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もう魔王やめます。  作者: まさきえき
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第1章:無職からの盗賊へ03

第1章:無職からの盗賊へ03


 だいぶん日が高くなっている。時間にしては17時ってところか。このまま帰っても馬小屋で明日の朝までやることないな。かといって金もない。今から討伐クエストって受けれるのかな?簡単なのあれば試しにやってみたいな。


そんなことを思いながらギルドにやってきたわけだが結構賑わっている。変な仮面を付けた俺のことを奇異な目で見ることはあるが、すぐに気にすることなく目を離す。おっ新鮮だ、黒髪の時はそんなことなかったんだが、ヅラ付き仮面はなかなか効果的なようだ。気を良くしてキルトのいるカウンターに並ぶ。


「こんにちは、お疲れ様です。クエストの報告でよろしいですか?」


「いや、今から受けられる簡単な初心者用の討伐クエストとかあるかな?」


「今からですか?今からだと夜になりますが、大丈夫ですか?」


「あぁ、だからなるべく簡単なもので頼む。」


「そうですか、ギルドカードをお願いします。」


「・・・ん?ロッカクさんですか?」


「そうだけど?」


「仮面つけてたから分からなかったです。目元だけでも隠すとわからなくなるもんですね。」


「それは良かった。ギルドカードには名前が出るからわかったのか。」


「えぇ、ロッカクさんは悪目立ちしてますから。ははは。」


「・・・笑えないから。」


「それでクエストでしたね。これくらいしかないですね、ランクFなので単独での討伐依頼はほとんどないですが、これは常設のランク無制限のものです。誰でも受領可能です。ですが受けるのは皆さん日中が多いです、この時間から受ける方は滅多にいないですけど。」


「あぁ、それで構わないよ。」


「夜になると魔物も活発化しますからご注意を。では、こちらにサインをお願いします。」


 ギルドで受けた依頼は門から出てすぐの平原や街道沿いの魔物の排除だ。その中でもローアキャットっていう害獣の間引きだ。魔物ではないがキャットという名前に似合わず大きさは狼より少し小さいくらい。通常は5-10匹程度の群れで行動するが群れが大きくなり過ぎないように数を減らしてほしいってことだ。もともとが臆病なので襲ってきても旗色が悪いとすぐに逃げてしまうので一回で群れを全滅させることは難しいそうだ。盗伐達成数は5匹。確認の為に尾を持ち帰れというのが内容だ。


 初心者向けということなので特に心配はないだろうということでキルトも紹介してくれたようだし、いっちょ頑張るか。シェーラとの手合わせでも対人・対魔物での実力が不足しているようだし訓練は必要だな。


「魔王って言っても動いてるやつと戦ったのは勇者だけだし・・・あれ?箱入りだな。」


 思わず、呟きが漏れる。しかもボロ負けで瀕死まで追い込まれたんだから笑えない。あんな目に合わないためにも力は必要だし金を稼ぐ手段も必要だ、金に関してはギルドの仕事を受けていけばなんとかなるか・・・?


 考え事をしていると門まで到着する。そろそろ夕暮れどきだ、門は出るより戻ってくるほうが多くそれなりに人がいる。大半が冒険者で護衛された商人なんかも多い。獣人が多く感じるが気にせず門番に話しかける。


「ギルドの依頼で外に行くが、構わないか?」


「ん?ならギルドカードを出してくれ。・・・・・ランクFでこの時間から行くのか、無理するなよ。」


 仮面を付けた俺に訝しい顔を向けたが冒険者には色んな装飾品を付けた者もいる為か、さして気にする様子もなく通してくれた。いやー仮面つけるだけで全然違うものだな。これはシェーラには本格的に感謝だ。


門を出ると門番の詰め所の灯りと街道にいくつか街灯が灯っている。もちろん門の前から100mほどだけだ。街の外まで街灯を付けるなんて真似はしない。あくまで魔物が近寄って来たら分かる程度だ。たくさん設置しても魔物が壊す可能性のほうが高い。


 街灯から離れ街の防壁に沿って歩いていく。門番詰め所から離れるにつれ、日も落ちていき暗さが増してくる。辺りは月明りのみに照らされてる。この世界は街灯や家の灯りも少ないようで星空が鮮やかに見えている。あまりの壮大さ、美しさに声もでない。


「すごいもんだな、日本じゃ見れない光景だ、いや地球じゃ・・・かな。」


 呟きも闇に吸い込まれるように消えていく。周りには虫の音に混じり獣の足音がかすかに聞こえてくる。どうやら囲まれているようだ、闇の中に赤い双眸がいくつも浮かんでいる。


 そっと影の中から使い慣れた長斧である「無名」を取り出す。それを見た赤い双眸は揺らいだように見えたが、構わず襲い掛かってきた。囲んだ俺に飛び掛かるように4匹、足元へ噛みつこうとしたのか下に4匹、合計8匹の一斉攻撃だったが無名のリーチはおよそ2m、一振りでロッカクにたどり着く前にその全てを屠る。一瞬のことで悲鳴も上がらなかったがリーダーらしい個体のギュウ!という鳴き声で残りの獣は逃げ出していた。


「あっけないな。」


 呟きながら、8匹の獣を鑑定していく。目的のローアキャットだったようだ。レベル2ということで自分のレベルからしたら完全に弱い者いじめにしかなっていないが、これも食べていくための仕事だと思いながら尾を回収して影の中へ収納していく。仕事と割り切れば殺生もそこまで気にならなくなってくる。日本だったらきっと罪悪感でいっぱいだったろうななんて思いながら作業を終える。


