第2章;チアクレアの糸05
ずぐっ ごぼっごぼっ
台座から刃物が突き出ている。両足の付け根、両手の付け根に飛び出す刃。そこから流れる血液が台座に開いた穴へと吸い込まれていく。大血管を貫き大量に出血している、そのままだときっとすぐに血が足りなくなって死んでしまう。
「シェーラ!あ・・・あぁ・・血が・・止めないと・・・。」
「グフ・・ウフフフ・・・これで魔王様に供物がお届けできる。」
反射的に倒れている司祭の首を踏み抜く。そのまま司祭は声を上げなくなる。その間も血は流れ続ける。どうすればどうすれば・・・。
「シェーラ、シェーラ!」
虚ろなシェーラの瞳と目が合う。死ぬ、死んでしまう。どうすれば助けられる?俺はどうして助かった?魔法、魔法を使わないと、俺が俺を助けた魔法をシェーラに。
さっきとは違う痙攣ををしているシェーラに手を翳しながら、魔力を行使する。不足している部分を補完するように魔力を巡らせる、自分の体と違い他人の体は勝手が違うのか自分の時より多くの魔力を使い無理やり傷を塞ぎ、血を造血していく。みるみる体が再構成されていく。
どっぷりと倦怠感を感じながらようやく治癒した体を眺める。生命の危機は脱したようだ。口の中の吐物も掻き出して窒息することもないだろう。
改めて周りを見る、倒れて呻いている村人たち。一応手加減はしておいたから死んではいないはずだ、たぶん。村長は張り付けになっているが、死んではいないはず、たぶん。司祭は・・・首を踏み抜いたから生きているのかは分からん、興味もない。生きていたら何をしたか話してもらうか。
そんなことを思っていると、上のほうからバタバタと大勢の足音が近づいてきているのがわかった。
「全員、大人しくしろ!!抵抗しても・・・あれ?」
いの一番に入ってきた兵士はすでに制圧された現場を見て言葉を失っていた。
●シェーラサイド
「う・・んん・・・。」
冷たい石の台座の上で目が覚めた。なんでこんなところにいるんだろ?あーでも、酒で火照った身体に石の冷たさが気持ちいいなぁ。今日はこのままここでねてもいいなぁ。
ジャラ
寝返りをしようとして、体を捻ろうとしたが鎖で拘束されて出来ない。なんだこれ?ロッカクの趣味?いやいや、そんなわけないか。いやまて知らないけど、趣味の可能性がないとも言い切れない。なら暫くしたら来るのかな?ってここどこ?さっきまでいた家の中じゃないし・・・。
そこでようやく頭がはっきりしてきて、周囲を見渡す。洞窟のような広間に台座、その上にいる自分。横の燭台には明々と火が灯り、いわゆる一つの生贄的な感じであることはすぐに分かった。
でも、どうして?考えるまでもないか閉鎖的な村で生贄を使うような儀式をしようっんなら村人使うより冒険者使ったほうが手っ取り早いし足が付かない。これはロータスの討伐自体が目くらましって考えたほうがいいか。
こんなことなら討伐が終わったからって「差し入れの酒」なんて貰うんじゃなかった。油断し過ぎた。チッと舌打ちしながら、どうにか抜けられないかと体を動かす。
「おや、起きましたか。」
「あんた・・誰だい?」
「私はこの村で司祭をやらせていただいている者です。名前はいいでしょう。言葉を交わすのももうないでしょうから。」
「ふん、これでも仲間がいるからね。そうそう簡単にはいかないよ。」
「彼なら今頃、村長宅で接待でもされてるんじゃないですかね。時間はたっぷりありますから。」
そう言いながら、拘束されたシェーラの足に指を這わせる。その気持ちの悪さに身悶えするが、それは司祭の劣情を刺激する以外の何ものでもなかった。
「ふふ、これで処女だとは・・・いやはや勿体ない。いや、供物としては上出来か。」
「しょ、処女ちゃうわ!あと気持ち悪いから触んな!」
「元気がいいことで。儀式中はうるさいと敵わないので声が出せないようにさせていただきますね。」
「何を!」
司祭が宝珠を掲げ鈍い光を放つとシェーラは自分に起こった異常にすぐに気が付いた。声が出せなくなっている、そのうえ体もうまく動かない。
「※※※!※※※※※!!」
「なんですか?分かるように話してください。えぇ?なんですかぁ?」
身動きの取れないその豊かな胸を揉みし抱きながら司祭はシェーラを見下して話しかける。
くそっ!くそっ!触るな!触るな!触るな!私に触るな!やめろ!やめろ!やめろ!!
