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不幸体質の私、勇者の死亡フラグを折ったら世界が詰みました  作者: 梅道
第4章 魔王軍四天王ユウキュ 編 (前編)
17/19

17.設定が渋滞してるパーティに加入しました

穏やかな風が吹き抜ける、豊かな自然に囲まれたマンマミーア村。


ナギたちは、そののどかな村の広場に立っていた。


旅の疲れを軽く伸ばすように、ナギはカバンを地面に下ろすと、隣にいるアイカへと声をかける。


ナギ「今日はここで一泊しようか」


アイカ「ああ、そうだな」

短いやり取り。だが、その空気はどこか落ち着いていた。


その時。


バイオレット「うおおおおおおおおお!!」

突如として、場違いな絶叫が広場に響き渡る。


次の瞬間、一人の少年が砂煙を巻き上げながら、ものすごい勢いで三人、そしてふわりと浮かぶ幽霊の前を駆け抜けていった。


ナギ「……って、あれは」

ナギが目を瞬かせる。


その少年バイオレットの手には、ひときわ目を引く一本の杖が握られていた。


それにいち早く気づいたのは、アイカだった。

アイカ「……おい、そこの少年!」


鋭い声が飛ぶ。


呼び止められたバイオレットは、数歩先で急停止し、息を切らしながら振り返った。

バイオレット「な、なんですか……っ」


アイカ「その杖……元勇者のものにそっくりだな」


その言葉に、バイオレットは目を丸くする。

呼吸を整えながら、彼はどこか困惑した様子で語り始めた。


バイオレット「さいきん、謎の声が聞こえてさ……そしたら突然、目の前にこの杖が現れたんだ」


アイカ「謎の声……?」

アイカの眉がわずかに動く。


その横で、ナギがくいっとアイカの服を引っ張った。

ナギ「……ちょっと」

背伸びをして、アイカの耳元へ顔を寄せるナギ。

それに合わせて、アイカも少しだけ腰を落とした。二人の身長差が自然と距離を縮める。


ナギは声を潜める。

ナギ「この人……私の“前の人生”の記憶だと、アイカたちと一緒に魔王を倒した人だよ」


アイカ「……っ!?」

なぜか、アイカの頬がわずかに赤くなる。

コホン、と小さく咳払い。


何事もなかったかのように顔を上げ、バイオレットへ向き直った。


アイカ「その声は俺をこの世界に召喚した、“この世界の管理者”だ」


バイオレット「えっ」


ナギと、横で漂っていたメイメイが同時に目を見開く。


バイオレット「なんだってー!?」

バイオレットも盛大に驚いた。


一拍の間を置いて、バイオレットはおそるおそる問いかける。

バイオレット「あなたが……勇者、なんですか?」


アイカ「……」


バイオレット「謎の声は言ったんだ。“勇者と一緒に世界を救え”って」


沈黙が落ちる。

風が、ひゅるりと草を揺らした。


やがて


アイカ「多分、その勇者だ。おそらく」


歯切れの悪い肯定。

だが、その言葉を聞いた瞬間

バイオレットは両手を大きく広げ、空へ向かって叫んだ。


バイオレット「マンマミーーーア!!!(なんてこった)」



なんやかんやあり。

アイカたちはバイオレットとともに、村の飲食店へと入り、同じテーブルを囲んで食事をとることになった。木のテーブルに料理が並び、ようやく落ち着いたところで、ナギが小さく手を叩く。


ナギ「まずは、自己紹介」

場を仕切るように、ナギは姿勢を正した。


ナギ「私は、勇者の仲間のナギです」


一拍置いて、隣を指さす。


ナギ「そして、この幽霊は元魔王軍四天王のメイメイさんです」


メイメイ「よう!!」

軽いノリで手を振るメイメイ。


バイオレット「……はあ?」

バイオレットは間の抜けた顔で固まった。

無理もない。

情報量が多すぎる。


コホン、とアイカが咳払いをひとつ。


アイカ「俺はアイカ。一応、勇者だ」


ぶっきらぼうに名乗ると、そのまま視線を向ける。


アイカ「君の名前は?」


バイオレット「バイオレット!!これからもよろしく!!」

勢いよく答え、にかっと笑う。

そのまま二人は手を差し出し、がしっと握手を交わした。


短いが、確かな契約のような瞬間。


アイカはふと、彼の手にある杖へと目をやる。

アイカ「ちなみに、その杖は使ってみたのか?」


バイオレット「いや、使ったことはねぇな」


アイカ「そうか。なら、使い方を教えてやる」

そう言うと、アイカはテーブルの上のコップを手に取り、入っていた水を一気に飲み干した。


空になったコップを、コトンと置く。


アイカ「バイオレット。杖を構えて、そのコップに向けろ」


バイオレット「お、おう!」

バイオレットは椅子から勢いよく飛び降り、杖を握りしめると、言われた通りコップへと向けた。


アイカ「コップに水があるイメージをしろ」


バイオレット「水……水水水!!」

半ば気合いのような叫び。


次の瞬間。


空だったはずのコップに、透明な水がすっと現れた。


ナギ「……えっ」

バイオレット「うそ……」

ナギとバイオレットの声が重なる。


アイカは小さくうなずいた。


アイカ「そう。その杖は“イメージを具現化する”」

淡々とした説明。


しかし、その力の異常さは隠しきれない。


アイカ「だから、前任者。異世界から来た勇者で、その杖を持っていたやつは……最強だった」


(……まあ、俺がいた世界の方が科学は発展しるから、近代兵器作ったりしてたし)


心の中でだけ、ぽつりと付け加える。


バイオレットは、目を輝かせたままコップと杖を見比べていた。

まるで、新しい世界の扉が開いたかのように。

アイカはそんな彼を見て、わずかに口元を緩める。


アイカ「これからよろしくな」


その言葉に、バイオレットは力強くうなずいた。

こうして。

魔法使いバイオレットが、正式に仲間に加わった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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