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不幸少女は、二度目の人生で勇者を救いたい  作者: 梅道
第1章 人生やり直し 編
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人類最強の姫騎士の追跡

過去に戻った少女・ナギは、勇者・アイカ が 王から "魔王討伐を命じられるイベント" を回避しようとしていた。


そのためアイカ達は、サクナ姫。

すなわち王の娘の追跡を振りきるため、城下の路地へと逃げ込んでいた。


アイカ「ここまで来れば……さすがに逃げ切れた、よな」

アイカは肩で息をしながら足を止め、背後を警戒するように振り返る。


アイカ「大丈夫か、ナギ?」


ナギは胸元を押さえ、荒い呼吸を必死に整えていた。


ナギ「……はぁ、はぁ……」


やがて息が落ち着くと、少女はふっと顔を上げる。


そこには、状況にそぐわないほど明るい笑顔が浮かんでいた。


アイカ「……なんで、そんなに嬉しそうなんだ?」


アイカは思わず眉をひそめる。


アイカ「俺たち、サクナ姫の命令に背いたんだぞ? 立場的に、かなりヤバいと思うんだけど」


ナギは一瞬だけ視線を逸らし、それから意を決したようにアイカを見つめ返した。


ナギ「ねえ、アイカ君。これから、変なことを言うよ?」


そう前置きしてから、小さく微笑む。


ナギ「でも……信じて」


その言葉に、アイカの喉が鳴った。


アイカ「……ああ。信じる」


ナギは一歩近づき、まっすぐに彼の瞳を射抜く。


ナギ「私はね、過去に戻ったの」


アイカ「……は?」


あまりに突拍子のない告白に、アイカは間の抜けた声を漏らし、首を傾げるのだった。


ナギ「……未来の出来事を知ってる、なんて言われても。普通は信じられないよね」


ナギはそう言って、少しだけ俯いた。

さっきまでの笑顔は消え、どこか寂しげな表情を浮かべている。


アイカはナギの寂しげな表情を見て、いつもと違うことに気づく。


アイカ「なるほどな」


アイカは納得したように頷いた。


アイカ「だから、あのおとなしいナギが、サクナ姫から逃げようなんて言い出したわけか」


ナギ「……信じてくれるの?」


恐る恐る見上げてくるナギに、アイカは迷いなく答えた。


アイカ「信じるよ」


そのまま少し考え込むように腕を組み、問いかける。


アイカ「もし、俺がサクナ姫と一緒に城へ行ってたら……どうなってた?」


ナギ「王様から、魔王を倒すように命令される」


即答だった。


アイカ「だろうな」

アイカは苦笑しながら肩をすくめる。


アイカ「でもさ、俺はたぶん断ると思うぞ」


ナギ「うん。一度は断るよ」


ナギは頷き、続けた。


ナギ「でもそのあと、お城に魔王軍四天王のハラヤが現れるの。そして……私が、魔王城に誘拐される」


アイカ「……は?」

思わず声が裏返る。


アイカ「なんで、ナギが誘拐されるんだ?」


ナギ「無理があるのはわかってるけど……サクナ姫と、間違えられるの」


アイカ「そんなことあるか……?」


アイカは思わず天を仰いだ。


ナギは黒髪黒目の小柄な少女だ。一方、サクナ姫は長身で、金髪碧眼。

どう考えても、見間違える要素はない。


(いや……その魔王軍四天王、相当頭が弱いのか?)


そう思ったが、すぐに別の可能性が浮かぶ。


(……いや。ナギの、不幸体質のせいかもしれないな)


ナギは幼い頃、目の前で両親を殺されたらしい。

つい最近も、危うく奴隷として売られかけたばかりだ。


あまりにも不運すぎる少女だ、アイカは苦笑しながら頬をかいた。


アイカ「とりあえず……ピピン王国に向かおう!」

アイカが前を見据え、力強く言った。


アイカ「ピピン王には、俺はかなり大きな借りを作ってるんだ。」


サクナ「ピピン王国……」


サクナが頷く。


サクナ「異世界から召喚された場所だよね。そして、そのとき一度、魔王を倒した。」


その直後だった。


ナギたちはサクナの存在に気づいた。


サクナが、声を張り上げる。


サクナ「ねえ! 逃げないで、話そうよ!!」


反射的に身構えたアイカだったが、少し考えた末、静かに頷いた。


アイカ「……わかった」


サクナ「ありがとう」


サクナはほっとしたように微笑む。

その姿は、まるで天使のようだった。


サクナ「魔王が復活したことは……もう知っているよね」


アイカとナギは、無言で頷く。


サクナ「復活した魔王には、それを支える最強の四体の魔族がいる」


サクナの声が、わずかに沈んだ。


サクナ「そのうちの一体が、つい先日……ピピン王国を侵略した」


アイカ「……まじかよ」

アイカは思わず声を落とした。


サクナ「もう、人間の国で生き残っているのは、このワクワク王国だけなんだ」


ナギは未来を知っている。サクナ姫の言ったことばは本当だと確信している。


アイカ「相変わらず……すごい適当な名前の国だな」


つい漏れたアイカの一言に、サクナがぎろりと睨みつける。


アイカ「……ごめんなさい。なんかワクワクする国だと思います。」


即座に頭を下げると、サクナの表情はすぐに和らいだ。


どうやら許してもらえたらしい。


サクナ「復活した魔王を倒さなければ……人間は滅びる」


サクナは一歩前に出て、凛とした瞳でアイカを見つめる。


サクナ「勇者アイカ。僕と一緒に、復活した魔王を倒そう」


そう言って、まっすぐに手を差し出した。


しかし


アイカは、静かに首を横に振った。


アイカ「……ごめん。俺には無理だ」


サクナ「どうして?」


アイカ「一緒に召喚された。他の勇者たちは、もう元の世界に帰った」


アイカは唇を噛みしめ、続ける。


アイカ「それに……あいつらは、俺よりずっと強かった」


サクナ「だったら!」

サクナは声を強める。


サクナ「その勇者たちの代わりに、僕が君と一緒に戦う!!」


アイカ「無理だ」


即答だった。


アイカ「俺たちは召喚されたとき、女神みたいな女性から“チート能力”を一人一つずつもらった」


アイカはそう言って、自分の胸を「ドンッ」と力強く叩いた。


アイカ「俺のは、この……異様に頑丈な肉体だけだ」


サクナ「……十分だよ」


サクナは、はっきりとした口調で言った。


サクナ「私は、この国で一番の剣の使い手だ」


そして一歩前に出て、迷いのない瞳でアイカを見据える。


サクナ「君が、人類の盾で。僕が、人類の剣だ」


アイカ「無理無理無理!」


アイカは大きく手を振った。


アイカ「どう考えても負けるって!!」


サクナ「お願いだ」

サクナは声を震わせながら、頭を下げる。


サクナ「一緒に……人類のために戦って!!」


その光景を、ナギは黙って見つめていた。


アイカ君とサクナ姫が組めば、魔王を倒せる。

それは、未来から来たナギにははっきりとわかっている。


けれど。


アイカ君は、魔王討伐を果たした数日後、後遺症で死ぬ。


(もし……この勧誘を止められたら)


(もし、ここで運命を変えられたら)


アイカ君は死なない。それだけが私の願いだ。

ただ、アイカと、もっと一緒にいたかっただけなのだ。


しかし、そのわがままを通せば

人類は、復活した魔王によって滅ぼされる。


喉が詰まり、声が出なかった。


止めたい。


でも、声がでない。


ナギは、ただ唇を噛みしめる。


少女は。

運命から逃げることができないと絶望した。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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