第1章:無職からの盗賊へ06
「あの・・・シェーラさん?」
「・・・・・・・・。」
なんか凄いご機嫌斜めだけど、なんなの?前の厳ついおっさん達はなんっすか?
名前:オーハン
性別:男
Lv:31
職業:重戦士 所属:戦の槌
HP:320
MP:120
スキル:大剣Lv3 戦斧Lv4 頑強Lv2 威圧Lv1 盾術Lv2 魔法耐性Lv2 危機察知Lv1
称号:人でなし 女好き ギャンブラー 殺人者
ざっと見たおっさんのステータスだけど、レベルはそれなりに高いがそれにしては頼りない感じだな。重戦士か大剣や戦斧って強そうだなぁ。所属ってパーティ名か。
「おう、仮面のガキかシェーラの連れってのは!?」
「そうですけど、あなたは?」
「戦の槌のリーダーのオーハンだ。お前からも言ってやってくれよ!ガキなんかと一緒にいねーで俺らといいことしようやって。なぁギャハハハハ!」
「・・・・・・。」
「あぁ。そういうことか、シェーラの知り合い?」
「・・・・ただの顔見知りだよ。今までは下卑た視線送ってくるだけだったのに、急になんだってんだい。いきなり俺の女にしてやるなんて。」
「あぁ、それはあれだよ。シェーラがちゃんとしたら今まで以上に美人だったからだろ。」
「び、びび・・・・・ふん、今までパーティの誘いも断ってきてたくせに今更何言ってんだい。」
「今までは今までだろうが!これからはパーティに入れてやるって言ってんだからいいだろ。こっちきて親睦を深めようぞ。なんなら上に行くかぁ?ひひっ」
「シェーラ、とりあえず依頼達成の報酬貰ってくるから。」
「・・・・。」
俺に顎で指図しながら、オーハンを睨みつけている。はぁ、揉め事嫌だなぁ。ってかああいう厳ついの苦手なんだけど。
「ロッカクさん、シェーラさん大丈夫ですか?」
「あぁ、そう思うなら報酬を早くくれ。」
「あっはい。こちらです。大きさから20|銀貨≪シルバー≫です。シェーラさんがあんな美人だったって知ってみんな目の色変えたんですよ。もともと美人でしたけど、あそこまで・・・その色っぽいっていうか艶っぽい人って思ってなかったから。」
「それは俺も同感だな。じゃ、行くから。ありがとう。」
「揉めるなら外でお願いしますね。」
無責任なことを言うキルトに振り返らずに手だけで振り返しシェーラのところへ近づく。相変わらずパーティへの勧誘は続いてるようだがだんまりを決め込み無視している。俺が近づくのに気が付くと席を立つ。
「報酬は貰ったから、出るか?」
「えぇ、ここは空気が悪い。ゴブリン並みに臭い。」
ゴブリン並みかなかなか辛辣だな。オーハンの顔が真っ赤になっていっているのぞ。あんまり挑発するのはやめてやめて。
「はん!行き遅れが調子に乗りやがって。ちょっと面ぁいいっても『無幸』のシェーラなんか願い下げだぜ!お前も『無幸』の餌食にならないように気を付けるんだな!」
「その程度の力で、その程度の覚悟しかないなら俺達に関わらないでもらえますか?目障りなんで。では、さようなら。」
そう言い残し、ギルドを後にした。残されたオーハンは顔が赤から青に変わり打ち付けた
拳はテーブルを破壊しそれでも収まらないようで周りの客に当たり散らしていた。
「馬鹿にしやがって・・・。思い知らせてやる。」
テンプレな言葉をオーハンが呟いている頃、俺とシェーラは他の飯屋に向かっていた。俺は絶賛後悔中だ。だってそうでしょ、これっ所謂フラグたったって気がする。あのオーハンって人に啖呵切っちゃったし仕返しとかするタイプの馬鹿だ。はぁ。そんな俺の横でシェーラは何気に楽しそうだ。
「なんだ?機嫌良いじゃないか。」
「そうかな?そんなことないさ。」
