第2章;チアクレアの糸06
第2章;チアクレアの糸06
天井のシミを数えるのにも飽きてきたころ、ようやく夜が明けてきたようだ。土にそのまま藁を置いたような寝床は体が痛くなるしチクチクして寝ずらいことこの上ない。なんだかんだあり今、村の兵舎に投獄されている。
シェーラを連れて強行突破で切り抜けたかったが、シェーラは意識を回復することなく昏睡状態だったことに気を取られている間に囲まれてしまい機を逃してしまった。意識を取り戻すまでは下手なことはされないだろうから仕方なく投獄されることにした。
今思えば、ギルドの依頼でここに来ているのは調べればすぐに分かることだし、逃げるよりは得策だったはずだ。現場だけ見れば経緯はどうあれ俺が司祭を惨殺したお尋ね者には変わりない。
「はぁ、これからどうしたもんか。」
答えが出ないまま、また天井のシミを数えにもどることになった。
村長は部屋で手当てを受けていた。肩を貫かれていて重症ではあるがポーションを惜しみなく使うことで一命を取り留めていた。かろうじて会話は可能なまでになっていた。
「で?村長さん。地下の祭壇はなんだったんですか?」
「地下の祭壇?何のことです?私のこのケガは一体なにがあったというんですか?」
「質問しているのはこっちです。まずは質問に答えなさい。」
「祭壇なんて知りません。地下は村の食料貯蔵庫になってるはずです。」
「あと司祭服の男が死んでいましたが、彼は村の司祭だと思いますが名前は何と言いますか?」
「いえ、うちのような小さな村には簡易の教会はありますが、司祭様はおりません。巡回の司祭様が来られるくらいです。その方も、先月来られていますから今は別の村にいると思います。」
夜警に出ているダイタツとアザリアが村人に警備を交代して始まった取り調べだが要領を得ないものだった。地下の祭壇は知らない、司祭は村にはいない、揚げ句に自分のケガのこともわからないと言う有り様だ。村の他の者に聞き取りを行っても新しいことは出てこなかった。いや、むしろそれ自体が妖しくもある。まるで村が化かされているような印象さえある。
「ミリア隊長、魔法による自白も新しいことは出てきていません。変わったことは最近持ち込まれた食べ物が村人の間で流行っているだとか、今年はロータスの被害が少ないとか村長のところのメイドが村の若者に人気があるだとかそんなくらいです。」
「なんだよ、ほとんど世間話じゃねーか。アザレアの魔法も使えねーな。」
「カイトさん、その減らず口焼却しちゃいますよ?」
「はいはい、すいませんね。って言ってもこれじゃ埒があきませんよ、すぐに容疑者の尋問に入ったほうが良くないですか?」
取り調べを行う前にある程度情報を集めておきたかったがこうも情報が集まらないんじゃ仕方がないか。隊のメンバーもお手上げといった様子だ。
「よし、村の牢屋に向かう。ダイタツは一緒にいた女の見張りだ。妙な動きをしたらすぐに捕らえろ。アザレアは女のいる部屋に拘束の結界を張ったらこちらに合流してくれ。」
「わかりました。行きましょう、ダイタツさん。」
「うむ。」
「ちぇっ、いーなぁ。あんなイイ女の見張りだなんて。」
「ほほう、お前は喧嘩を売っているということだな?」
「!!いやだなぁ、隊長。俺は嬉しくて泣きそうですよ。」
「はぁ、全くカイトさんは。」
持ち場を確認してすっかり暗くなり人が出歩いていない村の中を私達は牢へと向かった。心なしか空気が湿っている気がした。
牢屋で天井の染みをひたすら数えていると、どうにも顔に見えてくる。昔のテレビ番組で染みが3つもあれば顔だと言い出す霊能力者がいたが暗い牢屋で一人だとそう見えなくもない。さっきのやつらは兵士だと言っていたからいかにもな感じで台座に拘束されたシェーラに酷い扱いはしないだろう。
俺のほうはそんな保証ないだろうけど。牢屋の中の空気が少しづつ冷えてくるのが分かる。日が暮れてきているんだろう。辺りに人の気配はない、俺の夕食は忘れられているんだろうか。
そんなことを考えていると入り口に人の気配があった。複数人でこちらに来るのがわかる。
「さて、話を聞きたいんだが大人しく聞かせてくれるか?」
皮鎧に腰には長剣、兜姿の女兵士とその横に控えるように同様の格好に弓を背負った長身の兵士とローブ姿に魔法の杖らしき物を持った小柄な女の3人が声をかけてくる。敵対するような物言いでないのがせめてもの救いってことだろうか。この面子は俺をここに入れた連中だ。それにしても一人足りないな。
