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不幸体質の私、勇者の死亡フラグを折ったら世界が詰みました  作者: 梅道
第4章 魔王軍四天王ユウキュ 編 (前編)
18/20

18.聖女は救われたい

マンマミーア村にナギたちが滞在しているその頃、

魔王四天王ユウキュに支配された大聖堂では、

聖女マイがユウキュに捕らえられていた。


マイには幼い頃から不思議な力があった。

手をかざすだけで傷は癒え、病は消える。その力はやがて「聖女の奇跡」と呼ばれ、人々に崇められるようになる。


しかしそれは祝福というより、人生を縛る仕様バグだった。


親は生活費という現実的な理由で、マイを教会に売った。

(あ、私は“この人たちの子供”じゃなくて“物”だったんだ)


その瞬間からマイの人生は「聖女業務(休みなし)」に固定される。

笑顔で治癒、笑顔で治癒、たまに感謝されるが基本は連勤地獄。


(私、いつ自由になるんだろうなぁ)


そんなある日。

大聖堂は魔王軍四天王・ユウキュによって突然襲撃された。

「ドゴォォォン!!」という派手な効果音とともに壁が消し飛び、

気づいたら教会は“経営権ごと”奪われていた。


男たちは地下の労働施設へ、

女たちは「美少女コレクション展示室」に搬送。

そしてマイも、その棚の一角に丁寧に並べられた。


ユウキュ「ディふでぃふ……ふふふ……マイマイ、こちらにおいで」

玉座に座るユウキュは、やたらと舞台演出じみた動きで手を広げている。


マイ「……はい」


ユウキュの部屋は奇妙だった。

壁には謎のアート作品。

たくさんの美少女のフィギア。

意味はわからないが、本人はとても誇らしげだった。


ユウキュ「マイマイ、今日も“美”を磨く時間だよ」


マイ「私は人形とかじゃないんですけど」


ユウキュ「まずは心の準備運動」


マイ「そんなの初耳です」


ユウキュ「では……いつもの“お願い”」


マイ「またそれですか」


ユウキュ「“いつもの”って言える関係、いいよね」


マイ「最悪の関係性です」


ユウキュ「まずは……“軽く頬を赤らめてみて”」


マイ「やりません」


ユウキュ「では2秒だけでも」


マイ「時間指定するのやめてください」


ユウキュ「じゃあ1.5秒」


マイ「きも!」


マイは諦めて、ほんのわずかに視線を外し、軽く表情を崩す。


ユウキュ「……っ!!」

ユウキュは机に手をついて震えた。

ユウキュ「今の……“儚さ”が完璧すぎる……!!」


マイ「あたま大丈夫ですか?」


ユウキュ「次は“ぶりっこ”」


マイ「それさっきの続き?」


マイは無表情のまま、ほんの少し首を傾ける。


ユウキュ「ッ……!!」

ユウキュ「世界が……かわいいに包まれた……!!」


マイ「どこが?」


ユウキュ「いいこと考えた……これだ」

ユウキュは真剣な顔で言った。


ユウキュ「肘と肘を合わせる“調和の儀”」


マイ「なんのためですか?」


ユウキュ「お願い致します。」


ユウキュ「よよよよよ!!!!」


マイ「説明になってないです」


仕方なくマイは腕を寄せる。


ユウキュ「……見えた」


マイ「何がですか」


ユウキュ「肘と肘を合わせられるのは、貧乳の証拠だよッ!」


マイの眉が、ぴくりと跳ね上がった。

その瞳には、怒りが宿る。


ユウキュ「でも心配しないで!」


ユウキュはへらへらと笑った。


ユウキュ「貧乳はステータスだからっ!」


その後もユウキュの“奇行”は止まらない。


ユウキュ「両手をグーして」


マイ「はい」


ユウキュ「首を傾けて!!!」


マイ「はい」


ユウキュ「両方のグーを頭の上に持ってきて」


マイ「はい」


ユウキュ「かわいい」


マイ「……」


マイ(この人、本当に魔王軍四天王なの?)


数日後。


ユウキュ「今日は特別メニューだ」


マイ「嫌な予感しかしないです」


ユウキュ「“無言で見つめ合う会”」


マイ「ただの沈黙ですよね」


ユウキュ「芸術です」


五分後。

ユウキュ「……」


マイ「……」


ユウキュ「今、心が通じた」


マイ「通じてません」


十秒後。

ユウキュ「涙が出そうだ」


マイ「それ疲れてるだけでは?」


さらに数分後。

ユウキュ「これは……恋……?」


マイ「違います。げろ吐きそうです」


そんな中でも、マイは冷静に分析していた。


ユウキュ「マイマイ、最後に一つ」


マイ「まだあるんですか」


ユウキュ「“心から嫌そうな顔”してみて」


マイ「今ずっとそれです」


ユウキュ「完璧だ……!!」


マイ「何がですか」


その日も、魔王軍四天王の拠点は平和だった。

ただしマイの精神は、そろそろこわれそうだった。


マイは心から思う。

マイ(誰かたすけて)


謎の声 (大丈夫、今日あなたは勇者に救われる)


マイ (!!!!!!)


謎の声(あなたに、真の聖女の力を授けます。この力で勇者とともに魔王をたおしなさい)


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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