表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不幸少女は、二度目の人生で勇者を救いたい  作者: 梅道
第4章 魔王軍四天王ユウキュ(憑依を操る魔族) 編
PR
25/38

24.聖女のトラウマ

魔王軍四天王ユウキュを討ち倒した、地下牢に閉じ込められていた者たちは解放された。


歓声が広がった。


「助かった……!」


「外に出られるのか……!」


囚われていた人々は涙を流しながら抱き合い、生きて帰れる喜びを噛み締めていた。


ナギは深く息を吐いた。


ナギ「……終わったんだね」


隣では、バイオレットが肩を回している。


バイオレット「四天王って聞いてたわりには、案外なんとかなったな!」


バイオレット「メイメイ、まさかあんな天才的な作戦があるなんて、天才か貴様!!」


メイメイ「魔王軍四天王ユウキュ、とんでもない強敵だった」


メイメイ「でも」


メイメイ「僕たち、みんなが力をあわせたおかげで、何とか勝てた」


メイメイ「僕たち全員で掴んだ勝利さ」


バイオレット「めいちゃん」


バイオレットは鼻を擦った。


そんな二人のやり取りを見て、勇者のアイカは呆れたようにため息をついた。


アイカ「いや、実際戦ったの俺だけじゃね?」

 

その時だった。


司教「マイ、お久しぶりですね」


穏やかな男の声が響いた瞬間、聖女マイの顔から血の気が引いた。


マイ「っ……!」


大聖堂の司教だった。


慈愛に満ちた笑み。


柔らかな口調。


だが、マイの瞳には恐怖しか映っていなかった。


(また、あの地獄が始まる……)


脳裏によみがえるのは、終わりのない労働の日々。


祈り。

治癒。

奉仕。


朝から夜まで働かされ、自由などなかった。


聖女だから。


みんなのためだから。


そう言われ続け、マイは自分の人生を失っていた。


肩を震わせるマイを見て、バイオレットは静かに目を細めた。


バイオレット(……なるほどな)


バイオレットは何も言わなかったが、すべてを察した。


司教は勇者一行へ向き直り、深々と頭を下げる。


司教「命の恩人よ。本日は助けていただき、誠にありがとうございます」


その所作は丁寧で、非の打ち所がない。


司教「夜も遅いですし、どうぞ空いている部屋でお休みください」


バイオレット「うむ。そうさせてもらおう」


バイオレットが代表して答えた。


すると司教は、にこやかな笑みのまま尋ねる。


司教「ちなみに、お名前を伺っても?」


一瞬、空気が止まった。


ナギは「どうする?」という目で仲間を見る。


アイカは「別に言ってもよくない?」という顔。


マイは不安そうに俯いていた。


そして。


バイオレット「うむ! ……勇者一行だ!! 名乗るほどの者でもない!」


胸を張って答えたバイオレットは答えた。


司教は苦笑した。


司教「……そうですか。残念です」


だが、その瞳の奥に浮かんだ一瞬の鋭さを、バイオレットは見逃さなかった。



その夜。


一行は大聖堂の食堂で食事を取っていた。


温かなスープに焼きたてのパン。


久しぶりのまともな食事に、アイカは感動していた。


アイカ「うまぁぁぁ!! これ無料!? 本当に!?」


ナギ「アイカ君、落ち着いて……」


向かい側では、救出された王女サクナが静かに頭を下げた。


サクナ「アイカ、ナギちゃん。助けてくれてありがとう」


ナギ「お、王女様!? 頭を上げてください!」


ナギは慌てて立ち上がる。


王族に頭を下げさせるなど、とても耐えられなかった。


そんな様子を見ながら、バイオレットが腕を組む。


バイオレット「これからどうする」


アイカ「そりゃ決まってるだろ!」


アイカはパンを片手に言った。


アイカ「王女様を救助したんだし、国に帰って王様へ報告だ!」


ナギ「そう……だね」

ナギも頷いた。


サクナは笑顔を作った。

けれど胸の奥では、まるで別の声が暴れていた。


サクナ(本当は……)


サクナ(このまま一緒に旅をしたい。)


勇者一行加わり、魔王討伐へ挑みたい。

けれど、自分は攫われた身。


守られる側。


今の自分に、そんな願いを口にする資格はない。

助けられたばかりの自分が、勇者の隣に立ちたいなど。


サクナはそっと俯いた。


彼女には夢があった。


王になること。


王家が待ち望んだ子だった。

だが、生まれたのは女児。


周囲の期待は、男児に向いていた。


『女か……』


『残念』


幼い頃から向けられてきた視線を、今でも忘れられない。


だからこそ剣を握った。


誰よりも強くなるために。


魔王を倒し、誰もが認める王になるために。

その覚悟だけで、血の滲む鍛錬を続けてきた。

 

サクナは小さく微笑む。


サクナ「……護衛をお願いします。」


その言葉に込められた本当の願いを、まだ誰も知らなかった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