第4章:とうとうなれる?冒険者ギルドへ04
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第4章:とうとうなれる?冒険者ギルドへ04
リリィ視点
暗い闇・・・暗いのに闇ってどういうことだろう。暗いのか闇なのかわかりもしないのに。あぁ、嫌だ。この観じ。徐々にはっきりしてくる、これは目が覚めてしまう前の感覚だ。あぁ、瞼が開いてしまう。うっすらと瞼から明かりが見えてくるが同時に全身に駆け巡る痛みにより強制的に目が覚まされてしまう。
「うぅぅ・・ぐぅぅううぅぅ。」
「リリィ、大丈夫か?」
牢屋とも言っていいそこは奴隷部屋だ。声をかけてきたのはバリアルさん。両親が死んだ私を数年前から何かと助けてくれた人物だ。ただ、ここにたどり着く途中に腕と足を失ってしまった。魔法で傷は塞いだが失った腕や足との縫合は上手くいかず、結局のところ失ってしまった。
それでも、この二人しかいない奴隷部屋で唯一私のことを気にかけてくれる人物。自分も四肢欠損という大怪我で生活に不自由も多いのに、私なんかのことを気にかけてくれる。感謝しかないが今の私に返せるものなどないのだ。
この世界には絶望しかない、いや同情もか。生まれた時の記憶はない、でも物心付いたときはそれほどひどい生活をしてはいなかった。両親がいて兄弟は妹がいたはずだけど、もう顔も思い出せない。両親の顔も曖昧だ。
私はそれまでそれなりの幸せを享受していたと思う。でも、7歳くらいの時この身体の病気になってから全てが変わってしまった。両親は方々手を尽くして医者や高名な回復魔法の使い手、あらゆる神職の人を頼った。怪しげな儀式めいたこともしたが全て効果らしい効果はなかった。
この病気は皮膚の病気だと思うが、何もしなければ皮膚が爛れて腐っていくというものだった。だけど体の中も同様に腐っていくような感覚を常に味わった。食べた物も味なんてわからない。そもそも味が付いてたのかも今では分からない。
何もしなければ皮膚は腐るがその腐った部分を拭けば肉が落ち腐ることはない。しばらくすれば拭いたところも腐るがある程度回復はするようだ。もうその頃になると衰弱して痛みに耐えることしかできなかった。この病は顔にだけは出来てなかった。それが幸いしてか経緯は分からないがいつの間にか奴隷商に買われていた。9歳か10歳くらいのときだろうか、バリアルさんとはその頃からの付き合いみたいだ。詳しいことは分からないが気が付いたらいてくれていた。
顔だけは無事だったからそれなりに需要はあった。その為、奴隷商は奴隷のイロハというか最低限の奴隷としての立ち居振る舞いを教えてくれた。ただ痛みの中無理やり教えられたのであんまり頭には入っていなかった。それでも買い手はついたが体を見てすぐに返品されるということが繰り返された。
死にたいとは思っても死ぬのは怖かった、今でも気が狂いそうに体中が痛いのに死ぬにはどれくらいの痛みが必要になるのだろう。私はもうこれ以上痛みは欲しくない。汚らわしい物を見るような目で見ないでほしい。ただ、ただ普通に生きたい。そんな願いも私には遥か高みのものだった。
この世には絶望しかない。そんな時にまた買い手がついた。今度は若い人だった。どこかに行くのに道案内が欲しいらしい。私は道なんて知らない。バリアルさんが目当てだったがバリアルさんは私も一緒に買ってほしいと願い出たらしい。
正直、私に旅なんて出来ない。無事だった顔も最近は腐るようになってきていた、顔の皮膚が剥がれ堕ちる・・・精神的には凄く堪えたなぁ、身体も何もしなくても寝てるだけでも痛いのだ。歩く?私が歩いた後には私の足跡には私の肉の道が出来ているだろうな。考えただけでもゾっとする。
そんなことを考えていたらいつの間にか周りが暗くなる。奴隷部屋にいたから分からなかったが外は夜だったのだろう。暫く買い手も付かなかったから外は久しぶり。でもなんだろう、何も見えない。何も感じない。あれ?自分の存在も希薄に感じる。気がつけば痛みも忘れていた。おかしい、痛みを感じないのは寝ている時だけだったのに・・・。
もしかして、死んじゃったのかな?死ぬって痛くなかったんだ。だったらもっと早く死ねば良かったかな。あぁ、痛みから解放されたと思ったらとても気持ちが晴れやかだ。次に生まれ変わるなら健康な体がいいな。そしたらやりたいことが一杯ある。外でいっぱい遊んで色んなものも食べて、大きくなったら恋愛とかして、恋愛ってどんなのかわからないけど痛いより良いものだろうな。そして結婚して歳をとって死んでいく。そんな当たり前をしたいな。
暗闇から光が満ちた、目の前が明るくなり眩しくて目が開けられない。
「うっ・・・あ・・。」
「ん?まだ寝てろ。」
誰かわからないが優しい声で話しかけられた。きっと神様なんだろう、ならお言葉に甘えさせてもらおう。なんだかとっても疲れちゃった。
「ん。」
少しして、周りから声が聞こえてきた。重い瞼を開けると、少年とも青年とも言えるくらいの年頃に男の人が目の前にいた。この人が・・神様?