ニコニコしてるやん、それで機嫌よくないならいついいんだよ。手を後ろ手に組んで胸を強調するような感じで歩いている、そんな美人に目が行かないほうがおかしいのかすれ違う男はもれなく振り返っている。そして横にいる俺に不審な目を向ける。そりゃ、今のシェーラの横に俺がいたら不自然か。
「ここに入ろう。ここは結構穴場なんだ、冒険者が多いし値段も手ごろだから今日の稼ぎがあれば大丈夫だ。」
「そうなのか?まぁ俺はこの街の事まだ知らないから付いていくだけだな。」
「味は保証するよ!」
なにはともあれ、機嫌がいいのは良いことだ。仏頂面より笑顔のシェーラのほうがいいしな。
っとシェーラが目を丸くしてこっちを見ている。
「な、な、何言ってんだい!全く!からかうんじゃないよ!あ、あついなぁー。喉カラカラだ。」
背中をバンバン叩かれながら、あぁ声に出てたのかと気付く。それにしても叩き過ぎだし痛いぞ。嗜みを覚えてくれ、リアルガチで。
酒場の中は喧騒と熱気で溢れていた。先に入った仮面の俺には皆一瞥しただけで無視したが、シェーラが入ると魅入る者や値踏みするように嘗め回すように見る者など不躾な視線で溢れていたがシェーラは気にしないといった様子で奥に進んでいく。奥に空いていた4人掛けの席に座って注文を済ます。
「あっ、酒飲める口だっけ?」
「ん?あぁ大丈夫だ。」
「見た目じゃ分かんないけど酒飲めるのは15からだから、飲めるってことはそれより上ってことだね。」
「あぁ多分。自分でも歳は分からんから気にしなくていいよ。」
「そうは言ってもね・・・。まっいいや依頼達成の記念なんだ、飲んで食べるよ!」
「だな!俺はこのボア肉のシチューとボアのもも肉のから揚げが食べたいぞ。」
「いいねー、私はボアのミスジと香草焼きに青豆の塩炒めにタモのロクー煮!」
「後半は何の料理かわからんが旨そうだな!注文お願いしまーす!」
「はいはい・・・。」
ウェイトレスに注文を通して先にエールを受け取る。受け取って思う、これはどういうことだ?
「じゃぁ、かんぱーい!」
「お、おう。乾杯!」
俺の疑問を他所にシェーラはその生ぬるいエールをあおる。俺も飲むが生ぬるいビールに近い味だ。つまり不味いってこと。いや、ビール飲みなれてたらぬるいビールなんてあり得ないから!
「あー染みるー!!仕事の後はやっぱコレだねぇ!命の水だよぉ!」
「飲みっぷりは最高だなぁ。」
「何言ってんだい!飲みっぷりだけじゃないっての!そんなこと言う舌は私の風魔法でちょん切るよ!」
「おい、ねーちゃん!下をちょん切るなんて下品だなぁ!がはははは」
「うるさいよ!・・・ったく、どこが下品なんだい。」
酔っ払いに悪態付きながら酒を飲む。まだ一杯目だから全くのシラフだが周囲に馴染みすぎてて酔っ払いに見えるなぁ。
「で?舌なのか下なのか?」
「あん?下?」
「ば、ば、ばっかじゃねーの!切られたいのかよ!!」
「まぁまぁ冗談なのは分かってるって。ほら、料理きたぞ。」
「お待たせしました~!!」
「おぉ!あのレッドボアがこんな旨そうになるのか!」
「ほらほら!旨そうだろ?ここはオススメなんだ。」
暫く料理に舌鼓を打ちつつ酒を酌み交わす。あんなに勝気だったシェーラも寄ってくると目がトロンとしてすこぶる色っぽい。それを横目でチラチラ見ている男どもにも気が付かないくらい酔ってきているようだ。そろそろ出る頃合いかな。
「相席いいかな?」
「ん?」
頭上から声を掛けられ顔を上げると、さわやかにほほ笑むイケメンがいた。短い金髪のイケメンは純白のマントを付け腰にはブロードソードだろうか、柄の細工から見ると中々金のかかっている装備をつけているようだ。何の用かわからないが相席をしたいということだが、俺たちはそろそろ出たいんだが。
