四章 姫、語られないことを考える
「姫よ、先日の話に出てきた、戦について、今日は話そう。」
長は、子狐の毛づくろいをする姫を横目に、縁側に腰掛け、語り出す。
「原則は戦うなかれ、やむを得ずして兵を用いるべし」という言葉が、大国の戦の書にあること。
しかし、その書を読み終わる頃には、戦の仕方について詳しくなっていること。
戦わずに勝つ方法が、あまり書かれていないこと。
また、書を記す者は、本当に大事なことは胸に秘めたくなる誘惑に駆られること。
察するに、戦の書を記した者は、外交に強かったかもしれないこと。
民を想うならば、姫も外交をよく知ること。
しかし、外交は化かし合いの場でもあるため、真実をよく見失うこと。
そのときに、占いが今を考えるきっかけになること。
いずれ伝える、暦や星の読み方が分かると、些細な事実が結びつき、周りの思惑が見えてくること。
この話は、今分かる必要はなく、聞き流してよいと、長は言う。
「狐族の長よ、暦や星は天に関わるが、天に中心はあるのか。」
「姫よ、天に中心があるか否か、天全体を見たことがないため分からぬ。
しかし、民が求めていることは分かる。
巡る星々から北極星を中心に見定めると、自分の居る場所が分かる。
今は、国の中心に帝がいることと、同じかもしれない。」
姫は、「神話、英雄、中心、帝、民」と呟くのであった。




