第11話「小娘だからって馬鹿にすんじゃねぇよ?」
鬼北町について間もなく魔女たちの襲撃を受けた萌香たちは気絶した魔女らをどうするか話し合う。拘束しようにも魔法が使える彼女たちにそんな手はないとみて放置することに。
違う魔女などの襲撃にも備えたが何事もなく彼女達はそのラーメン屋に着く。
愛媛県鬼北町の一角。「風太のラーメン屋」こと林風太のラーメン屋。
「ただいま!」
引き戸を開き萌香は元気よくその言葉を口にする。
「萌香……」
「勝手に家をでて、ごめんね。偉そうだけど心配になって帰ってきちゃった」
「そうか。帰省みたいなものか。そこのネーチャンは広島でできた友達か?」
「銀山ソラといいます。彼女の働く喫茶店で一緒に働いている職場仲間です」
「私のマブダチだよ。彼氏もついてきているのだけど、恥ずかしくって段ボールに隠れているの」
「はは……何はともあれ元気そうで良かった。タダでラーメンをだしてやるよ。適当に座って」
「ぼ、ぼくもいいのですか?」
「うわぁ!! どっから出てきた!?」
高津がスッとソラの真横に座る。
久しぶりの親子の対面は意外にも和気あいあいとしたものだった。
「知事が変なことをやりだすものだから、街は賑わっているけど、変なところになっちまったよ。この四国ってところは。萌香は広島にいって正解だったなぁ」
「やっぱり……そうなのね。トンキッチャンとかは元気?」
「ああ、秋桜の長を一応はやっている。知事に対して反乱をおこすのかどうかをお前も心配しているようだが、ブツブツ文句を言いながらも平穏に過ごしている。カジノが街にできることでアイツも色々稼げると言っていたからな」
「あの……これって私や横の現CEAメンバーが聞いても大丈夫なの?」
「大丈夫さ。今の俺はただのラーメン屋の親父に過ぎない。ここで何を言ってもただのオヤジの戯言に過ぎないさ」
「うまいっ! メチャメチャうまいですよ! このアッサリしたラーメン!」
「ははは、お兄ちゃんはそっち系が好きそうな顔をしていたからなぁ。俺ぐらいやっていると客の顔をみただけで好みが分かるっていうものさ」
「すごいですね……私のラーメンもすごく私好みです」
「へへっ。そっちはどうだ? 萌香が迷惑をかけてないか?」
「とんでもない! むしろ店の繁盛に凄く貢献してくれていますよ! 彼女にはお世話になりっぱなしです!」
「うひひっ♪ ソラたん、嬉しいことを言ってくれるじゃないの♪」
それから萌香たちは萌香がかつて遊んでいた山々に繰りだすことにした。
虫たちも豊富に生息しているそのエリアに高津は興奮を抑えられない。
萌香も人の姿のままにはしゃぐ。ソラも自然とそれに合わせていた。
どこかそれは彼女たちが幼心に還っているかのようで。
遠くから風太は腕を組みながらそれを微笑んで見守る。
とても平和なひとときがそこにあった――
愛媛県庁。その一室でこの日も愛媛県知事の中谷篤子が同胞の2人を迎える。
「計画は順調に進んでいるようだぇ」
「えぇ。エリートのなかのエリートとしてこの結果を誇らしく受けとめています」
「しかし、狸共の集団一揆も水面下で進んでいるぇ」
「そうですか? エリートのなかのエリートたる私の耳には入っていませんが?」
「雑草の奴らなら多くが戦意を失くしているとアタシも聞いている。あ、雑草でなかったわ。コスモスだったかしら?」
「その秋桜が戦意をあげているという。儂を攻撃する作戦をたてだしているとかいう噂がこの耳に入ったぇ。忍、本当にお前は知らないぇ?」
そこでドンッ! とドアが開く。
「九尾様……すいません……」
ドタッと妖怪の職員が倒れる。彼は人のナリをしていたが、倒れると共にその妖怪の姿を露わに。
すぐ後ろに返り血を浴びた塩塚萌々子が立つ。
「よう、面白い話をしているじゃねぇか。オイラも仲間にいれてくれねぇか?」
小池と板尾は言葉を失い立ち尽くす。しかし中谷は違った。
「クククッ! アハハッ!! ハーハッハハハ!!! 自ら鉄砲玉になって出て来るとは命知らずもいいところだぇ! 板尾! 小池! コイツを始末するぇ!」
そこ場で萌々子は抜刀し、中谷の首をバッサリと斬る。
しかし生首となった中谷。いや、九尾はそれで死ぬこともない。
「何をやっているぇ!!! やらんかぇ!!! 手下ども!!!」
「動けません」
「動けないの」
「なにぇ!?」
小池と板尾は金縛りにかかったようだ。それは目を禍々しく真っ赤に光らせる萌々子をみるに明らかだ。
「さすが九尾。これしきで死にはしないか。だが、オイラは剣術好きなものでな。いくらでもアンタをサンドバックにして楽しむことができる。話がしたいのだと言っている。殺し合いじゃなくて話し合いをしねぇか。話し合いが通じない野郎でもないだろう? 狐ババァよぉ。失敬。中谷知事さんよぉ」
この狭い空間では中谷は九尾化をすることができない。
「小娘……小癪なマネをするぇ……」
「どうすんだ? 答えやがれ」
「ふっ、まぁ話し合いだけで満足するならいいだろうぇ。そっちの条件は何だぇ?」
「アンタがやろうとしている計画の全面中止。ここは人と蛮狸の町々だ。それを受け入れたうえで県政を全うしやがれ。この野郎」
「ふふふ、乱暴な真似をするものだぇ。だが、それを呑むなら儂らは何を得る?」
「これ以上の干渉はこっちから何もしねぇ。だけど、これ以上人でも狸でもない野郎共を増やすなら、全面戦争って話さぁ」
「ふふっ、いいだろうぇ。この場では承った」
中谷の生首は飛びあがって本体とひっつく。そして元どおりに。
「だが、この世界線で儂ら3人は社会的優位な立場にあるぇ。いま、この四国で生活する妖怪達は処分できないぇ。彼ら彼女らにも人権はあるからだぇ」
「ふん、そりゃ分かっているさ。でも、アンタらはヤツらをもっと増やそうって言うのだろうがよ? それをやめろと言っているんでぇ。今度はその耳を斬りとってやろうか? なぁ。おい」
「話し合いだろうぇ? これ以上の条約はないだろうぇ?」
「そこにサインしろや」
萌々子は中谷へ紙を投げ渡す。
それは妖怪を増やすとしている中谷の計画中止に同意するという旨が記された書類。そこに血痕のサインを残して萌々子たちに送れと指図。それからようやくして彼女は県庁をでていく――
「はぁ……はぁ……何なの」
「九尾様……あれは蛮狸の」
中谷に怒りがこみあげない訳がない。
「いいだろうぇ。サインしてやるぇ。そのうえでアヤツを始末する算段をたてるぞぇ。分かったなぇ!!! オマエラェェェ!!!」
その奇襲は腹黒くも勇敢な一手だった――
久しぶりに萌々子が登場。四国四天王決戦編です。
次号(#^.^#)n9ドーン!!!




