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不幸少女は、二度目の人生で勇者を救いたい  作者: 梅道
第4章 魔王軍四天王ユウキュ(憑依を操る魔族) 編
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22.憑依

美少女たちが、まるでフィギュアみたいに透明なガラスへ閉じ込められている。

王の間は、豪華なのにどこか不気味だった。


その中央。


高い玉座に座る魔王軍四天王・ユウキュは、頬杖をつきながら感心したように目を丸くする。


ユウキュ「いやぁ、すごいな」


その視線の先には、ようやく王の間へ辿り着いたナギたち。


特にアイカの状態は深刻だった。

服は裂け、呼吸は荒く、立っているのが不思議なほど消耗している。


ユウキュ「あの数の魔族に囲まれて、よくここまで来れたねぇ」


ここへ来るまで、ナギたちは大量の魔族兵に追い回されていた。


普通なら、とっくに詰んでいる状況。


しかし。


戦い方は、ただひとつ。殴る。それだけだった。


ナギは引きつった笑みを浮かべる。


ナギ「アイカ君って、なんだかんだ強いよね……。ほとんど拳で全部解決しようとするとこあるよね。」


メイメイも、ふよふよ浮かびながらうんうん頷く。


メイメイ「うん。魔王軍四天王のハラヤもグーパンだったし、かなり脳筋だよね」


アイカ「誰のせいだと思ってんだ……」


疲れ切ったツッコミが、静かな王の間に虚しく響いた。


フィギュアのように透明なガラスケースへ閉じ込められている聖女・マイマイは、きらきらと目を輝かせながらアイカたちを見つめていた。


その表情は、不安よりも希望に満ちている。

聖女マイマイは、“お告げの声”によって知っていたのだ。


**自分を助けに来る者たちがいることを。**


そして今、その予言通りに勇者アイカたちはここへ辿り着いた。


王の間の最奥。


玉座へ深く腰掛けた魔王軍四天王・ユウキュは、まるで緊張感のない様子で肩をすくめる。


ユウキュ「できれば、帰ってもらえると助かるんだが」


あまりにも軽い口調だった。


ユウキュ「俺はただ、人間の女の子が好きなだけだ。世界をどうこうする気はない」


ユウキュ「君たちに、別に迷惑かけてないだろ?」


アイカは「うーん」と少し考えてから頷いた。


アイカ「たしかに。俺、世界が魔王に支配されても別にいいしな」


ナギ「よくないよ!?」


即座にツッコミが飛ぶ。


ナギは慌ててアイカの前へ出た。


ナギ「王様と約束したでしょ! 魔王城に誘拐されたサクナ姫を助け出すって!」


ナギは必死に説得を続ける。


ナギ「それに、魔王城の結界を解除するには、魔王軍四天王を全員倒さないといけないんだよ!? 忘れたの!?」


アイカ「あー……そうだったな」


アイカは本当は戦いたくないが、アイカはナギに甘いので受け入れることにした。


そしてそのまま、ユウキュへ視線を向ける。


アイカ「ユウキュ、悪いな。そういうことだ」


ユウキュ「……そっか」


ユウキュは小さく息を吐き、残念そうに目を細めた。


ユウキュ「それは、残念だね」


次の瞬間。


ユウキュは、静かに呟く。


ユウキュ「憑依」


空気が、ぞわりと震えた。


その瞬間、玉座に座っていたユウキュの体から、黒い靄のようなものがふわりと抜け出す。


そして。


ユウキュの肉体は、そのまま力を失ったように玉座へ沈み込んだ。


まるで、魂だけが抜け落ちた抜け殻のように。


ナギ「……え?」


アイカも眉をひそめる。


そのとき。


近くにいた魔族の部下が、無言で一つのガラスケースへ近づいた。


カチリ。


重い施錠が解除される。


ゆっくりと開かれた透明な扉。


その中にいたのは。


豪華なゴスロリ衣装をまとった、金髪碧眼の美女だった。


