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もう魔王やめます。  作者: まさきえき
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第4章:とうとうなれる?冒険者ギルドへ01

ようやく新章突入です。長かった・・・。

そんな私にブックマークの差し入れをお願いします。

第4章:とうとうなれる?冒険者ギルドへ01



 内心毒付きながら、入り口を入る。中は活気に溢れていた。今は依頼が数多く張り出されている、瓦礫の撤去や、薬草の採取に薬の材料となる魔物の素材集め。滅入る依頼では墓穴堀なんてのもある。数多くある依頼を捌くだけで手一杯といった様相だ。



 そんな中、一人の職員がこちらに気が付いて近寄ってくる。あっ、昨日の犬耳の女性だ。



「わざわざお越しいただきありがとうございます。すいません、本来はお迎えに行くのですが一夜明けるとこの有様でして。」



 申し訳なさそうに頭を下げられるが、これを見ると迎えに来いなんて言えない。



「構いませんよ。それで、俺達を呼んだのはどういうわけですか?」


「それに関しては奥でお話いたしますので、少々お待ちください。」



 犬耳さんが隣の酒場のウェイトレスに何か話しかけると了承したのか、いそいそと奥へ引っ込んでいく。



「お待たせしました、ではこちらへ。」



 そう言って、酒場の奥の個室へと通される。こういう密室って嫌なんだよな。襲撃に極端に弱い造りだし。それが分かったのかバリアルも周囲に注意を払いだす。俺も水魔法で空気の動きを察知するよう魔法を展開する。これで隠し通路や人の動きが分かる。



 欠点は空気中の水分が少し増すから若干不快指数が上がるってことだ。若干ね。日本の梅雨ほどではないから俺は気にならないが、こっちの気候は乾燥気味だから嫌がる人もいそうだな。



「では、少々お待ちください。」



 俺達だけにされたところで、シェーラが口を開く。



「ねぇねぇ、何の話かな?このまま、街を救った英雄ってことにされたりするのかなぁ!」


「わくわくしてるところ悪いけど、俺はそんなのごめんだからな。目立つことは控える、これ大事。フラグは立てません。」


「ふら?何のことか分からないけど、せめて冒険者になりたいんだけど。」


「まぁ、それくらいなら。」



 ちょうど話が切れたところで扉が開かれる。まるで中の話を聞いてたようなタイミングだな。部屋の前に誰かいたのは分かっていたから、いいけど。



「お待たせしました。私が外苑街冒険者ギルド、統括をさせてもらっています。アレス・ソートと申します。以後お見知りおきを。」



 目の前に現れたのは身長150㎝ほどのずんぐりとしたおじさんだった。そう、おじさんだ。頭は剥げてはいない、あえて剃っているという体で禿を隠している。顔は髭を蓄え普段なら威厳溢れるものだろうが、いかんせん今は疲れ切ったという感じだ。服から覗く腕は筋骨隆々というべきがっしりとしたものだ。これは、アレだな。ドワーフっていう種族なわけか?



 目の前のファンタジー種族に少し興奮を覚えながら自己紹介を聞いていた。見た目に目を奪われている間にバリアルが気を聞かせてくれる。



「儂はバリエル、こちらはパーティを率いるロッカク殿。あとこちらがシェーラにリリィだ。」



 それぞれ紹介をされ頭を下げる。俺が呆けている間に話が進んでいた。いかんいかん。



「それでアレスさんは、どうして俺達を呼び出したんですか?」


「呼び出したというか、お招きしたかったんです。実は、あなた方がこの度の戦いで決め手になる功績を上げたというのをお聞きしまして。」


「ほう、そんな噂が?」



 探るような物言いなのであえてはぐらかして返答する。目的はなんぞ?



「えぇ、どうもこの度の襲撃ではゴブリンキングが率いていた、ということを聞きまして。」


「そうですか。」


「そして、それを倒したのがあなた方ではないかという噂を聞いたわけです。」


「それはそれは、私たちにそれが出来るとお思いですか?」


「んー私にはわかりかねますね。ただ、誰が倒したか・・・それは私にはどうでもいいことです。」



 ん、話の方向が変わった?



