、サクナは風のような速さでリョウキへ飛び込んだ。
ズバッ! ズバッ、ズバッ!! ズバッ、ズバッ、ズバッ!! ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ!!
リョウキの巨体は、一瞬で細かい肉片へと変わった。
そしてその肉片は光の粒子になり、空へと消えていく。
魔王軍四天王リョウキの死とともに、 裏切り者であるメイメイの脳裏に“魔王の記憶”が流れ込んだ。
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【魔王の記憶】
魔王は圧倒的な力で人間界を支配した。
だが
魔王「虚しい」
心に空いた穴は、どれだけ勝利を重ねても埋まらなかった。
そんなとき、異世界から勇者4人が召喚された。
魔王はほんの少しだけ期待した。 「この虚しさを埋めてくれる存在かもしれない」と。
しかし、討伐される直前になっても何も変わらなかった。
死の間際、初恋の人間の女性の姿が脳裏に浮かぶ。
そして気づく。
(私は……人間になりたかったんだ)
(家庭を築き、子どもに囲まれて……普通に死にたかった)
もし生まれ変われるなら、人間として生きたい。
だが、魔王はまた“魔王”として蘇ってしまった。
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メイメイの目から涙がこぼれた。
アイカ「どうした、メイメイ!」
メイメイ「いや……なんでもない」
涙を拭い、メイメイは顔を上げる。
メイメイ「これで魔王軍四天王は全員討伐された。魔王城の結界も解けた」
メイメイ「魔王様を……助けて、そして討伐しに行くよ」
*
そのころ、魔王城では、結界が解けたことで大パニックになっていた。
魔王「誰だお前。こんな忙しいときに……なんの用だ」
タイガーは魔王の前で震えながら答えた。
タイガー「ま、魔王様……リョウキ様からの命令で、この娘を魔王様のもとへ連れてくるようにと……」
魔王はナギをじっと見つめた。
似ている。 あの“初恋の人間の女”に、あまりにも。
本能で分かった。 この娘は、あの女性の“子孫”だ。
魔王「……で、その女がどうしたというんだ」
タイガー「え?」
魔王「そいつは、あの女じゃない」
タイガー「……」
緊張で声が出ない。
魔王「リョウキは何のために、この女を連れてきたんだ。答えろ」
タイガー「わ、わかりません……」
魔王「なんだと」
タイガー「サクナ姫を誘拐するはずが、急にこの娘に変更しろと……理由は聞かされていません」
魔王「……リョウキの馬鹿め。何がしたかったんだ」
魔王は手を振った。
魔王「もういい。お前も戦争に備えて準備しろ」
タイガー「は、はい!」
立ち去ろうとしたタイガーに、魔王が声をかける。
魔王「おい。その女も連れていけ」
タイガー「あっ……はい!」
焦りでナギの存在を忘れていたらしい。
魔王はふと、タイガーに視線を向けた。
魔王「お前、名前は?」
タイガー「タイガー……ロウナ・タイガーです」
魔王「ロウナ……? 滅びた人間国家“ロウナ家”の名だよな」
タイガー「はい。私は……人間と魔族のハーフです」
魔王「……!」
魔王は目を見開いた。
魔王「そんな……そんなことがありえるのか」
魔王「嘘をつくな」
タイガー「本当です。」
人間と魔族の間に子供は生まれない。それは世界の常識だった。
人間と魔族は“別の生き物”だと思っていた。
だから彼女と一緒になれないのだと。
だが、人間と魔族の間に子どもが生まれるのなら。
もしかして、もともと同じ生き物だったのではないか。
ただ進化の過程で姿が変わっただけで、 本当は“共に生きられる存在”なのではないか。
魔王の胸に、初めて“希望”が灯った。
魔王はタイガーを見つめ、そしてナギを見つめた。
(……私の夢が、叶うかもしれない)
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