 それからいくつかの群れに襲われたが「無名」での一閃で蜘蛛の子を散らすように逃げていってしまい、訓練にならないと自主練をすることにした。幸い闇魔法・・もとい暗黒魔法の適正からか夜目は利きそこまで暗いとは感じないことも理由だった。


「足さばきから復習していくか。」


 昼間の訓練でシェーラの足さばきを見ていて思ったことだが、大きな円を描く動きと小さな円を描く動きで俺の攻撃をいなしていた。そして攻撃にもその動きを取り入れていたようだった。昔読んだ格闘漫画に円の動きは防御にも攻撃にも重要で力をどう相手に伝えるのかが大事だと書いてあった。関節にも可動域がありそれを知り最大限の力を伝えるために各部の動きを知ること、これが近代格闘技術である。とかなんとか。この世界で近代格闘術とやらがどれほど役に立つのかわからんが自分の体のことを知るのは大事なことだろう。


 身体的には高いレベルだとうから円の動きが出来れば、発勁とかも打てる気がする。いやきっと打てるだろう。漫画の技が出来るかもって思うとちょっと興奮するな!いや、ちょっとじゃないこれは男の子の夢だな。よし、頑張ろう!


 そんなことを一晩中続けていたら空が白んできたようだ。いつの間にか星空は見えなくなっていた。


『体術のレベルが上がりました。』

『完徹魔王の称号を獲得。』


 響き渡るアナウンスにビックリする。いつもは意識してなかったからかレベル上がったときはこんなアナウンスが流れるのね。声が女性なのは仕様なのかな。って完徹魔王?徹夜したから?称号の価値がなんか低くて引くわ。


 門のところまで行くと門番がギョッとした顔でこっちを見ている。仮面は・・・うん、付けてるな。ならどうしてそんな顔をしてるんだ?あっ走ってきた。


「おい!あんた大丈夫なのか!?」


「大丈夫って?別にケガはしてないけど。」


「はぁ?じゃぁこの血は!?泥だらけだし何かあったんじゃないのか!?」


「あぁ、ローアキャットと戦ったらこんなになったんだよ。」


「はぁ?あんなのと戦ってこんなになるなんて・・・冒険者向いてないんじゃいのか?」


「あはは、かもなぁ。・・・っとそろそろ入れてくれ。はい、ギルドカード。」


「転職をお勧めするよ、ほら返すぞ。」


 門から街へ入ったときに一つ目の鐘が鳴り響いた。結構早朝に鳴るんだな、そんなことを思いふと自分の格好を思い出す。さすがにこんな格好で行ったらシェーラに詮索されたあげくに怒られるだろうな。


「水魔法で流すか。」


 水魔法で全身を対流させ汚れを一気に落とし、そのまま気化させて乾燥させる。髪に水魔法の癒し効果なのかサラサラになっている。仮面についている毛にも施すとくすんだ青だったのがオーシャンブルーのような色と艶を取り戻す。高レベルの水魔法を使ってこんなことをしようなんて奴はいないのか、水魔法を使えるような冒険者でも薄汚れている奴がおおかったな。


 なんてことを思いながらギルドへと足を向ける。まだ鐘は鳴ってないから大丈夫か、と思いシェーラがいないのを確認して受付カウンターへ向かう。今日も朝からキルトは出勤していた。ちょうどいいや。


「おはよう、クエストの達成報告をいいか?」


「あっおはようございます。あれから5匹狩れたんですね。」


「あぁ、5匹以上の時は報酬はどうなるんだ?」


「5匹ごとに報酬は支払われますのでご心配なく。でも9匹でも5匹分なのでその場合は10匹仕留めてから報告のほうがいいと思います。」


「そうか、ありがとう。じゃぁ証明部位はここに出したらいいのか?」


「えぇ、お願いします。」


「じゃぁ、これ。」


 そういって影とつなげた袋の中から20匹分のローアキャットの尻尾を取り出す。


「これはまた、多いですね。」


「一度にこんなに持ち込むのは珍しいのか?」


「えぇ、雑魚ですが逃げ足が速いので、なかなかこの数を揃えるのは難しいですね。」


「そうか・・・。」


 弱い獣だけど、あんまり目立ちたくないな。キルトが言うには悪目立ちしてるらしいしな。


「実はここに来る前に結構な数を狩っていたからそれも合わせたんだ。」


「あぁ、なるほど。20匹になるまで狩っていたってわけですね。」


「・・・あぁ、そうそう。」


「分かりました。では依頼達成ですね。報酬をお持ちします。」


 盗賊ギルドにはそこまで人はいない。どうやらギルドごとに混む時間も変わるようだ。今は2人だけのようだ。鐘がなる前にシェーラは来るだろうから、早く報酬をもらいたいな。


「おまたせしました。報酬の2銀貨(シルバー)です。」


「ありがとう、あとでシェーラと来ると思うけど俺がクエスト受けたことは内緒で頼む。」


「は?はぁ、わかりました。」


 そういってカウンターから離れる。いやー初仕事かーこの達成感!いいね。2銀貨ってだとのくらいなんだろうな。酒場のほうのメニューに目をやるとエール=10|銅貨≪カッパー≫って書いてあるな。1000円くらいか?他のメニューもそんなもんだったし多分合ってるだろうな。なら2万円ってとこか。依頼に対して多いのか少ないのかわからんな。




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