第3章:交易都市in魔王011
ご無沙汰しています。なかなか投稿できていませんが、もうすぐ街に着きますのでもう少しご信望を。
なお、ブックマークが増えると遅筆に加速が加わる気がしますのでよろしくお願いします。
第3章:交易都市in魔王011
不意に頭上から声を掛けられる。慌てて見上げると黒い羽根に黒い鎧、顔はフルフェイスの兜で覆われていて歳も性別もわからないが若そうだ。特質しているのは兜から突き出た1本の角だ。明らかに兜の素材とは違う、全身から放たれている気配も人ならざるものだった。
「お前は・・・魔族?」
「ん?ほほう、ご明察。よくわかったものだな。」
「ふん、魔角を見ればわかりそうなもんだろ。」(バリアル、二人を守ってやってくれ。)
「しかし・・・。」
「頼む。」
俺達のやり取りは恐らく筒抜けだったろうが、この魔族はさして大したことでもないように気にした様子もない。
「さて、それではお前たちはここで何をしていた?」
「旅の途中だ。魔物と戦闘のあとにさっきのアレに巻き込まれただけだ。」
「ふむ、なら偶然・・・だということか?」
「そうだな。」
「まぁ、偶然なら構わないか。」
何か一人で納得してくれている。このまま、帰ってくれると助かるんだがな。
鑑定発動
名前;ラトグリフ
種族;魔族
年齢;80歳
職業;魔軍士官候補生
Lv;80
HP;500
MP;700
スキル;火魔法Lv4 風魔法Lv4 索敵Lv4 気配遮断Lv4 剣術Lv4 魔力向上Lv3 危機察知Lv3 鑑定Lv5 看破Lv3 魔力循環Lv2 飛行Lv3 隠遁Lv3
武技;過大暗殺 魔力開放
おいおいおいおい、マジかよ。士官候補生ってこんなに強いのか。仮にも魔王の俺だってこのレベルの奴が数人いたら殺されるぞ。今回の首謀者は魔族か、魔王が勇者に倒されてまだ日も浅いのに勤勉なことだ。
どう対処したらいいのか、考えあぐねていると魔族のほうから声をかけてきた。何かを訝しんでいる表情だが。
「聞きたいことがあるんだが・・・。」
身構えながら問答に応じる素振りを見せる。
「何だ?」
「魔王様・・・でしょうか?」
「何でそう思うんだ?この仮面か?怪しいからって魔王か、なんて人に聞く質問じゃないな。だいたい、魔
王はこの間、勇者に打ち取られたんじゃなかったか?魔王っていうのはそんなに早く復活するものなのか?」
一気に捲し立てる。ちょっと動揺していたことは隠しようがない。ついついしゃべり過ぎているのは自覚があるが止められなかった。
「いえ、鑑定での結果が・・・。」
「何・・?」
鑑定?そういえば鑑定持ちの魔族だったが俺は偽装していたはずだ。なんで?・・・こいつは鑑定と・・・あっ看破か?
