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不幸少女は、二度目の人生で勇者を救いたい  作者: 梅道
第1部 魔王退治 第1章 タイムリープ
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不幸少女は勇者の死亡ルートを回避したい

ナギが過去に戻る少し前のこと。


賭博場の外。警備員に肩を押され、路地へ放り出された少年が膝をついた。

アイカ。16歳。震える手で地面を支えながら、通りすがりの女性にすがる。


アイカ「……お金が必要なんです」


女性は驚きながらも、困窮した姿を見て足を止めた。


「詳しく聞かせて」


近くの喫茶店で、アイカは震える声で事情を話した。


アイカ「すべてを失った俺に、優しくしてくれた女の子がいて……その子が、明日競売にかけられるんです。買い戻したくて……」


アイカ「賭博場で増やそうとしたんです。一度勝ってしまって……やめられなくて……全部失ってしまった」


女性は静かに名乗る。


サクナ「私の名前はサクナ。君の名前は?」


アイカ「アイカです」


サクナは真剣な瞳で尋ねた。


サクナ「その子は……どうして売られるの?」


アイカは俯き、声を絞り出す。


アイカ「誘拐されたんです。必死で探して……やっと見つけた。でも明日、競売にかけられるって聞いて……お願いだ。お金をください」


サクナはため息をつき、手を差し出した。


サクナ「落ち着いて。お金なんかいらない。奪われた人を取り返せばいいだけよ」


アイカ「え?」



二人は奴隷市場の入口に移動した。

サクナは静かに剣を抜いた。


サクナ「アイカ、僕についてきて。目的の子を見つけたら教えて」


アイカは黙って頷き、二人は建物の中へ潜り込んだ。

サクナは次々と警備を制していく。刃が光るたび、通路の空気が震えた。


アイカ(……この人、強すぎる)


扉を切り破ると、薄暗い部屋が広がる。

その奥、鉄格子の檻の中で、鎖につながれた少女が震えていた。


ナギ。


ナギ「……アイカ君……?」


アイカ「ナギ!!助けに来た!!」


ナギの瞳が揺れ、声が掠れる。


ナギ「アイカ……」


アイカが走り寄った瞬間、奴隷商人がピストルを構えた。


奴隷商人「動くな!」


ナギ「アイカ!!危ない!!」

銃声が響く。 弾丸はアイカの額に直撃したが、跳ね返って地面に転がった。


奴隷商人「……え?」


驚く男をよそに、アイカは鉄格子を素手でひねり曲げた。 金属が悲鳴を上げる。


アイカ「ナギ!!」


ナギを抱きしめる。震えているのはアイカの方だった。


アイカ「……よかった……本当に……」


ナギも力いっぱい抱き返した。


その時、剣閃が走り、奴隷商人が倒れ伏した。 サクナが立っていた。


サクナ「銃弾を弾くその身体……やっと見つけた。異世界から来た勇者様」


背後から男たちが押し寄せるが、サクナは一歩も引かず、次々と倒していく。


その姿を見たナギの顔が絶望に染まった。


ナギ「あの人……この国の……」


ナギは震えた。 サクナ姫は、アイカを魔王討伐に向かわせ、死に追いやる未来の原因となる人物だった。


「私たちもたすけてぇ……!」


檻の中で捕らわれていた子供たちが泣き叫ぶ。


アイカ「……ナギは助けた!!」


アイカは息を切らしながら叫ぶ。


アイカ「サクナ!!逃げよう!!」


だがサクナは首を横に振った。


サクナ「いいえ」


その瞳は真っ直ぐだった。


サクナ「みんな、助けるよ。アイカ」


アイカ「でも……助けたって、養う余裕なんてない。後のことを考えてくれよ」


アイカ「それに、にげないと俺たちも捕まる。俺は不法侵入してんだぞ!!」


サクナは微笑んだ。


サクナ「大丈夫。私はこの国の第一王女。この子たちは、しかるべき場所へ導き、親の元へ帰してあげる」


アイカ「……お、お、おうじょ……?」


建物の外に出ると、王国の騎士たちが待っていた。


ジミー「探しましたよ、姫様!!」


サクナ「ジミー。久しぶりですね」


サクナは落ち着いた声で応じた。


サクナ「ちょうどいいです。この子たちを保護してください。希望する子は、親の元へ帰れるよう手続きを」


ジミーは露骨に嫌そうな顔をしたが、サクナの微笑みで従った。


サクナはアイカに向き直る。


サクナ「それにしても驚いたよ、アイカ。君が異世界から来た勇者だったなんて」


アイカ「なんのことやら」

サクナ「誤魔化されないよ。そんな人間離れした頑丈な体をもっているんだから」


アイカは気まずそうに視線を逸らす。


サクナはナギに目を向けた。


サクナ「僕に彼女の名前、教えてよ。アイカ!」


アイカとナギが目を合わせる。


アイカ「ああ!!自己紹介してやってくれ」


ナギ「ナギと申します。助けていただき……ありがとうございます」


サクナは優しくナギの頭を撫でた。


サクナ「これからよろしくね、ナギ。僕....いいえ、私はサクナ」


そして少し申し訳なさそうに微笑む。


サクナ「悪いけど……アイカ、ナギ。二人には、お城に来てもらうよ」


サクナ「アイカ!君を父上に紹介させてもらうね!!」


王女らしい堂々とした背中が遠ざかっていく。


ナギの脳内に過去の出来事が蘇る。

お城に向かってはいけない。 お城に行けば、王様に魔王討伐を命じられる。


そしてアイカは死ぬ。


ナギはアイカの袖を握った。


ナギ「逃げよう!魔王退治なんてしなくてもいい」


アイカは驚いたが、すぐに返事をした。


アイカ「どうして?」


ナギ「アイカ君を失いたくない。私はアイカ君と一緒に暮らせるなら……世界がどうなっても、かまわない!!」


アイカは驚いた顔をして、口角を上げた。


アイカ「わかった!!俺も魔王退治なんて興味ないし」


アイカ「よし、逃げよう!!」


サクナは機嫌よく歩きながら言う。


サクナ「それでさ、アイカとナギちゃんって、恋人なのかな」


返事はない。


不思議に思って振り返ると


サクナ「……え?」


アイカはナギを抱えたまま、足音を殺して、サクナとは真逆の方向へ歩き出していた。


サクナ「ちょ、ちょっと!? アイカ!?」


アイカ「ナギ、しっかり捕まれ!!」


ナギ「うん」


ナギはアイカの手を握り、二人は全力で運命から逃げ出した。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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