「正直に言いますと私どもは魔物が残した魔晶石を欲しています。」


「魔晶石?」


「この度の戦いで外苑街の防衛能力の低さを露呈してしまいました。一般街を囲むように建っている柱をご存知ですか?」


「えぇ、なんでも魔法の力で防衛しているとか?」


「そうです。高レベルの魔晶石を魔力の起点に展開していわゆる不可視の防壁を張っているわけです。」



 そんな原理だったのか、わかったところで再現は出来ないけど魔晶石を欲しているってことはそういうのを専門にしている人がいるんだろうな。



「これまでも、討伐依頼で倒された高レベルの魔物の魔晶石を買い取っていましたが残念ながらそれでも街を守ることは出来ませんでした。」


「どういうことです?高レベルの討伐クエストなんてこれだけ大きい都市だと一定数あるでしょう?」


「えぇ、もちろんです。ですから買い取りにもライバルが出てくるわけでして。」



 なるほど、買い取る相手がいる。街が守れない。つまり外苑街の住民じゃない。まして外苑街なんかどうでもいいと思っている人物、集団がいるということか。



「つまり、そいつらが買いに名乗りを上げる前に買ってしまおうというわけですか?それはこちらに利益が少なくなってしまう。そういうことですよね?」


「えぇ、端的に言うとそういうことです。」


「正直なんですね。」


「いえ、そういうわけではありません。ただ、目立ちたくないと言われるので・・・守備隊長が探していた魔晶石を売るとなると希少なものですし、どうしても足が付きます。その点、私どもが買い取れば冒険者ギルド内で秘密裏に防衛に使うわけですから外部に漏れることはありません。」



 暗に立ち聞きしてたの認めやがった。まぁいい。



「それでも漏れないという保証はないでしょう?」


「魔晶石を防衛柱にするのは私がしますので、漏れません。もちろん、漏れたら私自身許されないでしょうから漏らすわけにはいきません。」


「ちなみに、あなた方に売るとして相場のどのくらいになるんですか?」



 その言葉を聞いて、こちらの気持ちが傾いたと読んだのか表情を柔らかくして答える。



「およそ、6割。出せて7割。」


「はぁ!?いくら何でもぼったくりじゃないの!?」



 それまで黙ってたシェーラが声を荒らげる。そういうところは前と変わらないんだな。でも、生きる為にはお金は大事。不当に安く買いたたかれるのは俺も本意ではない。そういうのもシェーラは分かっていて声を上げたようだ。俺のほうをチラッと見てたし。



「しかし・・・私達にもそのラインが限界でして・・・。」


「もう少し何とかするべきでしょう?これなら無理してでも一般街に持ち込んだほうがお金になるじゃない。」


「シェーラの言う通りです。いくら何でも酷い、こちらを甘く見ているとしかいえない。」


「で、ではいかほどなら・・・?」



 いかほどならって・・・商人には向いていない人だな。買取側が売却側に言い値で買おうとするなんて一番やっちゃいかんでしょうに。



「8割。これ以上は無理です。あと、今後ギルドで行う討伐依頼をランクに関係なく受けさせてもらいたい。それに伴い、素材の買い取りは人目につかないところで行いたい。それから私たちの関与の一切を極秘にすること。こちらが欲しい情報については優先的に回すこと。あ、ついでに今盗賊ギルド所属になっているので冒険者ギルド所属への変更。あとは何かあった時には便宜を図ってほしい。そのくらいか。」


「うー・・・ん、ん?それでよろしいんですか?」



 要求の多さに驚いていたようだが、要はギルドとして行っている冒険者への情報提供を優先的に行うことくらいだ。あとは一般業務内で済む話だろう。所属変更は任せればいいだろうし。



「構わない、この約束が違えられたら外苑街の防衛柱・・・だったか、それに今回のゴブリンキングの魔晶石が使われていると公表されることになると思ってくれ。これで一蓮托生というわけだ。」


「そうですね、私どもとしても悪い取引ではないと思いますので構いません。」


「そう言ってもらえれば助かる。そうそう、欲しい情報としてはまず医者の情報が欲しい。仲間が記憶に関する病に関わっているからな。」


「わかりました。医者に関することでしたら時間はそうかからないと思います。では、支払いを行いたいと思いますがまずは冒険者ギルドに所属を変えてからでよろしいでしょうか、それから口座を作りますので。」


「口座?」


「盗賊ギルド所属でしたな、ではご存じないかもしれませんが、冒険者ギルドでは冒険者それぞれが口座を持ちそこに依頼料を振り込まれる形をとっています。それにより多くの現金を持ち歩かなくて済むようになります。」