合算のレベルで言えばスキル詐称のレベルを上回る。これでか。仲間は急展開に頭が付いていっていないようだ。
とはいえ、魔王であることがバレるのは不味い。こいつが軍にその情報を持ち帰るのも不味い。ならば対話と交渉、無理なら戦闘だ。
「俺が魔王だとしてどうする気だ?」
「私はあなたがどこの魔王か存じません。できれば所属を教えていただきたい。」
「所属?」
あー・・・ヤバい。事態が飲み込めない。そもそも魔王なんて何人かいるのか?どこの魔王?俺が聞きたいわ。
「・・・あー・・俺はまだ魔王になりたてでな。そういったことには疎いんだ。」
「つまり・・・魔王となって日が浅い、どこにも所属していない、と?」
「そう・・・なるか。」
その言葉を聞くや、ニヤリと笑い手を掲げる。すぐに魔力が満ちていく。殺意と嘲りを持ってその場を支配していた。その様を見てシェーラもリリィも立ち尽くすしかなかった。バリアルすら盾を構えるのが精いっぱいだ。
「ならば、成すことは一つだ。私の為に糧となっていただこう。名もなき魔王よ。理を歪め我が魔力を喰らい我が前の敵よ、消えよ。豪炎滅球」
集中した魔力が3mクラスの炎の塊となる、その熱気に汗が吹き出しジリジリと皮膚を焼く。すぐに着弾するだろう。なんとかしなければ。
振り返り先ほど作った穴の中に3人を蹴り落とす。これでもおそらく焼け死んでしまう。いや、焼け残ればいいほうかもしれない。そうならないように、さらに土魔法で防壁を作る。3層の高い防壁だが気休めでしかないだろう。
向き直り水魔法を発動させ同等の大きさの水球を作る。その数3つ。短時間ではこれが限界だった。次々に水球を火球にぶつけ勢いを殺そうとするが無駄なあがきとなった。ぶつかるたびに大量の水蒸気を発し周りを覆い尽くす。そしてさらなる轟音があたりに響き渡る。
直径20m巨大なクレーターを残し周りにはきらきらとした光るガラス状のものが落ちている。高熱のために岩石に含まれている水晶のみが露出したためだ。
「おっと、魔王相手だと思い全力での攻撃だったが・・・姿も残さずに消失するとは。所詮、魔王と言ってもピンキリだな。魔角は手に入らなかったが、まぁいい。」
クレーターを一瞥してそうつぶやくと、翼をはためかせて飛び去って行く。
ゴトッ
クレーターの一角に長方形の穴が開く。その中に動く影がある。
「ぶはぁぁっ!はぁっはぁっ。」
穴の中には水が溜っており這い出てきた4人は俺も含めて全身はびしょ濡れだ。どうにか穴の外に抜け出し3人を見るが水は多少飲んだようだが、息はあるようだ。
あの瞬間、水蒸気爆発に紛れて穴に飛び込みより深く穴を成形していた。そこに冷水を満たすことで高熱と衝撃から皆を守ろうと考えた。威力によっては穴を発見される可能性があるために暗黒魔法で出来る最高の幻術を作り出した。今の俺なら全力で幻影を生み出せば、たいていの者に見破られることはない。
それでも賭けだと言われればそれまでだ。他に方法を思いつかなかったが賭けには勝ったらしい。
「う・・・うぅ・・ロッカク・・?」
「気がついたか?良かった・・・。」
「そんな顔・・してたんだね。」
「え?」
俺に顔の半分を覆っていた髪の色を誤魔化す仮面はいつの間にかなくなっていた。おそらく壊れてしまったんだろう。これは誤魔化しようがない。顔を手で隠しながら、どうしようか逡巡する。と言っても手段なんてない。
そんな俺の手を下ろすように握ってくるシェーラ。特に何を言うでもなくこちらを見つめている。
「ん、そっちのほうがいいね。」
「怖くない・・か?」
「黒髪は魔族の証・・・そんなこと聞いたことあっても見たことないし。唯一見たのがロッカクだから・・・。」
だから、怖くない。そんな肯定の言葉を聞いて、少し気持ちが楽になるのを感じる。
「ん、神様はまた守ってくれたから、怖くない。」
いつの間にか気が付いていたリリィも俺達を見ながら声をかけてくれる。俺は神さまじゃないけどな。
「驚いたのは否定しません。しかし、それ以上に救ってもらっています。魔族だろうが魔王だろうが主であることは変わりますまい。それで良いではないですか。」
まさか、全員から受け入れられるとは思わなかった。特にバリアルは年長者だったから何かしら思うところはあると思っていたが。
「何も思うところがないとはいいません。しかし、それはロッカク殿に対してではない。とりあえずは生き残ったことを喜びたいですな。」
「そうだな。こんなことになるとは思わなかったが・・・みんな生きてる。」
