●シェーラサイド(後編)
シェーラさん微妙にデレてきてます。
ようやく盗賊ギルドに帰ってきた。あいつは裏手にレッドボアを搬入しに行ってる。今日はチンピラ達はいないようだね。酒場のほうは今日は客が多いようで結構賑わっている。
「ようよう、シェーラじゃねーか。一人か?一緒に飲もうぜ、なぁ。」
肩に手を回そうとしながら酒臭い息を吐き出しているこいつはオーハンっていう中堅の冒険者だ。「戦の槌」っていうパーティに所属してる。パーティメンバーは奥でその様子をニヤニヤ見ている。気色の悪いな。手を回されないように体を入れ替えながらその手を躱す。
「悪いがツレがいるんでね、お断りだよ。」
「ツレ~?お前が?そんな自殺志願者誰だよ!それよりもオメェがどうしてもっていうんなら俺たちのパーティに入れてやってもいいんだぜぇ?」
「はっ!いきなりそんなこと言うなんてどういう風の吹き回しだい?」
「もちろん、愛人になるってのが条件だぜ?どうだ?悪い条件じゃないだろ?」
こいつは頭がイカレてるのかしら?この下品な顔でそんなことを言われると寒気がするし吐き気もする。
「だからツレがいるからあんたらになんか用はないんだよ!」
「はっ!どうせそいつもすぐに死ぬんだ、俺達と楽しんだっていいだろ?」
「・・・・・・・。」
ムカムカするね。張り倒してやりたいけど、あいつが帰ってくるまでは我慢しといてやるか。
「あの・・・シェーラさん?」
搬入を終えてあいつが話しかけてくる。ムカつきが収まらない私は無言でそっぽを向いてしまう、こんな顔見られたくない。そうこうしてるとオーハンと話ししているみたいだ。
何で急に話しかけてきたのかをあいつが説明してくれた。どうやら私が美人だからってことらしい。それで急に話しかけてきたなんて底が知れるし、それでなびく私じゃないんだよ!面倒だから無視に決めた、横に座ろうとするがそっぽを向いて無視だ。
換金から帰ってきてようやく出ることが出来る、ホッとすると同時にイライラから文句を言ってやる。あいつも言い返してくれてたな、少し嬉しい。うん、少しね。
オーハンの顔は見えなかったが怒ってるんだろう、面倒なやつだが今は気にならない。それよりも今は打ち上げだ、二人で祝杯を上げるんだ。ギルドの酒場は出てきてしまったから他のお勧めのところに向かう。安いが味はいいって評判の私のお気に入りの店だ。冒険者も多いから気を使わなくていいし、こいつもそういうところのほうがいいだろう。仮面もきっと目立たないはず。
「仏頂面より笑顔のほうがいいしな。」
え?笑顔のほうがいい?急に何を言ってるんだよ!からかうんじゃないよ、まったく!あぁ喉がカラカラだ!たまにそういうことを言うから心臓に悪いよ、ほんとに。
そう言えば、酒は15歳からだけど飲めるの、かな?あっ大丈夫なのか。なら15歳よりは上ってことだな。歳は分からないって言ってたし私より年上ってことは流石にないよね。
「じゃぁ、かんぱーい!」
上手い料理とアルコール。酒が喉を焼き染み込んでくる。働いた後のコレは至福だね!こいつは不思議そうな顔をしているが料理は口に合ったみたいだ。さっきから手が止まっていない、ここに連れてきてよかった。
こいつがいなかったら、今頃ゴブリン達に凌辱されていただろうことを思うと今の幸せがギリギリのところで保たれているような気がして怖くなる。今回は二人とも生き残れた。でも次は?生き残れないかも、でも不幸を招いても私だけは助かってしまう。それが今までは申し訳なかった。過去を思うと今の幸福を感謝しつつもついつい酒に逃げてしまう。
ついつい飲み過ぎたみたいだ。目の前には白のマントの剣士がいて、何か話している。私を見る目は爽やかな表情とは一変して舐めるように見ている。下種なやつらと同じ目だ。こういうやつらは危なくなったら平気で仲間を犠牲にするもんだ。
マントの男が金の入った袋を前に置いた。これって私を置いて行けってことだよね。金ないって言ってたし・・・袋にパンパンに入った金置かれたら置いていくんだろうな。
不意におんぶされて店を後にしていた。私は訳が分からない、今までの経験からすると男なんて金か女しかない。パーティ組んで間もない疫病神の私よりあのお金のほうが価値があったはずなのに、なんで私をおんぶしているんだろう?
「ねぇ、どうして?」
思わず聞いていた。本当に理由が分からなかったから。置いてきてほしかったのかと聞かれたら、そんなことない。あのままだったら無抵抗のまま犯されていただろうから。
私が「無幸」と呼ばれていることや今までのパーティが悲惨な目に合ってることも伝えた。話している途中、泣きそうになったが涙は出てないからばれてないよね。
「俺は死んでない。それでいいんじゃないか?死にたくないから足掻いて足搔いて生き残る。イレギュラーがあってもやることは同じだろ?それも冒険のうちってね。誰が悪いってわけでもないさ。」
そんなことを言う意図が伝わってきた。私は悪くないって言ってくれてる。不幸を呼んでパーティを全滅させてしまったこともあるような女なのに悪くないって。そんなこと思ったことも言ってくれた人もいなかった。私が全ての元凶だと思ってたし事実だ。でもそれでも私は悪くないって言ってくれる。胸が熱くなって力いっぱい抱き着いてあったかい背中に包まれながら眠りに落ちていったんだ。
あんなに安心して寝たの冒険者になってからなかったな。それもロッカクのお陰なんだろうな。




