第3章:交易都市in魔王015
第3章:交易都市in魔王015
門のほうから怒号が響いてくる。人と人とが罵りあうような声だ。
「門を開けてくれ!開けろ!」
「それは無理だ!表門が破壊されたときに荷上柱が損傷して上げられんのだ!それに上げることが出来ても下げることが出来んかもしれん、そうなったら一般街を守ることが出来ん!」
「なら、俺達は誰が守ってくれるんだ!?お前らも出てくる気ないじゃないか!」
「そちら側にも兵士がいるはずだ!それにそちらの冒険者ギルドに緊急依頼を出している!」
「そんなの、この有様を見て言ってるのかよ!!」
「それは・・・。」
「どいてくれ!通してくれ!」
「あ、あんたは。」
門に殺到する人々をかき分けてミリアが前に出ていく。市民も自分たちを守っていたミリアには素直に道を開けている。中の兵はその様子を見て安堵の息を漏らす。落ち着いて話が出来る相手が出来るとでも思っているのか。
「一般街の守備隊と見受けるが、責任者はおられるか!」
兵士の間を抜け、中年の金属のハーフプレートを来た男が進み出る。他が皮鎧を着ていることから上位者だとわかる。
「私がこの門の守備隊隊長ギレス・キーラムだ。お前たちは第3層街の兵士か?私を呼び出すとはどういう了見だ?」
「まず、名乗らせてもらうが私はミリア、トラバの街よりこの都市へ派遣される為に来た者だ。街が魔物に襲われていたために緊急措置として防衛に参加した。」
「そうかそうか、それはご苦労。引き続き、街の防衛に尽くすがいいだろう。」
「そのためにも、市民を中に入れ物資を提供していただきたい。」
「ふむ、・・・それは現状では出来ない。」
「何故だ?」
「・・・なぜ?物資を提供するともしこの門が破られたときに中の者が困るであろう。食料から治癒魔術師、それらを提供してもし治癒魔術師が死んだらどうする。中の兵士が回復できないではないか。
「・・・今現在、治癒魔術師や物資を必要としているのはこちら側だというのは明白ではないか!」
こちら側の当たり前の要求もあからさまに飲む気がない様子の守備隊長に痺れを切らすミリア。頭に血が上ってきているのがわかるな。尻尾の毛が逆立ってきている。
「話にならん。もっと上の者を呼んでくれ。」
「それも却下だ。この門は現在、私の管轄で全てを任されている。開けないということも上は知っているし
了承も得ている。これは覆らない、もちろん上の者もここには来ない。」
「なら、ここにいる市民に死ねと言っているのか!?」
「もともと、この一般街までがシャン・フレーシュの街なのだ。それをこちらの情けで冒険者ギルドや兵舎を置いていたのだ。それだけでもありがたいと思ってもらいたいものだな。」
「そんなのは詭弁であろう!この第3層街も交易都市の一部のはずだ!見捨てるというのか!?」
「そうではない、もう出来る援助は尽くしていると言っている。これ以上、援助する気はない。そういうことだ。」
こめかみに青筋を浮かべるミリアと余裕の表情を崩さないギレス。話は平行線で進むことがない。深呼吸をしながら気持ちを落ち着け再度、交渉を試みようとするミリア。
「分かった、ではせめて物資の補給と中の一般街の冒険者、各種ギルドへ第3層街の防衛の緊急依頼を出し
てくれないか?」
「緊急依頼?その報酬は誰が支払うのだ?」
「それも支払うつもりがないのか!」
「言ったはずだ、必要な援助は全てした、とな。もちろん、物資の補給も出来ないぞ。」
「く・・・クズが!」
「さっきから上官に対する発言がなっていないなぁ。」
「まだ着任していない!上司とは認められない!」
「ふん。まぁいい。精々、門を守るがいいだろう。」
「・・・。」
気炎を上げながら前線のほうへ踵を返す。交渉は、交渉にすらならずに終わることとなった。補給や保護は受けられないそういうことか。これは不味いな。
「どうするつもりだ?」
「どうするも何も・・・守るしかないだろう!!」
「何故だ?」
「なぜ?そこに守るべき市民がいるからだ。」
「それは一般街もか?」
「可能ならな。だが・・・。」
「そうだな、無理だろうな。また体制を整えてくるだろう。」
「協力をしてくれないか?」
「断る、勝ち目はないだろう?無駄死にだぞ。」
苦虫を噛みつぶしたような顔をしながら、ため息をつく。
「そう、だな。無理強いは出来ないな。」
「市民と戦える者の数はどのくらいだ?」
「兵士が30名だが負傷者が多い、満足に戦える者は半数くらいか。あとは冒険者たちが15名だがランクはそこまで高くない、負傷者は少ないが魔力ももう底を尽きかけている。あとは元兵士や元冒険者がそれぞれ10名ほどだ。これも満身創痍だ。」
戦える者は50名ほどか、残っているほうだろうな。
「ため息が出るほどぼろぼろだな、で市民は?」
「200から250人ってところだ。女子供が多い。男たちは今までの襲撃で、な。」
「市民に対して戦える者が多いな。」
「・・・戦えるといっても自分を守れないものが先に死んでいっただけのことだ。女子供を庇ってな。」
「そうか、それであの守備隊長の言うように門を守るのか?」
憎々しげに呟く。
「他にやりようがあるまい。」
「逃げたらいいんじゃないのか?」
「逃げるだと?市民を置いてか?そんなこと出来るわけがない。」
「市民を連れてならどうだ?」
少し逡巡するように考えたが首を振りながら答える。
「いくらなんでも、この人数は無理だ。」
「そうか?近くの村でも無理なのか?」
考え込むような表情だが、やはり無理のようだ。首を横に振りながら態度で示す。
「負傷者は市民にも多い。それに私も近くの村のことは分からない。派遣されてまだ街にも入れていないんだからな。」
「手詰まりか?」
「そうだな。お手上げだ。笑うしかない。」
「市民がいなければ、どうだ?」
俺を目を細めながら剣呑な雰囲気を出す。
「防衛のために殺すというのなら賛同は出来ん。あの恥知らずな守備隊隊長と同列に堕ちてしまう。」
「高潔なことだが、そうじゃない。敵に発見されないところに隠れてもらうという意味だ。」
「250人もどうやって隠れるっていうんだ。現実味がないぞ。」
まぁ、確かにそうだな。俺の土魔法なら出来ないこともないが、あんまり大っぴらに使いたいとは思わない。こっそりやるしかないか。
「ここに来るときに、街の中に地下室をいくつか見つけた。洞窟のようなものだったが、隠れるだけなら大丈夫だと思う。そこに最低限の守りを置いてあとはここを防衛する。どうだ?」
「それなら・・・案内してくれるか?」