透き通るような白い肌。


人形のように整った顔立ち。


金髪がさらりと揺れ、青い瞳がゆっくりと開く。


その姿を見た瞬間。


アイカとナギの表情が固まった。


ナギ「うそ……」


バイオレット「わぁおーーー!! めっちゃタイプ」


アイカ「サクナ姫!!!!!!!!!!!!!」


ガラスケースから出てきたサクナ姫は、ゆっくりと床へ降り立つ。


その動きは優雅で、美しかった。

すると、控えていた魔族の部下が恭しく剣を差し出す。


サクナ姫、いや、サクナ姫へ憑依したユウキュは、それを軽く受け取った。


細い指が、剣の柄を握る。


その瞬間。


空気が変わった。


ユウキュ「さて」


サクナ姫の姿のまま、ユウキュはにこりと笑う。


ユウキュ「人類最強の姫騎士サクナたんに、勝てるかしら?」


ぱちん、と片目を閉じてウインクした。


恐ろしく可愛い。

なのに、めちゃくちゃ嫌だった。


メイメイは完全に固まっていた。


メイメイ「……意味がわからない」


ぽつりと呟く。


メイメイ「なんで、サクナ姫がこんなところにいるの?」


メイメイ「サクナ姫は、魔王城に監禁されてるはずでしょ……?」


ナギも混乱したように目を見開く。


たしかにそうだ。


王から依頼された内容は、“魔王城へ連れ去られたサクナ姫の救出”。

なのに。サクナ姫は今、魔王軍四天王ユウキュの部屋にいる。


メイメイ「ユウキュ!! どういうことだ!」


王の間に、メイメイの怒声が響く。


サクナ姫の姿をしたユウキュは、その声にゆっくりと視線を向けた。


青い瞳が、ふわふわ浮いている魔族の男を映す。


そして、少しだけ目を丸くする。


ユウキュ「……おまえこそ、どういうことだ?」


ユウキュの声には、純粋な困惑が混ざっていた。


かつてメイメイは、魔王軍四天王の一人だった。


だが勇者との戦いで敗れ、死んだはずの存在。


なのに今、普通に空中を漂っている。


メイメイは腕を組み、ふんっと鼻を鳴らした。


メイメイ「死んで、幽霊になって、勇者の仲間になっただけだ」


さらっと、とんでもない経歴を口にする。


メイメイ「次はお前の番だ。説明しろ」


ユウキュ「あー……」


サクナ姫の姿のまま、ユウキュは少し気まずそうに頬をかいた。


ユウキュ「かわいいだろ。この娘」


ユウキュ「魔王城に監禁されてるの、もったいないと思ってさ」


ユウキュ「魔王様に内緒で、こっちに連れてきたんだよ」


メイメイが即座に眉をひそめる。


ユウキュ「お前は本当に、無茶苦茶だよな」


メイメイ「お前は本当に、無茶苦茶だよな」


ほぼ同時に同じことをいう元同僚たち。

どっちもどっちである。


そのとき。

小さな声が漏れた。


サクナ姫「……たすけて」


声の主は、ユウキュに憑依されているサクナ姫だった。

だが、その口調はどこか不自然で、まるで別の誰かが喋っているようだった。


ユウキュは困ったように肩をすくめる。


ユウキュ「サクナたんは意思が強くてさ。完全には憑依できてないんだよね」


ユウキュは楽しそうに続けた。


ユウキュ「でもねぇ、一生僕のものだからね。サクナたん。」


その言葉のあと、王の間が静まり返った。

さっきまでの空気が、少しだけ冷える。


ナギはぞわっとした。


ナギが震えた手でアイカの手を握る。


ナギ「……アイカ君。お願いサクナ姫を助けてあげて」


アイカは、一拍置いてから静かに言う。


アイカ「まかせろ」


それをみていた、バイオレットとメイメイは嬉しそうな顔をした。


そして、空気が、戦闘のそれへと切り替わった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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