シェーラはトロンとしたまま、まだ飲みたいって訴えてる。あげく寝たら連れて帰れだと。お前の宿を俺は知らんって。それを聞いたイケメンが「何なら俺がお送りしますよ。」ときたもんだ。あんたもシェーラの宿を知らんだろう?送り狼宣言されても俺も困るっての。
「まぁ、それはありがたい気もするけど、一応仲間なんでな。どこの誰かもわからん人に任せられませんよ。」
「おや?意外と紳士なんだな。仮面なんかで顔を隠してるからやましいことでもあるのかと思ったが?」
「人間やってりゃやましいことの一つや二つあるでしょう?」
「違いない、ところで俺はこの美人とお近づきになりたいんだ。下賤の者は遠慮してもらいたいんだが?」
「おっと貴族の方ですか?」
「ふふ、口が滑ってしまったかな。だが、仲間を置いて帰ったでは良心が痛むだろう。これで君の良心を慰めてはどうかな?」
そう言って懐からジャラジャラと金の詰まった袋を取り出す。何かこういうのって嫌いなんだよなぁ、金で何でも思い通りになるって思ってるやつ。
「とりあえず、それは受け取れませんよ。俺たちはこれで失礼しますね。またどこかで会えることを」
心から願ってませんから。最後の部分は声に出さずに舌をだす。シェーラを抱えたまま会計を済ませて店を出る。後ろをチラ見すると、さっきのイケメンは揃いのマントをつけたやつらの輪に戻っていくところだった。ドアが閉じる瞬間、こちらを見ているのに気づいてはいたが振り返らずに店を後にする。
「ねぇ、どうして?」
不意におぶってたシェーラが声をかける。おぶってると巨乳で背中が幸せなことになってる、これはやめられねー。街灯はちらほら、飯屋や酒場はまだ開いているがそれ以外の店はもう店じまいの時間は過ぎており静かなもんだ。
「ねぇってば。」
「何が、どうしてなんだよ?」
「置いてくればよかったのに、お金も貰えたんでしょ?」
「ん?置いてきてほしかったのか?」
背中だから見えないが首を振ってるのは分かる。案外子供っぽいのな。
「でも、お金ないって言ってたでしょ。」
「それとこれとは話が別だし、金は稼げばいいだろ。」
「うん。・・・・・・・・・私さ、無幸のシェーラって呼ばれてるの知ってるでしょ。」
「言われてたな。」
「今までのパーティは皆、私の無幸に巻き込まれたの。私といるといつも事故だったり今日みたいな魔物の群れに襲われて・・・。」
「死んだのか?」
「全員じゃないけど、死ななくても大けがして引退した人もいたかな。」
「そりゃご愁傷さまだな。」
「最近は噂を・・・・・事実なんだけどさ、それを恐れてベテランはパーティを組んでくれなくなってね。駆け出しとしか組めなくなってたんだけど、駆け出しだからさ。やっぱり死んじゃうんだよね。だから知り合いに強そうだったり使えそうな新人をスカウトって形で連れてきてもらってたんだ。」
「あぁ、あのチンピラね。」
「あれでも優しいやつらなのよ、ゴロツキから助けてあげたら恩を感じてね、冒険者にはなれないけどパーティ集めの手伝いはするって聞かなくて。」
「何気に人望が厚くてビックリだ。」
「ほんとそう。お陰で死人が増えちゃった。」
「・・・・・・。」
表情は見えないが、辛そうなのは声色でわかった。まだ酔っているのか?
「あー・・まぁなんだ、俺は生きてるぞ。」
「え?」
「俺は死んでない。それでいいんじゃないか?死にたくないから足掻いて足搔いて生き残る。イレギュラーがあってもやることは同じだろ?それも冒険のうちってね。誰が悪いってわけじゃないさ。」
「うん・・・うん!」
「それにしても、酔うと女の子になるんだなぁ。」
背中にぎゅーっと抱き着きながらバカと一言残し、寝てしまった。
そう寝てしまった。いやいや、お前宿どこよ?シェーラをおぶったまま夜の街で途方に暮れるのだった。