「もう一人はどうしてる?」
「台座にいた女の見張りだよ。あの女は知り合いか?」
「パーティメンバーだ。」
「それで、どうしてあんなところにいた?あの場所では何が行われていた?お前たちの目的は何だ?その仮面は一体何なんだ?」
「ちょ、待て待て!一気に聞き過ぎだし俺の飯はないのかよ!?」
「飯だと?てめぇ自分の立場がわかってんのか?容疑者なんだよ!大人しく質問に答えてろよ!」
長身の兵士ががなり立てる。そうは言っても腹減ってんだぞ、コノヤロー。シェーラが無事なのが分かったら余計に腹も減るんだ。
「まぁまぁ、カイトさんも落ち着いてください。夕食は話を聞き終わったらご用意しますので先に話を聞かせてください。」
ローブの女に宥められ夕飯の約束も取り付けたので、とりあえずは了承し質問に応じる。カイトと呼ばれた男はそっぽを向いているが、反論はないようだ。
「どうしてあんな所にいたか、だったな。どこから話すか。」
一通りロッカクと名乗る男の話を聞いた後に村で聞いたこととかけ離れていることに疑問が沸き起こる。この男は盗賊ギルドのクエスト、ロータス討伐でこのマイバイの村に来ていた。そして討伐終了後に仲間の女が村の地下に攫われたことに気付き救出に向かった。そこで祭壇で魔王に捧げる供物とされようとしている仲間を発見し助けに入った。そこで主犯と思われる司祭と村長、共犯だろう村人たちと交戦、その最中に司祭は死亡。村長は重傷を負う。
しかし、目を覚ました村長は一切を覚えていない。むしろ知らないと言ってもいいだろう。
村の人間もそのようなことは知らないと答えている。だが実際には祭壇はあり、司祭と思われる男は死んでいる。
だが、この男が嘘を付いているとも確証が持てない。確かに仮面を付けた怪しさたっぷりの男だが、実際に村からは村長名義でロータスの討伐依頼が出ている。狩られたばかりのロータスも村の倉庫にあった。だが村ではロータスの被害などないと村人は証言している。
証言に違いがありどちらかが嘘を付いているか・・・どちらも嘘を付いていないか。この冒険者の行動も理解が出来るものだ、だが村長が嘘を言っているとも思えない。魔法を使った取り調べでもそんな反応はなかった。
「あの・・・皆さま、夕食の準備が整いましたのでキリがいいところでお戻りいただけますか?」
思考の迷路に迷い込んでいたところに村長のメイドが声をかけてくる。とりあえず夕飯にするか。
「一旦切り上げるぞ。」
「俺の飯忘れるなよ!」
村長宅の別室でテーブルに用意された夕食を食べながら今回のことを話し合う。幸い容疑者は牢屋だし重要参考人は結界の中だ。安心して夕食を楽しむことが出来るだろう。話し合いを行うのでメイドにも席を外してもらっている。
「隊長どう思います?俺はなんか腑に落ちないんですけど。」
「私もだ。だが村人全員で嘘を付いたんなら魔法で反応は出るだろうし、どこかにボロがでるはずだ。それが見えない。」
「ならやっぱり、あの冒険者の人が怪しいって考えてるんですかぁ?」
「いや、そっちのほうが事が簡単だろうって話だ。村人が知らないところで地下に祭壇を作り、司祭を殺し女を供物にして理由は不明だが村長の殺害を行おうとした。」
「ですが、村長は何も覚えていなかった。」
「あぁ、覚えていないような状況ではないだろう。壁に槍で貼り付けになってたんだからな。」
「だけど、そんなことありますかね?まるで全員が幻惑魔法にでもかかったようなことが。」
「嫌ですよ、カイトさん。いくら何でも村一つ丸々魔法をかけるなんてそんな大掛かりなこと出来ないですよ。魔法師団が必要になってくるレベルです。」
「わーってるよ、だから不思議なんじゃないか。」
皆がスープを味わっているときにミリアが声を上げる。
「うるさいぞ!もう夕食は終わりだ!今日は重要参考人の女の部屋で交代で見張りを行う。まだ供物として命を狙われるかもしれんからな。アザレア、部屋に移動後不可侵の結界を張ってくれ。解散だ!!いけ!」
「ちょっ、まだ食べかけ・・・。」
「いけ!隊長命令だ!」
「横暴だぁ~~~!!」
首根っこを掴まれたカイトがダイタツに引きずられて部屋から出て行った。残ったアザレアとミリアもメイドに夕食の礼を言って部屋に合流する。そのまま、目を覚まさないシェーラの傍で夜を明かすのだった。
「俺の飯はまだか・・・。」
ご無沙汰しています。
ポケモンも一段落したので復帰しました。
というのは冗談ですけど、色々一段落したのでまた、宜しくお願いします。