そう言ってパーティメンバーで笑いあえた。そう、素顔でだ。
とりあえず、生きている。あんな災害みたいな魔法を受けて皆五体満足に動くことが出来ている。一息ついたところで装備以外の荷物は全て焼失していた。かろうじて俺の影収納の中の物は無事だが、食料はそれほど多くない。
「まずは、これからどうするかだが・・・やはり交易都市シャン・フレーシュに行く必要はあると思うん
だ。」
「それは・・・理由は伺っても?」
「もちろん、一番はシェーラの治療だ。あそこの医療なら可能性があるかもしれない。あとは魔物の行方だ。おそらくあの魔物たちも目的地は同じだろう。」
「それが分かってて行くのは勇気とは言いませんぞ。」
「俺だってあんな魔族を相手にしようとは思ってないさ。ただ、医者に診せることは譲れないだけだ。もし医者が殺されたら可能性が一つ潰れるかもしれない。それは避けたい。」
「では、戦うつもりはない。そういうことですね。」
「極力な。必要に迫られればそんなこと言ってられないが。」
「分かりました。私は反対はしますまい。」
「私は・・・私の為に皆を危険な目に合わせるのは・・・嫌かも。」
「シェーラ。ロッカク殿が我らを購入した目的はシャン・フレーシュに行くためだ。それを疎かには出来ない。これはロッカク殿の決定だと思うぞ。」
身の危険を肌で感じ、そんな目に自分の都合で皆を合わせるのは気が引ける。そんなシェーラに諭すようにバリアルは声をかける。
「目的を見誤るつもりはない。危なくなれば即離脱。それじゃダメか?」
「ううぅ・・分かった。でも皆が危険になるのは嫌だからね。」
リリィを抱きしめながらシェーラは声を上げる。いつの間にそんなに仲良くなったんだろう。妹のようにリリィを可愛がっている。その娘が危険な目に合うのは耐えられないんだろう。
「私は、異存ない。それまでに強くなりたい。」
「はっはっ、やる気があるのはいいことですな。どれ、それまでは儂が鍛えるとしよう。」
こうして俺達パーティの方針は決まった。目指すは交易都市シャン・フレーシュだ。
道なき山の中を俺達は進んでいる。声を上げる者はいない。むしろ息を殺すように音を立てないように気配を殺して歩く、歩く、歩く。
遠くで雄たけびのようなものが聞こえる。断末魔ではない、雄たけびだ。俺はハンドサインで止まれを指示し後続をストップさせる。
ドンドンドンドンッ
何か重量の重い者が走っているような音が響いている。それは自分たちのほうへ近づく。血の匂いも濃くなってきている、遭遇は近い。
グワァァア
草むらをかき分けるように2mにも達しようかという大型の熊が現れる。灰炎熊、通称グレーベアと呼ばれる魔獣が飛び掛かってくる。来るのは分かっているので慌てることはない。眉間に岩の弾丸を半円錐状に加工した弾丸を叩き込む。高速回転しながら下顎に突き刺さったそれは頭蓋骨で止まることなく貫通する。脳幹と小脳を破壊したであろう一撃に熊は勢いを落とすことなく倒れ込んでくる。横に躱し息の根が止まったことを確認する。
後続にいたリリィと灰炎熊を追い込んできたバリアルとシェーラを迎える。
「だいぶん、慣れてきたな。これでしばらく食料には困らないだろう。」
「シェーラも魔法の使い方が様になってきたようです。体術も山の中ということを考えてもかなり上達したと言ってもいいでしょうね。」
絶賛されてる。バリアルに褒められ胸を張ってみせる。褒めてほしいんだろう、撫でてやろう。
「ちょっと!どこに手をやろうとしてるのよ!」
「え?誉めてやろうと思って・・・撫でようと。」
「普通撫でるのは頭でしょ!?なんで胸のほうに手が伸びるのよ!」
「そこに胸があるから。」
「あっても撫でるな!」
「ちっ!」
「舌打ちすなー!」
相変らずのいつものやり取りだ。俺達が山中に入ったのは近道であることと、食料問題のせいだ。街道を歩いてシャン・フレーシュまでは少なくとも1週間はかかる。それは魔物の多い地域を避けていけばだ。山を突っ切るのはこの限りではない。大幅な時間削減になる。
この工程ならおよそ4日で付くことが可能だ。その間は自給自足の為、定期的に・・・と言っても1日に一回程度狩りをすることにしている。食料の備蓄もあまりない。増やしておくにこしたことはない。
もちろん、遭遇する魔物はもれなく狩っている。実践に勝る訓練なし、ということでシェーラとリリィを中心に戦うことで経験を積んでもらっている。
さしあたっては、この素顔と髪が丸見えの今の状態をどうしたものか。




