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不幸少女は、二度目の人生で勇者を救いたい  作者: 梅道
第5章 魔王軍四天王リョウキ(回復を操る魔族) 編
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27.策士策に溺れる

バイオレットは、なぜか胸を張っていた。


その姿には根拠というものが存在しないのに、本人の中では「勝利確定の瞬間」に立ち会っているような確信だけがある。


バイオレット(これだ。これしかない。完璧なはずだ)


内心では不安を打ち消すように、何度も同じ言葉を反芻していた。


バイオレット「今世紀最大の作戦はこれだ!!」


声は大きい。だが、その裏にあるのは“自分が信じきらないと崩れる計画”への必死さだった。


バイオレット「ワン!ツウ!!スリー!!!」


叫ぶことで、迷いを押し流す。


----------------------------------------------------------------------


【バイオレットの作戦】


サクナ姫そっくりの“人形(中身:メイメイ憑依)”を使い、敵の注意を逸らす。


その隙に撤退。


サクナ姫の姿は敵陣営でも識別優先度が高い。


その“視覚誘導”を使えば、注意は確実に分散する。


さらに中身がメイメイである、どうなってもかまわない。

----------------------------------------------------------------------


冷静に考えれば、だが。アイカは小さく息を吐いた。


アイカ(もうどうでもいいか……)


アイカ(どうせ、いい案がないし)


バイオレットの作戦がほんのわずか、救いを感じている自分がいる。


本当は分かっている。こういう作戦ほど、想定外が起きる。


それでも彼は、わざと軽く頷いた。


アイカ「なるほど、戦わなくて済むな」


期待していない分だけ、失敗しても心が削れないようにするための防御反応だった。


一方でサクナ姫は、明確に感情が爆発していた。


サクナ「そそそそんなぁ!?私戦いたいのに!!」


胸の奥が熱い。認められたい。役に立ちたい。


自分の剣が必要とされる場面でありたい。


それなのに「逃げる作戦」。


サクナ(私は……守られるだけの存在じゃないとアイカに証明したいのに)


悔しさと焦りが混ざり、拳が震えていた。



そして作戦は実行される。


大聖堂前。空気は異様に静かだった。

静かすぎて、逆に“ここから何かが壊れる”という予感だけが膨らんでいく。


リョウキがそこにいるだけで、世界の温度が下がる。


アイカ(……こいつが、本物の化け物か)


アイカは直感していた。理屈ではない。経験でもない。


「勝てるかどうか分からない相手」を前にしたときだけ生まれる、あの嫌な感覚だった。


その前に現れた人形。


サクナの姿。


中身が別物だと分かっているのに、それでも敵が反応するかどうかは賭けだった。

人形が動く。不自然な軽さで、左へ走る。


その瞬間。


バイオレット(頼む……引っかかれ)


バイオレットの願いは祈りに近かった。

理屈ではなく、希望だけで押し切る作戦。


リョウキ「……ん?」


リョウキの視線が止まる。


ほんのわずかな“間”。


それを見た瞬間、バイオレットの胸に火が灯る。


バイオレット(今のは“反応の揺れ”だ……!)


バイオレットの中で、確信に近い誤解が生まれる。


バイオレット「よし!食いついた!」


成功した可能性に、脳が一気に賭けに傾く。


だが次の瞬間。


リョウキ「半数は追え」


リョウキ「残りはここだ」


冷静すぎる判断。


“引っかかったように見えて、引っかかっていない”という最悪の現実。


バイオレット「なんでやねん!!」


バイオレットがアイカに突っ込みを入れる。


アイカ(あ、こいつ……殺してやろうか)


アイカのバイオレットに冷たい目線を送った。


ナギ「え、分けた!?」


ナギの声には恐怖というより、“理解できない現実への拒絶”が混じっていた。


マイマイは淡々と現実を受け入れる。


マイマイ「……うん、普通に対応されたね」


マイマイ(やっぱりな)諦めに似た納得。


バイオレットは一瞬だけ固まる。


バイオレット(え?これって……成功じゃないの?)


成功している“可能性”だけを見ようとする思考。


しかし、その希望はすぐに現実に押し潰される。


アイカ「いや、普通に大大大失敗だろ」


アイカの言葉は冷たいが、正確だった。


バイオレット(あ、ダメか……)


バイオレットの中で何かが静かに折れる。


バイオレット「あちゃ~!!」


バイオレットは笑いだした。


その時。


リョウキ「出てこい、勇者」


リョウキの声。空気が一段深く沈む。


アイカ(バレてる)


アイカの思考は単純だった。


驚きよりも、“やっぱりか”が先に来る。


驚く余裕がもうない。


サクナ姫はその瞬間、限界を超えた。


サクナ姫(守られるだけじゃない)


サクナ姫(ここで動かなきゃ、アイカの中で、私はずっと“姫”のままだ)


サクナ姫「戦おう!!」


剣を抜く。その動作には迷いがない。


迷い続けていた心が、ついに一点へ収束した瞬間だった。


サクナ姫「私は戦う!!」


叫びと同時に、感情が爆発する。


戦場に飛び込む。怖さはある。


死ぬ可能性も理解している。


それでも、それ以上に“何もしない自分”が嫌だった。


アイカ「姫様!!!!」


アイカの声。声が追いついていない。


バイオレットはその姿に、別の感情を抱く。


バイオレット(ああ……)


バイオレット(サクナ姫の怒った顔かわいいな)


でも、目の前にあるのは“想定外の正解”だった。


ナギ「カッコイイ!!」


思わず出た声は、悔しさでも敗北感でもなく、純粋な賞賛だった。


ナギは圧倒されていた。


ナギ(人って、あんなふうに動けるんだ……)


恐怖の中で、尊敬が生まれる。


アイカは一歩下がる。


アイカ(もういい。考えるのやめる)


そして思考を戦闘用に切り替える。


この瞬間、彼の中で“諦め”は“覚悟”に変わった。


リョウキはサクナを見ていた。


リョウキ「さすがだな、人類最強の姫騎士だ」


そこにあるのは評価でも侮りでもない。

ただ“当然の結果を観測している目”だった。


アイカはリョウキを見つめる。


アイカ(デカすぎるだろ……)


恐怖はある。だが同時に、奇妙な冷静さもある。


アイカ(どうせやるしかない)


リョウキが言う。


リョウキ「では、始めようか」


アイカは息を吐いた。怖い。勝てる保証はない。


それでも


アイカ「……やるしかねぇか」


そして小さく続ける。


アイカ「なんで毎回こうなるんだよ」

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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