33.ドワーフ王国
ドワーフの国にたどり着いたアイカたちは、5メートル超えのリョウキをどうするか頭を抱えていた。
アイカ「こんなデカいのがドワーフ王国に入ったら、秒で捕まるだろ」
メイメイ「しかたない。おれが外で見張っとくから、みんな楽しんできてくれ」
アイカ「…………」
アイカ(信用できねぇ……)
メイメイはこれまでに、勇者パーティー崩壊レベルのやらかしを何度もしている。
アイカ「いや、いざとなったら戦える俺が見張る」
メイメイ「そうか。悪いな」
こうして、リョウキとアイカは外に残り、他のメンバーはドワーフ王国の門をくぐった。
賑やかな音楽、色とりどりの提灯、香ばしい肉の匂い。 今日は年に一度の大祭で、街はお祭り騒ぎだった。
バイオレット「祭りだ!! よっしゃ!楽しむぞ!!」
叫んだ瞬間、バイオレットは弾丸のように駆け出した。
マイマイ「ちょ、待ってよバイオレット!!」
慌てて追いかけ、ようやく合流する。
マイマイ「あれ……サクナさんたちがいない」
二人は屋台通りを歩きながらサクナたちを探すことにした。
しかしバイオレットは探す気ゼロで、 ドワーフ特製の炭火焼き肉串の屋台のおっちゃんと盛り上がっていた。
マイマイ「バイオレット!!」
バイオレットは肉串を一本渡す。
バイオレット「やるよ」
マイマイ「ありがとう」
バイオレットは豪快にかぶりついた。
バイオレット「これ……今まで食べた中で一番うまい!!」
マイマイ「うん、おいしい……!」
二人が幸せそうに食べていると、突然、広場に重々しいアナウンスが響いた。
「伝説の剣を抜くイベント、開始だ!!」
ドワーフたちの歓声が爆発する。 広場の中央には、分厚い石床に深く突き刺さった一本の鉄の剣。
マイマイ「なんだろう、あれ……」
バイオレット「行ってみよう!」
広場では、筋骨隆々のドワーフが必死に剣を引き抜こうとしていた。
ドワーフ「ぬぬぬ……抜けん……!」
バイオレットは腕を組んで呆れる。
バイオレット「あのドワーフで抜けないなら、誰が抜けるんだよ……」
そこへサクナが手を振りながら駆け寄ってきた。
サクナ「マイマイ!! バイオレット!!」
マイマイ「サクナさん、メイメイさん!!」
バイオレットがサクナに向き直る。
バイオレット「サクナ、メイメイ。あの剣……おそらく前勇者が使っていた“魔族だけを斬れる剣”だ」
メイメイ「うん。あれじゃないとリョウキの息の根は止められない」
サクナ「任せて」
サクナは静かに剣へ歩み寄った。
アナウンス「次の挑戦者は――おっと、人間の女の子?」
ざわめくドワーフたち。
「なんだ、人間の女か?」
「抜けるわけないだろ」
「腕細すぎるしな」
「まあ見てろ、石の冷たさでも味わうんだな」
失笑が広がる中、サクナは剣の柄にそっと手をかけた。
呼吸を整え、静かに目を閉じる。
そして
サクナ「んっ……!」
ごうっ、と地面の魔力が反応するように震えた。
次の瞬間、剣はまるでサクナに応えるように、静かに抜けた。
観客たちが息を呑む。
剣が陽にさらされた瞬間、鉄の剣は燃え上がるような炎の剣へと姿を変えた。
刀身から吹き出す紅蓮の焔。 その熱気に、近くの者たちが思わず後ずさる。
沈黙。
ひとりの老ドワーフが震える声で呟いた。
「選ばれし者が……現れた……!」
サクナは炎の剣を手に、茫然と立ち尽くしていた。
その瞳には、ゆらめく火が映っていた。
そして、数十分後。
\ドンチャン♪ ドンチャン♪/
\ワッショイ! ワッショイ!/
その時、サクナは空を見ていた。
サクナ(なんで私……神輿に乗ってるの……?)
神妙な顔で担ぎ上げられているのは、先ほど伝説の剣を抜いてしまったサクナ。
その下では、テンションMAXのドワーフたちが彼女を担いで広場を練り歩いていた。
「サクナの姉貴ィィィ!!」
「ワッショイ! ワッショイ!」
「伝説の剣抜いた女神だぁああ!」
\ワーワー! キャー!/
メイメイ「いつの間に“姉貴”ポジションに!?」
マイ「扱いが急に神格化してない……!?」
バイオレット「アハハ!ウケる!」
サクナ(誰か助けてください)
ドワーフA「さあ、神輿のまま屋台10周だァァ!!」
ドワーフB「伝説の者には、焼き肉串100本だァァ!!」
ドワーフC「あと、伝説のお酒も飲んでもらわねぇと!!」
メイメイ「……剣抜いただけでここまでなるとはね」
バイオレット「うらやましい」
マイ「うらやましい?」
こうして、サクナの伝説は、ドワーフたちの間で語り継がれることになる。
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