 銀行口座と同じような物か。それは正直助かるな。俺には魔法の影箱があるが他の人の前では使いにくいし、口座があれば信用にもつながるだろう。



「なるほど便利だな。」


「口座に多くの金を預けられる冒険者はそれだけの実績があると判断されます。もちろん、残高は本人にしかわかりませんのでギルド職員でもどれだけ預けられているかまでは知ることはできません。」


「ま、出し入れの頻度でそれも予測が付く。と、いうわけか。」



 ほう、と唸りながら顔を上げる。



「今更ながら、なかなか目端が利くようですね。それをギルドで判断し信用度を図るということを行っています。もちろん、秘密裏に・・・ですが。」


「なら、その情報も極秘扱いだ。」


「やはりそうなりますか。致し方ありませんね。適当に出し入れの情報を偽っておきます。」



 だいぶん、無理を言ったような言っていないような。ここまで来ると俺のパーティメンバーが呆れた顔をしている。平然としているのはリリィくらいか。まぁ、もともと表情が乏しいから読めないが。



「最後に一つだけ、教えていただけませんか?」


「なんだ?」


「あなたは一体、何者なんですか?」



 その問いに、まさかの人物が答えることになる。



「ご主人様は魔王。夜の・・・魔王様。」



 そう言って俺のほう熱い眼差しで見つめてくる。いきなり何言っちゃってくれてんの!?

バラしちゃダメなやつでしょ!?



「夜の・・・魔王?」



 呆けたように呟くアレス。



「そう、私とご主人様だけの・・・秘密。」



 それを聞いて、アレスはハッとして訳知り顔で頷き、こんな小さな子を・・・確かに夜の魔王・・・。とか、呟いちゃってる。ふと横を見ると満足げなリリィの後ろでワナワナと肩を震わせるシェーラが・・・。



「ちょっと!!いつの間にそんな・・・そんなことになってんのよぉぉ!!」


「いっ!!お、落ち着け!」



 俺の胸ぐらを掴みグラグラと揺さぶりながら問い詰める。バリアルがため息つきながら呆れてるのが見えるが揺れすげてブレブレだ。



「さすが・・・夜の魔王様ですね。」


「お、おい!変な納得の仕方するなって!」


「離しそらさないで、説明しなさいよ~!」



 収集が付かなくなってきた俺達を横目に、事務処理をするからとアレスは席を立ち、パーティメンバーだけを残し部屋とその周囲から気配が消える。



「ほら、シェーラ。もういいぞ。」


「もういいって何よ!説明になってないじゃない!」


「バリアル、説明頼む。」


「丸投げされるとは・・・いいか、これは相手を油断させるための演技だ。全ての情報を開示するよりそれに似た情報を流せば、都合のいいほうを信じる。そういうことだ。」



 唖然とした表情でこちらを見つめるシェーラ。その通りだと言わんばかりに頷く俺。そうなっても私は構わない、むしろ奴隷の扱いとしては当然、とリリィ。ってオイ。



「あんなこと言ってるじゃない!」



 ほら、話が戻りそうじゃないか。引っ掻き回さないで・・・。



「落ち着けって!これまでそんな機会なんてなかっただろ!?」


「・・・それも・・そうね。うん。」



 地味に疲れるやりとりの暫くのち、冒険者ギルドの職員を伴ってアレスがやってきた。では登録を行うってことだそうだ。



「詳しいことは私から説明させていただきます。」


「よろしく。」


「はい、ロッカクさんとシェーラさんは盗賊ギルドからの移籍という形になります。そうすることで依頼の達成実績を引き継ぐことが出来ますので。バリアルさんとリリィさんは新規登録となります。」


「儂は昔、冒険者ギルドに登録しておったが?」


「確認しています。それは失効している為に新規となっています。失効要件は一定期間の依頼の受領がなかった場合です。これは正当な理由があろうがなかろうが適応されます。ご注意ください。その場合は全ての実績が白紙扱いとなります。」


「つまり、Fランクから再スタートってわけか?」


「そうなります。」


「皆お揃いというわけか。ま、一人だけランクが高いのも歪だろうし。丁度いいか。」


「では、説明を続けます。冒険者ギルドに加入した方には漏れなく冒険者カードが発行されます。これは他のギルドと一線を画すものです。身分を証明するものでもありますし、魔物を優先的に倒すことから羨望の眼差しで見られることになります。ですので、それに見合った行いを期待します。」



 過去の記憶を辿るとそれに見合った行いなんてされたことないなぁ。






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