31.無敵男の倒し方
サクナ姫「はああああっ!!」
銀色の剣が夜の闇を切り裂き、リョウキの胸に深く突き刺さった。
だが、流れた血が地に落ちるより早く傷は塞がる。
リョウキ「いいねぇ! もっとやれよ!」
アイカ「黙れぇぇぇ!!」
アイカの拳が雷のようにリョウキの顎を跳ね上げる。
巨体がわずかに揺れた。だが倒れない。 むしろ、楽しそうに笑っていた。
リョウキ「お前ら、最高だなぁ!」
サクナ姫「くっ……再生が速すぎる!」
アイカ「どんだけ殴っても効かねぇ……!」
リョウキは腕を軽く振っただけだった。
ドガァァァン!!
二人の身体が吹き飛び、地面が砕け散る。
土煙の中、二人は転がりながらも立ち上がった。
アイカ「まだだ……!」
サクナ姫「立ち止まれません……ナギちゃんを取り戻すまでは!」
二人は再び飛び込む。 だが、リョウキは完全に“遊んでいた”。 その余裕が、逆に絶望を深める。
少し離れた場所で、バイオレットは必死に頭を回していた。
バイオレット「……ダメだ。物理も魔法も効かない。再生速度が異常すぎる……!」
バイオレット「じゃあどうすれば倒せるんだよ!」
メイメイは静かに言った。
メイメイ「倒す……のは無理だと思う」
バイオレット「はぁ!? じゃあどうすんだよ!」
マイマイ「封印……?」
バイオレットは顔をしかめる。
バイオレット「でも封印なんて……誰がやるんだよ!」
マイマイ「そうですね」
その瞬間、メイメイはふっと笑い、戦場へ向かって歩き出した。
バイオレット「おい!! どこ行く気だよ!」
メイメイ「大丈夫!!」
その間にも戦場では
リョウキの拳がアイカの腹を貫いた。
ドガァァァン!!
アイカ「ぐっ……!」
サクナ姫「アイカ君!!」
リョウキは笑いながら近づく。
リョウキ「そろそろ終わりにするか?」
アイカは膝をつきながらも睨み返す。
アイカ「まだ……まだだ……!」
リョウキが拳を振り上げた、その時。
メイメイ「いいや、終わりにしよう」
静かな声が戦場に落ちた。
メイメイはリョウキの背後に立っていた。
その小さな手が、巨体の背にそっと触れる。
メイメイ「記憶改ざん」
リョウキの表情が一瞬で変わった。 青ざめ、震え、そして叫び出す。
リョウキ「やめろ……やめろやめろやめろ!!」
巨体が膝から崩れ落ちた。
アイカ「おい、何をした?」
メイメイは肩をすくめる。
メイメイ「こいつの記憶をいじって、殺人鬼から“自殺願望者”に変えてみた」
リョウキ「ああ……自分なんて……ゴミだ……」
リョウキ「生きていてごめんなさい。」
サクナ姫「………」
バイオレット「さっきの封印の会話なんだったんだよ……」
マイマイ「メイメイさん、こわい……」
メイメイはパンパンと手を払う。
メイメイ「で!!どうする?」
バイオレット「どうするって……!」
メイメイ「リョウキを倒さないと魔王城の結界がとけないけど。 こいつ、不死身に近いからな!」
アイカはしばらく考えた。 血を吐きながらも、目はまだ死んでいない。
アイカ「……そういえば」
全員がアイカを見る。
アイカ「ナギの前世の記憶では、ドワーフ王国に“勇者の剣”が眠っているって言ってた。 前任の勇者が使っていた剣だ。 人間は切れないが、どんな魔族でもダメージを与えられる」
バイオレット「そんな都合のいい武器が……本当にあるのかよ」
アイカ「あるんだよ。ナギが言ってた。あいつは嘘つかない」
メイメイは腕を組み、ふむと頷く。
メイメイ「なるほどねぇ。 不死身でも“再生を上回るダメージ”なら通るかも。 勇者の剣
なら、理屈は合う」
アイカは拳を握りしめ、血の滲む唇を引き結んだ。
アイカ「とりあえず、ドワーフ王国へ行くか!!」
サクナ姫「うん……そうだね!」
サクナ姫はぱっと表情を明るくした。
アイカたちと一緒に旅ができる、その事実が、彼女の胸を温かくしていた。
だが。
その横で、マイマイだけは俯いていた。
小さな手をぎゅっと握りしめ、唇を噛む。
マイマイ(……私は、行けないかもしれない)
彼女は“司教様の所有物”として扱われている。
親に売られ、自由など一度も与えられなかった。
マイマイ(みんなと一緒に行きたい……でも……)
サクナ姫の喜びとは対照的に、 マイマイの胸には重い影が落ちていた。
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