睨みつけるしかできることはないが、その瞳には涙が浮かんでくる。気の強そうなシェーラのその姿が司祭の劣情を加速させる。そのまま胸から手を放し膝を撫でゆっくりと上に向かい上っていく。じわじわと焦らすように、その度に逃れようと身をくねらす。それが逆効果であることには気が付いていない。
やめろ!やめろ!やめろ!やめて!触らないで!いや!
嗜虐心を刺激された司祭の指は太ももの付け根を弄ぶ。司祭はローブで隠れているが下半身は興奮の頂点にいた。
「司祭様、そろそろ皆の衆が来るそうです。」
「そ、そうですか。わかりました。・・・続きは儀式の後だ。楽しみにしておくといいでしょう。」
おぞましさから解放されて司祭から聞かされた言葉に一安心する。どうやら儀式の最中に命を奪われることはないと考えていいだろう。死体に欲情する変態じゃなければ、だが。
それまでに助けがくればいいな。・・・ロッカク。
しばらくして儀式が始まる。声を出せないシェーラは周りを見ることしかできない。身動きが取れず見ることしかできないの気が変になりそうだった。見渡してもロッカクの姿はない。パーティを組んで短いし助けに来る道理はないが信じていた。きっと来る。それは確信と言ってよかった。
だから、儀式を止めに入ってきてくれた時は堪らなく嬉しかった。安心した、見捨てられなかった、自分の危機に駆けつけてくれた。一度ならず二度までも自分を助けに現れるその男を特別視せずにはいられなかった。
そんな歓喜している自分を見下す司祭と目が合う。ニヤついた笑みを浮かべた司祭は何かを振り掛けてきた。
なんだこれ、ヌルヌルした気持ちの悪い液体だ。こんなものかけんじゃないよ!そう思ったのも束の間、それは皮膚からすぐに吸収されると体の中を駆け巡った、いや侵食し始めた
といったほうが正しいかもしれない。私の中の何かが抜け出ていくような感覚に捕らわれる。
すぐに、体が痙攣しているのが分かる。自由が利かず、体が跳ねる。体の拒否反応が強くなり、意識がはっきりしない。ロッカクが近くにいるのは分かる。だけど周囲の状況は全く分からない。
しばらくすると体が下から押されたような気がした。そう痛くはなかったんだ、何故かはわからない。ただ体がどんどん冷たくなっていくのは分かる。背中がびちゃびちゃになっているのも分かる。体は寒くなっているのに背中はとってもあったかかった。何故か、それが良くないことなのは分かる。このままじゃきっと不味い。
横を見るとロッカクがいる。そして目に飛び込んできたのは刃がせり出して千切れかけた腕、流れ出る血。きっと反対の腕も足も同じなんだろう。血に濡れた刃が目の端に映る。これは致命傷と言わなければいけない。いくらなんでも千切れかけの腕を同行できるやつがこんな村にいるとは思えない。私はこのまま死ぬんだ。最後の言葉も伝えられないまま。そう思うと涙が溢れてきた。もう体を動かすことも出来ない。ただ、思うのは死にたくないということだけ。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!なんで!なんで私だけ!?呼びたくもない不幸を呼んで、疎まれ、蔑まれ、憎まれ、ただ生きていたいだけなのに!何のために生まれてきなの?生まれてきたことがダメだったの?私の生まれてきた意味ってなんなの?せっかく仲間が出来てこれからなのに、これからだってのに!私が何したの?何も悪いことしてない!周りには何にも考えてないような、悩みなんてないような連中がのほほんと暮らしているのに、私ばっかり苦労して、私の周りばっかり人が死んで離れていって・・・・・。
憎い・・自分の人生が憎い、周りが憎い憎い憎い憎い・・・自分が憎い、弱い自分が憎い。
黒い感情の奔流に飲み込まれて自分の汚い部分を見せつけられ不幸をを呪い周りを呪いどうしようもなくなった時にさらにどす黒いものが自分の中に入ってくるのを観じた。黒い感情をさらに黒いものが飲みこみ、吸収していく。渦巻いた黒い感情は根こそぎ持っていかれるように。小川を大河が飲み込んでいくように、洗い流していく。そこで私の意識は途絶えた。
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とうとう八月に入りましたが、今年は水着はきることはなさそうです。
なのでクラゲは私には関係ないです。
皆さまはどうかご注意ください。




