第3章:交易都市in魔王05
第3章:交易都市in魔王05
奴隷商館の裏庭、そこにある井戸の前でバリアルの治療を行っている。シェーラは裸のリリィに上着をかけて付いてもらっている。まだ目を覚ましていないからだ。
「お主は何者なのだ?」
「二人の主でシェーラとパーティを組んでる。盗賊ギルドの冒険者だよ。」
「いや、そういうことではなくて。」
「ほら、治すから黙っててくれ。」
「いや、そもそもない物を治すことなんて・・・こんな忌々しい傷など。」
忌々しいっていうくらいだから、嫌な思い出でもあるんだろうな。まぁそのほうが都合がいい。そういう負の感情があればあるほど暗黒魔法での回復には役に立つ。
ちなみに、リリィの時は何も唱えてなかったが、あんまり力を見せるのは不味い気がしたので今回は詠唱っぽいことをしておいた。
「この者に巣食う闇よ、混沌をもって理を曲げよ、亡くした物を取り戻す力となれ、治癒」
俺の手から溢れる蠢くような黒い闇がバリアルの腕と足に絡みつき、そのまま腕の形、足の形になったと思ったらそのまま再生していった。
これは自分にも同じことが出来たから多分できるだろうと思っていたけど欠損くらいなら治せる治癒能力か。その世界で生きていくためにはかなり重宝しそうな魔法だな。もっと暗黒魔法のレベルも上げていく必要があるな。
「お、おぉ・・・おおぉ・・・腕が・・・足が・・・う・・・うぅ・・。」
「お、おいおい。」
突然、泣き出したバリアルに戸惑いながら声をかけるが、聞こえていないのか返事は帰ってこない。まぁ無理もないか。
「シェーラ、リリィはどうだ?」
「まだ寝てる。っていうか、結局可愛い女の子買うんだから・・・。」
「やっぱ反対か?」
「ううん、むしろあんな状態の子を買ってどうするんだろうって思ってたけど、ちゃんと治してくれて安心した。あんな状態でいるなんて耐えられない。辛かったね。」
最後の言葉はリリィの頭を撫でながら声をかける。
「でも、今度はロリコン疑惑が出てきた。」
「な、なんでだよ!」
「はいはい、もういいですよーだ。」
「・・・シェーラ。」
「ようやく敬語が抜けてきたな。」
「あっ・・・いいじゃない、今日は常識外れのことが多かったんだから。考えるのも限界なの!」
「そっちのほうがいい。」
「主よ!」
「うおっ!ど、どうした?」
片膝をついたバリアルがいた。改まってどうしたんだ?
「はっ!あのようなところにいた儂を連れ出し、尚且つ絶望的なケガまで治していただき、ただただ感謝しかありません。人生を諦め、あの房で死ぬことも覚悟しておりました。それがこうして日の光の下に、しかも五体満足で出られるとは思っていませんでした。一度は絶望を味わった身です。今後は主の為に今は捧げるべき剣はありませんが全てをかけて尽くすつもりであります。」
「・・・あ、あぁよろしく頼む。」
「はっ!」
えっと、確か職業に騎士ってあったな、騎士ってこんなに熱いの?実際に接して見るとかなりの・・・熱気でちょっと引いた。まぁ今は欠損が治って興奮しているから収まればマシになる・・・か?
そんなやり取りをしているときにリリィが目を覚ますことになる。
「う・・・ん・・・。」
「気が付いたか?」
「あ・・・かみ・・・さ・ま?」
「あん?」
ゆっくりと体を起こして自分の顔を、身体を触り、見渡して自分を抱きしめながらブルブルと震えだす。
「おっおい?寒いのか?」
首をブンブンと降りながら否定する。
「・・・く・・ない・・・・。」
「??」
「痛く・・・ない・・・顔も目も頭も腕も背中も全部・・・痛くない。痛くないよぅ・・・。」
「・・・そうか、良かったな。」
そう言って大きな耳がある頭を撫でる。
「あの!か、かみさまですか!?」
「神?違う違う、そんなもんじゃない。」
「でも、私ずっと願ってました。・・・・・ここから・・・助けてくださいって。・・・・目も見えなくなってもうダメだって思ったときに救って・・・くれました。」
「それだって、そこまで自殺もせずに生きてきたリリィの強さだろ。」
「でも、でも!」
「この話は終わりだ。そろそろ前を隠してくれ。」
興奮してシェーラの服を落として捲し立てていたのに気づいて顔を真っ赤にさせている。
「ひゃっ!」
「とりあえず服が欲しいところですね。」
「服をお持ちし・・・ま・・したが。」
すべてを終えたタイミングでメイドが戻ってきた、服を受け取り出ていこうとするとメイドが見送りをしたいので少し待ってほしいと声をかけてきた。
見送りをするなんて、奴隷商にそんなサービスあるのか?ちょっといい服屋とかならそういうこともするだろうけど。なんか嫌な予感がする。
「・・・・・・・これはこれは、皆さん見違えましたな。あのケガを治せるとは・・・どうやったか伺って
もよろしいでしょうか?」
「なに、回復の霊薬を持っていただけですよ。」
「回復の霊薬・・・霊薬!?」
「たまたまですよ、たまたま。それじゃ、俺たちはこれで、良い買い物をさせてもらいました。」
「あ、ありがとうございました。」
俺達はその足で旅支度を整えることになる。携帯用食料と必需品、あとはバリアルとリリィの装備だ。バリアルは騎士だったのと大剣術を持っているので片手用の大剣と小ぶりのラウンドシールドと皮の鎧とブーツなどの足回りを揃えた。
リリィに関しては別に職業があるわけではなかったが皮の鎧・ブーツ・手甲とダガーを購入した。ダガーを装備したが使いこなせるとは思ってない、護身用だ。それといくつかの服を購入した。とりあえず下着も買ったよ?もちろん。ただし、シェーラにジト目で抗議されたので任せることにした、泣く泣くだけどね。
あとはシェーラの装備のサイズ直しだ。紐を締め直すだけで済むそうなので翌日に取りに来ることを告げる。それとシェーラもダガーを新調した、前回の戦いで紛失していたからだ。
必要なものを揃え、宿に戻るのだった。
ガンガンガンガン!!
カッツは自分の利益になるはずのない奴隷たちが、例えるならタダ同然の値段で売った路傍の石が金剛石に変化して手から離れていくような感覚を味わっていた。
「おいおいおいおいぃぃぃ!いったいどういうことなんだよ!?あぁ?なんであの奴隷どもは元気に歩いて出て行ってんだぁ?あのクズ奴隷どもは死にかけの死に体だったんだ!それが霊薬だと?そんなもん使うほどの奴隷だったのかよ?」
そこでリリィを思い浮かべて、下卑た笑みを浮かべる。
「そうだなぁ・・・あれだけの極上の奴隷だ、確かに高く売れそうなもんだったなぁ・・・それに仮面野郎、あいつはまだ霊薬も持っているかもしれねーなぁ。」
パンパン
手を打ち、人を呼ぶカッツ。そこには奴隷商のときの顔とは別の顔を覗かせていた。
「おい、さっきの4人組見ていたか?」
「はっ!確認しております。」
「なら、あいつらがいつこの街を離れるのかを探れ。あと街の外に捕獲隊を集めておけ。」
「お任せください。」
「霊薬かぁ、高く売れそうだ。あの獣人も高値が付くこと間違いないな。へへ。」
下衆な笑い声が商館の中の一室に響いていた。




