六章 姫、学びを考える
「姫よ、先の話について考えを聞きたい。」
長の言う先の話とは、この国の東部に飢饉が起こり、食料を送ってもらうよう中央に使者が来たとき、いかがするか、というものである。
姫は答える。
星を読んだところ、東部の食料不足は深刻なものではなく、援助によって得た食料を用いて、中央に兵を向ける兆しがあると知ったこと。
よって、今の中央と東部の関係を見るならば一度は断り、深刻な状況を明らかに知らせる使者が来るのを待って、東部に食料を送ると、姫は言う。
「狐族の長よ、しかし私には、飢饉が起きた時点で東部に食料を送れば、民は確実に飢えずにすむとも思う。」
「姫よ、食料を送り、戦乱が起きれば、巻き込まれるのは民である。
戦によって命を落とす民の方が多いだろう。
今を生きる民を想うことが、先に生まれる民を殺すこともある。」
「狐族の長よ、今と先の両方の民を救う方法はあるか。」
「姫よ、その方法があるときは、それをせよ。
方法がないのに迷うは、今の民を死なす。」
子狐は、縁側に座る二人を、交互に見る。
「狐族の長よ、私は全ての民が生きる道を探す。
そして、見つけた暁には、政務に関わる立場に就く所存である。」
長は語る。
では、そのときまで己の未熟さに打ちひしがれること。
これは、姫が憎くて言うのではないこと。
姫は、暦や星の読み方に通じることで、確実に成長していること。
しかし、傲慢になった知恵者は国を傾けると、長は言う。
「姫よ、ところで、暦と星を読むことで、何を学んだか。」
姫は答える。
暦を読むことは、日々多くの人の話から、見落としてはならぬ兆しを、見抜くことができるようになること。
星を読むことは、吉凶の兆しを踏まえ、更なる策を練ることができるようになること。
食料を送るか否かの話は、日々人の話を聞き、暦と星を読むことで考えることができたと、姫は言う。
「姫よ、そなたは聡明である。」




