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不幸少女は、二度目の人生で勇者を救いたい  作者: 梅道
第5章 魔王軍四天王リョウキ(回復を操る魔族) 編
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29.不幸少女は誘拐される

ドドドドドドドドド……!


まるで空間そのものが引き裂かれたような、重く響く衝撃音が戦場に広がった。


その音は地面を震わせ、周囲の空気までビリビリと揺らしている。


大聖堂の前。そこに、再び“魔族の軍勢”が姿を現した。


アイカ「……は?」


バイオレット「え?」


サクナ姫「魔王軍が……分かれていた部隊が戻ってきた!」


三人の声には、驚きと焦りが混ざっていた。


夜の闇を押しのけるように、黒い影の集団がゆっくりと進んでくる。


たいまつの炎が赤く揺れ、鉄の鎧に反射して、不気味な光を放っていた。


その光景は、まるで夜そのものがこちらに押し寄せてくるようだった。


そして、その軍勢の先頭には、ふわふわと空中に浮かぶ、幽霊のメイメイがいた。


メイメイ「ただいまー」


アイカ「いや、戻ってくるな!」


緊張した空気の中で、その軽い声だけがやけに響く。


メイメイの後ろには、魔王軍の兵士たちが整然と続いていた。


メイメイ「バイオレットの魔法が切れてさぁ。誘導に使ってた人形がなくなってさぁ。

そしたら、この連中がリョウキのところに向かい始めちゃって」


まるで他人事のように、メイメイは説明する。


そのとき、戦場の奥から、地面を揺らすような怒号が響いた。


リョウキ「メイメイ!! なぜ生きている!!」


空気が一気に重くなる。


メイメイ「いや。死んでるよ!!だから幽霊なんだよ!!」


メイメイはふわふわと空を飛んでいる。


リョウキと魔族たちは理解できていない。


リョウキの顔をしかめる。


リョウキ「この世界の秩序をみだすな!!」


その声だけで、周囲の兵士たちの動きが一瞬止まった。


まるで時間が止まったかのような静寂。

だが、その静けさはすぐに崩れる。


バイオレット「まずい……このままだと、数で押しつぶされる!」


マイマイ「あわわわわ。」


サクナ姫「戦って散るのみ……!」


誰もが覚悟を決めかけた、その“わずかな混乱”。

それが、致命的な隙になった。


みんな自分のことで精一杯だった。


ヒヒィィン!!


鋭い馬のいななきが夜を切り裂く。

次の瞬間、黒い影が一直線に走り出した。


タイガー「……今だ」


月の光を背に受けながら、タイガーが馬で突撃する。


その狙いは、ナギだった。


ナギ「えっ」


サクナ姫「ナギちゃん!!」


アイカ「やめろ!!」


叫び声が重なるが、距離は一気に詰まっていた。

タイガーはナギの体を素早く抱え上げ、そのまま馬の上へ引き上げる。


ナギ「アイカ君!!」


アイカ「ナギ!!」


短い叫びが夜に消えていく。


リョウキ「タイガー、よくやった。」


低く、冷たい声が響いた。


タイガー「はい」


まるで命令を待つ兵士のように、タイガーはすぐに返事をする。


リョウキは戦場を一度だけ見回し、短く言った。


リョウキ「ナギを連れて、魔王城へ退避しろ」


リョウキ「これは“保護”だ。絶対に手放すな」


アイカ「ふざけるな!!」


怒りの叫びが響くが、リョウキは動じない。


リョウキ「勇者よ」


リョウキ「安心しろ。殺すつもりなら、もうやっている」


その言葉は冷たいのに、どこか“事実”のようでもあった。


リョウキ「全軍撤退。勇者一行は俺が止める」


その一言で、魔族の軍勢が一斉に動き出す。


それは混乱した逃走ではない。

きちんと命令に従った、整った撤退だった。


ヒヒィン……


馬の足音が遠ざかっていく。


ナギ「アイカ君!!」


アイカ「ナギ!!」


互いの声だけが、夜の戦場に響いて消えていく。


アイカが追いかけようとした。


するとドン、と重い音が落ちるように、アイカの目の前に巨大な影が立ちはだかった。


身長5メートルを超える圧倒的な巨体。


鋼のように盛り上がった筋肉。


闇の中でも赤く光る瞳。


魔王軍四天王リョウキ。


戦場にはもう、アイカたち仲間とリョウキだけが残されていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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