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不幸少女は、二度目の人生で勇者を救いたい  作者: 梅道
第5章 魔王軍四天王リョウキ(回復を操る魔族) 編
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25.魔族の軍勢

夜更け。


大聖堂の外は静まり返っていた。

だが、その静寂は突如として破られる。


ゴォォォォ――――ッ!!


腹の底へ響くような重低音。

地面が揺れ、食堂の窓ガラスが激しく震えた。

吊るされたランプがカタカタと音を立てる。


ナギ「……え?」


アイカ「なんだ?」


次の瞬間。


バンッ!!!!


大聖堂の扉が勢いよく開かれ、青ざめた神官が駆け込んできた。


神官「た、大変です!!」


息を切らしながら、神官は叫ぶ。


神官「魔物の大群がこちらへ向かっています!!」


食堂の空気が凍りついた。


サクナ「……!」


バイオレットは静かに立ち上がる。


バイオレット「数は」


神官の喉が震える。


神官「数百……いえ、千以上の魔族かと……!」


アイカ「はぁ!?!?」


神官「しかも先頭には」


言葉を続けるだけで恐ろしいのか、神官の顔が引きつっていた。


神官「魔王軍四天王、“暴虐”のリョウキが……!」


その名を聞いた瞬間。


場の空気が一変した。


ユウキュとは違う。


本物の“戦争”を起こす怪物。


それが、来る。



大聖堂の屋上。


夜空の下、アイカたちは平原の彼方を見つめていた。


無数の赤い灯が揺れている。


松明だった。


それが波のようにうごめき、闇の大地を埋め尽くしている。


魔族の軍勢。


獣型の魔族。


巨人型の魔族。


骸骨兵。


羽虫のように空を覆う異形たち。


数百いや、千にも届きかねない大群。


その中心に、一際巨大な影が立っていた。


角刈り。


鋼のように隆起した筋肉。


周囲の魔物より頭ひとつどころではない巨体。


魔王軍四天王、リョウキ。


その男が、大聖堂を見上げる。


リョウキ「王女を返せ」


低い声だった。


だが、その一言は不思議なほど鮮明に、大聖堂全体へ響き渡った。


空気が震える。


壁が軋む。


神官たちが息を呑んだ。

すると突然、リョウキが怒鳴る。


リョウキ「ユウキュ!!」


アイカ「え?」


リョウキ「お前が王女を攫ったことは、魔王軍の警備兵から聞いている!!」


リョウキ「返せ!! 馬鹿!!」


ナギ「えぇ……?」


リョウキは拳を握り締め、さらに怒鳴った。


リョウキ「勇者が攫われたお姫様を救うため、魔王城へ乗り込む!!」


リョウキ「そういう王道展開を壊すな馬鹿ぁぁぁぁぁ!!」


屋上に沈黙が落ちた。


アイカ「そこ怒ってんの!?」


シリアスな空気が、一瞬で崩壊する。


すると魔物の群れの前方から、二つの影が飛び出してきた。


馬頭の魔族と、鹿頭の魔族。

どちらも妙に間の抜けた顔をしている。


馬頭の魔族「リョウキ様ぁぁぁ!!!」


リョウキ「おお!! 馬鹿ブラザーズ!! 相変わらずの馬鹿面だな!!」


鹿頭の魔族が膝をついた。


鹿頭の魔族「ユウキュ様が勇者に倒されました」


リョウキ「やっぱりか」


あっさり頷く。


リョウキ「さっき、魔王様の過去が頭に流れ込んできていたからな」


リョウキ「そういうことだと思った」


バイオレット「……死んだ四天王の記憶共有か」


バイオレットは元魔王軍四天王メイメイを見る。


バイオレット「あとで、魔王の記憶おしえろよ」


リョウキは腕を組み、唸る。


リョウキ「つまり王女は勇者の手に渡ったわけだな」


馬頭の魔族「はい!!!」


リョウキ「……はぁぁぁぁ」


巨大なため息が夜空へ漏れた。


リョウキ「ユウキュのやつ……」


リョウキ「余計なことを……」


その時だった。


リョウキが突如、腹の底から声を張り上げる。


リョウキ「タイガァァァァァァァァァ!!!!!!!!」


轟音のような叫び。


魔物たちが一斉に道を開けた。


その奥から、一騎の騎馬が現れる。


馬に跨るのは、虎の顔を持つ男。


鋭い牙。

縞模様の毛皮。


だが、その姿にはどこか人間らしさが混じっていた。


完全な魔族ではない。

半魔。


タイガー「はい。リョウキ様」


低く落ち着いた声だった。


馬上の半魔は静かに頭を垂れる。


リョウキは巨大な腕を組み、ニヤリと笑った。


リョウキ「いいか。これから俺とお前で班を分ける」


タイガー「……」


リョウキ「俺は勇者を倒す」


その瞬間。


リョウキは巨大な指を、大聖堂の屋上へ向けた。


リョウキ「そしてお前は姫を誘拐しろ」


サクナ「っ……!」


タイガーは動じなかった。


タイガー「御意」


短い返答。

それだけで、空気が冷える。



魔王城。


巨大な玉座の間。


薄暗い空間の中央で、魔王は頬杖をつきながら玉座に座っていた。


ドドドドドドドドド――――。


凄まじい振動が城全体を揺らしている。


魔王「……リョウキ」


呆れたように呟く。


魔王「あいつ、魔王城の部下をほぼ全員連れて行きやがったな」


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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