第3章:交易都市in魔王014
お久しぶりです。
忙しかったですが、また再開いたしますので宜しくお願いします。
第3章:交易都市in魔王014
跳ね橋まで来ると、血の匂いと魔物の匂いでむせ返る。しかし、それ以上に周囲に散乱する死体から放たれる死臭が鼻に付く。一人二人ではない、数えることも諦めるくらいの死者だ。魔物の死体もあるが圧倒的に人族のものが多い。
魔物たちの目的なんか分からないが建物を壊すようなことはほとんどなく道に沿って進軍してきたようだ。お陰でメインストリートには並ぶような形でいる。これは好都合だ、ハマれば混乱させられるだろう。
顔見知りの兵士達というとエルフの男が倒れている。ここからだと致命傷かどうかは判断が出来ないが意識を失っているようで、やはり時間は残されていないようだ。 他のメンバー、ミリア、ダイタツ、アザレアも魔力切れ寸前のようで緊張の糸が切れれば動けなくなりそうだった。
市民は門に殺到しているが格子柵に阻まれ中からも阻まれ行き場を失くしている。まずは目の前の敵をどうにかしないとお話にならないな。
「バリアル!シェーラ!」
「はっ!」
「分かってるわよ。」
「影霧」
2人はバリケードの脇の建物の上にあがる。その様子に気付いた者はその場にいる者には誰一人いなかった。一緒にいたリリィでさえも。そのまま、風の魔法を詠唱しいつでも放てるように待機する。準備が整ったことを目で合図しこちらも準備に入る。
「理を知り、理の変革を!我を知り我を感じる者は我が前にしかいない!認識志向操作。幻の獣よ、混相の者よ!彼の者の姿をここに!幽玄の発現。」
魔法が成立し発現すると同時に魔物たちから怯えとも威嚇ともとれない声が上がる。俺達からはただ魔物たちが騒ぎ出したように見えたことだろう。今、俺の前には5m級の大黒狼が殺気を振りまきながら魔物たちに今にも飛び掛かろうとしているように見えているんだからな。
「よし、行くか。」
影箱から刃の長いハルバートのような槍とも斧とも言えない黒い刃の獲物を取り出す。愛用の無名だ。ミリアの横に並びそっと声をかける。
「今のうちに、仲間の手当てをしてやれ。」
「!!、きゃっ・・誰だ!?」
ミリア達からも俺達の気配は感知できないんだった。まぁいいか。案外、悲鳴が可愛らしかったし。独り和んだところで無名を肩にかけながらバリケードの前に躍り出る。もちろん、俺の姿は感知されていない。
シェーラに合図を出し風魔法の風刃を放ってもらう。Lv2だから剣で切り裂いたくらいの威力は出せる。それを何度も繰り返して放つように指示は出している。魔力が続く限り詠唱するよう指示している。
突然、切り裂かれたゴブリンやオークは驚きながら逃げ惑う。その隙を付きながら無名を振り回しながら敵の間を駆け抜ける。俺が駆け抜けるように魔物たちには幻の大黒狼が爪や牙で攻撃をしながら駆けまわっているように見えている。
「な、何が起こっている!?」
「魔物が千切れ飛んでいるぞ!!」
「誰かの魔法か!?今のうちに体制を整えろ!」
そのまま、魔物を食い散らかしなが進み壁を蹴っては反対の建物の壁にぶち当たるということを繰り返しメインストリートのバリケードから50mくらいは魔物の死体で溢れかえることとなるが、そこまでやって後方から雄たけびが聞こえる。それを聞いた魔物たちは我先にと撤退していくことになる。
やはり魔族はいなくても、司令官相当の者がいると考えていいだろう。なら、あのデカいゴブリンみたいなやつか。鑑定までは出来なかったが、情報がほしいところだな。
「ロッカクー!もういいよね?」
「あぁ、大丈夫だろう。しばらく時間が稼げるだろ。」
「ロッカク殿が飛び出してから攻撃はなかったので被害が広がることはありませんでしたが・・・次攻められると、守り切れないと思われます。」
俺達4人とも無事だが、それ以外の奴らはもう限界みたいだ。まずは手当てからか。重傷者もちらほらいるみたいだしな。
「カイト!しっかりしろ!」
「目を開けてください!」
「意識を失っているが・・・命には関わないとは思う。予断は許さないが。」
「大丈夫そうか?きっとしばらくしたらまた攻めてくるぞ?」
「お前は・・・誰だ?・・・シェーラがいるということは、まさかロッカク?」
「そうだぞ、しばらくぶりだな。」
「なんというか、随分見た目が変わったな。」
不思議そうにこちらを見るミリア・ダイタツ・アザレア、そういえば見た目を誤魔化していたんだった。
「あぁ、ちょっとこんな感じになってるけど、ロッカクだから。」
「そうか、その姿なら大丈夫だそうだな。」
「よければ、俺が回復しようか?」
「出来るのですか?」
驚いたように声を上げるアザレア。問題ないと告げると可能な限りで構わないからということで頼まれた。
しばらくして、カイトが目を覚ますと他の3人はほっとしたように胸を撫でおろす。カイトが意識を失なっている間にミリア隊の面子の治療は終えている。一応に3人とも不思議な顔をしていた。
「カイト、目が覚めたか?」
「隊長・・・ってことは生きてるのか。」
「ええ、ロッカクさんが治療してくれたんです。」
「ロッカク?この前の?」
「そうです、たまたま居合わせてそうで。」
「そうか、助かった。ありがとうな。」
「これは・・・珍しい。」
「なんだよ、ダイタツ。珍しいって。」
「皮肉屋のお前が素直に礼を言うのが珍しいんだろう。私も少し驚いた。」
「隊長まで・・・。俺だって礼くらい言いますよ。」
顔を見合わせる3人の様子を見るとそんなことは本当に少ないんだろうなと思える。顔がいいのに口が悪い、残念イケメンか。イケメンで完璧超人だと癪に障るが欠点があるなら人間味があっていいと思うんだがな。まぁ、今素直なのは暗黒魔法で回復した副産物だろう。俺の暗黒魔法で回復すると負の感情を糧に治療を行うから、精神の静穏化が副次的な効果として現れるからな。なら光魔法の回復はどうなんだろうなって気もするが、そこは使えないから検証のしようがないな。水魔法の回復ならそんなことも起こらないだろうし。
俺が思考の旅から帰ってくる頃にはミリア隊隊員は他の兵士や冒険者、市民の手当てに散っていた、しかし門外の物資は少ない。
「なぁ、せっかく時間を作ったんだから門内に避難したらいいんじゃないのか?」
「それはそうなんだが・・・。」




