23.魔王の記憶 その3
玉座の間に、静かな緊張が満ちる。
サクナ姫の姿をしたユウキュは、細剣をくるりと回した。
その動きは軽やかで、美しい。
まるで舞踏会のダンスのようだった。
ユウキュ「じゃあ、始めようか!!」
サクナ、いや、ユウキュは左手でピースを作りながら、剣を構える。
次の瞬間。
消えた。
ナギ「えっ……」
風だけが、遅れて吹き抜ける。
キィン!!
甲高い金属音が響いた。
アイカは咄嗟に腕を交差させていた。
サクナの剣が、その腕に突き刺さっている。
……いや。
刺さってはいない。
ユウキュ「うわ、硬っ!?」
刃先は皮膚にめり込んでいるのに、それ以上入らない。
まるで鋼鉄を叩いたかのようだった。
アイカ「いてぇな……」
低く呟き、そのまま拳を振り抜く。
だが、空振った。
サクナの体が、ふわりと後方へ流れる。
まるで風そのもののような回避だった。
ユウキュ「こわい……。そんな拳くらったら、サクナたん泣いちゃうぞ?」
サクナ姫は口に手をあててびっくりした表情をした。
アイカは眉をひそめる。
今の動き。
完全に見切ったはずだった。
なのに、当たらない。
バイオレット「……強い」
バイオレットとナギは、アイカたちの戦いに釘付けだった。
一方、メイメイは玉座に座る“本来の”ユウキュの体を見つめていた。
魂の抜けたその姿を見て、ふと何かを思いつく。
メイメイ「アイカ! 頑張れ!」
その瞬間
床を蹴る音すらなく、サクナが迫った。
銀閃。
キン! キキン!!
一瞬で三連撃。
喉。
心臓。
目。
急所だけを狙った剣。
アイカは反射的に腕で防ぐ。
火花が散った。
ユウキュ「うっわ、硬い!?」
サクナの顔で、楽しそうに笑う。
だが、次の瞬間。
ズバッ!! ズバッ!! ズバッ!!
同じ箇所へ、三連続の斬撃。
アイカの頬から血が飛んだ。
ナギ「アイカ君!」
アイカは頬に触れる。
指先に、赤い血がついた。
アイカ「……おお」
少し感心したように呟く。
アイカ「切れた」
ユウキュ「どんどん、いくんご!!!」
サクナの剣技は異常だった。
速い。
正確。
そして何より避ける。
アイカの拳が振るわれるたび、紙一重で躱す。
大振りな拳。
地面を砕く蹴り。
どれも威力は凄まじい。
だが、当たらない。
ドゴォン!!
アイカの拳が床を砕き、王の間が揺れる。
破片が舞う中、サクナはその瓦礫を足場に軽やかに跳んだ。
ユウキュ「すごいすごい♪ サクナ怖いいい!」
サクナ(ユウキュ)は片足をあげて、きゃぴきゃぴ する。
そして、サクナはナギへ視線を向ける。
ユウキュ「まずは、雑魚から倒しますか!!」
瞬間、ユウキュはナギへ斬りかかった。
アイカ「なぎぎぎぎ!!!!!!!!!!!!」
アイカは手を伸ばす。
だが、遅すぎた。
アイカ(また、まもれなかった)
サクナが剣を振り下ろそうとした、その時
???「あぶない!!」
誰かがナギを突き飛ばした。
その代わりに、サクナの斬撃をまともに受ける。
ズバァッ――!!
ユウキュの体が、真っ二つに裂けた。
サクナは、その斬られたユウキュの体を見て唖然とする。
ユウキュの体だった。
サクナ「どういうことだ、なんで小生の体が」
そして、ユウキュの肉体から幽体のメイメイが現れる。
メイメイ「ユウキュ、終わりだ」
ユウキュの体は、光の粒子となって消えていく。
ユウキュ「なんじゃこりゃ!!」
ユウキュ「それに、なんでお前が憑依を使えるんだ!!」
メイメイ「幽霊だから」
ユウキュ「なんや、それ……」
その言葉を最後に、ユウキュの体と魂は完全に消滅した。
静寂が落ちる。
だが次の瞬間。
メイメイの脳へ、凄まじい勢いで何かが流れ込んできた。
それは記憶。
魔王の記憶だった。
四天王。それは単なる幹部ではない。
魔王の“分身体”みたいな存在だ。
その一体であるユウキュが消滅したことで、魔王の断片化していた記憶が、同じく元魔王軍四天王であるメイメイへと流れ込んだのだ。
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【魔王の記憶】
大好きな人間の女性に、告白した。
女性「いや、その顔で告白すんの、気持ち悪っ!」
その言葉が、胸を抉った。
魔王は怒った。
その女と、その子孫すべてに“永劫の不幸”の呪いをかけた。
そして、一人になった後。
魔王は鏡を見る。
そこに映っていたのは醜悪な怪物だった。
魔王「……あ、これはダメですな。」
初めて、自分の顔を“醜い”と思った。
絶望した。
魔王は、自分の顔に手を当てる。
次の瞬間。
その姿は、美しい男へと変わっていた。
魔王「……これなら」
それからだった。
魔王の顔が変わったことを陰で笑う魔族。
彼らを、魔王は皆殺しにしていった。
一人残らず。
血を浴びながら、魔王は確信する。
もう誰も、自分を笑わない。
これでいい。
だが、それでも。
魔王は、あの女のことを忘れられなかった。
だから、会いに行った。
もう一度だけ。
けれど。
死んでいた。
自分がかけた呪いによって。
魔王「……あ」
胸の奥が、ざわつく。
苦しい。
痛い。
理解できない感情。
魔王「なんだ。この胸の苦しみは……」
その苦しみを消す方法が分からなかった。
魔王「とりあえず、人間をころすか」
その後、魔王はとりあえず、たくさんの人間の国を滅ぼした。
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メイメイは、はっと現実へ戻る。
呼吸が乱れていた。
メイメイ「……は?」
理解できなかった。
自分たちの産みの親である魔王様。
その魔王様が、たくさんの人間の国を滅ぼした理由。
その理由が理解できなかった。
メイメイ「意味がわからない……」
あまりにも、飛躍しすぎて。
あまりにも、論理的ではない。
メイメイは乾いた笑みを漏らす。
そして、小さく呟いた。
メイメイ「意味がわからないです。魔王様……」
最後まで読んでいただきありがとうございます。