「あっ・・・かみ・・・さ・ま?」
「痛く・・ない・・顔も目も頭も腕も背中も全部・・・痛くない。痛くないよぅ・・・。」
そんな私を見てか
「・・・そうか、良かったな。」
一言、呟いただけでした。勇気を出して話しかけてみました。
「あの!か、かみさまですか?」
私の問いかけに面食らったって雰囲気でお面を付けた顔の前で慌てて手を振りながら否定していた。
「神?違う違う、そんなもんじゃない。」
「でも、私ずっと願ってました。・・・・・ここから・・・助けてくださいって。・・・・目も見えなくなってもうダメだって思ったときに救って・・・くれました。」
「それだって、そこまで自殺もせずに生きてきたリリィの強さだろ。」
「でも、でも!」
納得できませんでした、自殺をしなかったのは強さじゃない。それは弱さからだと思う。私は少しも強くない。自分じゃ何も変えられなかった。
「この話は終わりだ。そろそろ前を隠してくれ。」
納得できずに詰め寄ろうとした時にそう言われて、自分を見ると全裸だった。急に顔が烈火のごとく熱くなるのを感じる、隠さなきゃ!
「ひゃっ!」
それから、ロッカクと名乗るお面を付けた不思議なご主人様とそのお仲間とバリアルさんと4人での旅が始まった。私は奴隷ということで奴隷商から聞いた奴隷の扱いを思い出して体が治ったこともあり、少し不安になった。奴隷というのは戦える者は戦闘奴隷と言って前衛で使い潰したり囮に使われるもの、女だと性的な対象とされるって聞いていた。中にはまだ未熟な女の子が好きな人が多いんだって話も・・・。
でも、奴隷なんだし何よりあの体を治してくれた人だから報いたい、それで恩を返せるならって思ってた。なのに、全然そういう素振りを見せない。私みたいな子供はダメだということなのかな?仲間のシェーラさんの胸やら足はチラチラ見てるし、興奮したオスの匂いをさせてることもあったから、女の子は好きだと思うけど。
そうか、そういえば元々私目当てで買ってないからかな。道案内が欲しくてバリアルさんを買って私はオマケみたいなものだったみたいだし。
戦闘は出来ない、性的な対象としても見られてない。これだと私がいる意味ってないんじゃ・・・。オマケなんだからそこまでの意味もないのかもしれないけど、このままだと恩返しは出来ない。
そんな時、バリアルさんが私とシェーラさんを鍛えてくれることになった。見るからに武人のバリアルさんから教われば私でも戦えるようになるかな?
現実は残酷だ。私はバリアルさんに軽くあしらわれ、シェーラさんも体術が凄かったそれでもバリアルさんには手も足も出なかった。そんなバリアルさんもご主人様には歯が立たなかった。私、いらない子だ・・・。
焦る。このままじゃ居場所がなくなっちゃう。必要ない道具は捨てるか売られちゃうって聞いたことがある。体が治っても捨てられる、私っていったい何なんだろう。
道中、必死にバリアルさんに戦い方を教えてもらった。少しでも役に立ちたい、でも鍛えても実感はまるでわかなかった。ほんの数日で実感なんて湧かないのは当たり前だけど、そんなこと私には分からない。ただ、焦る。
戦いに明け暮れる、というほどじゃないけど襲い掛かってくる魔物は私とシェーラさんで倒すことになっていた。危なくなったらバリアルさんが助けに入るってことでどうにか倒すことが出来ていた。だけど、魔物ってこんなに頻繁に遭遇するものだったんだ。午前中だけでも3組のオークとゴブリンの群れを倒した、3-4匹ずつだけど普通の人はどうしてるんだろう?
そんなことを思いながら進んでいると魔族と出会った。魔族の人が言うにはご主人様は魔王らしい。問答無用で私たちにでっかい火の玉をぶつけると生死の確認もしないでどこかへ行ってしまった。確認なんてされたら私たちは殺されていただろうから物臭な人で良かった。襲われてよかったって言うのも変かな。
「怖くない・・か?」
魔族の人に襲われてお面が割れてご主人様の顔を初めて見た。何故か少し怯えたような匂いがする。怖いわけがないのに。
「ん、神様は守ってくれたから、怖くない。」
当たり前の事なのにどうして聞くんだろう。でも、思うんだ。守られたから怖くないって・・・自分で言ったのに、そうじゃないんだ。きっと守ってもらわなくても怖くない。だって、私の全てを救ってくれた人だから。無条件に怖いことなんてない。なのに、出てきた言葉は、上手く伝わらない。伝えられない。ずっと、痛みで苦しんで人と話すことが極端に少なかったからかな。言葉にするのは苦手。これも私の今後の課題だ。
私はご主人様の顔を初めて見た。黒く艶やかな綺麗な髪、吸い込まれそうな黒い瞳。触れてみたい黒い髪、見とれるくらいの毛並みだ。でも、ご主人様はすぐに魔法で色を変えてしまった。茶色の髪になった、目も茶色だ。なんでも、黒いのは魔族の印らしい。魔族ということで差別を受けたことがあるそうだ。詳しいことは教えてくれなかったが、私も獣人だから少しはそういう扱いも受けたから分かる。変えようのないことで差別されるのは辛いこと。ご主人様がそういう気持ちを持っていたことに私は親近感を覚える、ご主人様には辛い記憶なのに、似た経験があるということは少し嬉しかった。
魔法で変えてしまう気持ちも良く分かる。またいつかご主人様の黒髪を見せてほしいなぁ。それまでにもっと強くなろう、ご主人様が私を守る対象じゃなくて傍においてもいいと思えるくらいに。




