32.新しい仲間 その3
魔王軍四天王リョウキを倒したアイカたちは、囚われていた教会の人々を解放した。
司教「マイマイ、お久しぶりですね。
また一緒に働きましょうね」
その声を聞いた瞬間、マイマイの顔から血の気が引いた。
マイマイ(……また、あの地獄が始まる)
聖女の力を持つがゆえに売られ、
無理やり働かされる日々。
自由のない生活。
マイマイは、肩を落として絶望した。
司教「死ぬまで、私と一緒に人を助けましょう」
その言葉は優しい響きなのに、逃げ場を塞ぐ鎖のようだった。
バイオレットは、マイマイの表情を見て何かを察した。
彼自身、故郷の村で馴染めなかった。
村人たちは先祖代々同じ生き方を繰り返し、
考えることをやめていた。
その“思考停止した村の連中”と、今のマイマイの顔が重なって見えた。
司教「命の恩人よ。本日は助けていただき、ありがとうございます。
夜も遅いですし、どうぞ空いている部屋でお休みください」
バイオレット「うむ。そうさせてもらおう」
司教「ちなみに、お名前は?」
司教は微笑む。
バイオレット「うむ……秘密だ!! 名乗るほどの者でもない!」
司教「……そうですか。残念です」
司教は悲しそうに目を伏せた。
バイオレットはアイカとサクナのもとへ歩み寄る。
バイオレット「相談がある」
突然の言葉に、アイカとサクナはぽかんと口を開けた。
夜。一室。
マイマイは小さなベッドの上で、声を殺して泣いていた。
マイマイ「……誰か、助けて……」
そのとき
バンッ!
勢いよくドアが開いた。
マイマイ「……だ、誰!?」
驚きで目を見開く。
バイオレット「迎えに来たぞ」
マイマイ「……え?」
バイオレット「ここを抜け出して、自由になろう」
マイマイ「ど、どうして……?」
バイオレット「……お前、ここにいるのが辛そうだったからな。
一緒に旅に出よう!」
マイマイ「でも……!」
戸惑いが声に滲む。
マイマイ「私は……親に売られて、所有権は司教様にあります。
私に自由の権利はありません」
バイオレット「お前、馬鹿なのか?」
マイマイ「……え?」
バイオレット「いたくもねぇ場所に縛られるなんて、おかしいだろ」
マイマイ「でも、ルールだから……」
バイオレット「世間が決めたルールがなんだよ。お前はお前だ」
バイオレットは胸を張り、得意げに言った。
バイオレット「俺の好きな物語に、こんな教えがある。
“嫌なことからは逃げればいい。逃げるのは負けじゃない。逃げるが勝ち”ってな」
マイマイ「それは……違うような……」
呆れたように眉を寄せるマイマイ。
バイオレット「……5秒以内に決めろ」
マイ「ええぇっ!? ちょ、待っ——」
バイオレット「4」
マイ「ま、待って!」
バイオレット「3、2——」
マイ「うぅっ……!」
バイオレット「1」
マイ「……行く!」
バイオレット「0。よし、いくぞ少女よ」
マイ「……私の名前はマイマイ。あなたは?」
バイオレットはニッと笑い、胸を張る。
バイオレット「フッ……天才バイオレット様だ!!」
マイは慌てて荷物をまとめ、眠っていた部屋を飛び出した。
バイオレット「マイマイ、早くするのだ!」
一方そのころ、外ではアイカたちがバイオレットたちの帰りを待っていた。
アイカ「……あいつ、やるじゃん」
鼻をこすりながら、どこか誇らしげに呟く。
サクナ「うん。かっこいいねぇ」
サクナは嬉しそうに何度も頷いた。
メイメイ「バイオレットって、いいやつだったんだな」
リョウキ「人間はむだなことをする。どうせすぐ死ぬのに」
その言葉に、アイカは鋭い視線を向ける。
アイカはため息をつく。
アイカ「サクナ姫。」
サクナ「うん?」
アイカ「サクナ姫。申し訳ございません。あなたの護衛の件……なしでお願いします」
サクナ「サクナでいいよ。それに大丈夫だよ。これからドワーフ王国に向かうんだよね?」
アイカは深く息を吸い、真剣な表情でサクナを見る。
アイカ「サクナ。改めて言わせてもらう。俺たちの仲間になって、魔王を一緒に討伐してくれ」
差し出されたアイカの手を、サクナは嬉しそうに握り返した。
サクナ「喜んで」
その笑顔は、夜の空気を明るくするほどだった。
メイメイ「やったね!」
リョウキ「むだだよ。どうせお前らみんな寿命で死ぬんだから、意味ないよ」
アイカ「なぁメイメイ。こいつの性格、どうにかならないか?」
リョウキはメイメイの能力で人格を変えられている。
メイメイ「うん……考えとく」
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