第1章:無職からの盗賊へ02
第1章:無職からの盗賊へ02
あぁ、空が綺麗だなぁ。鳥が鳴いてるや・・・。今日はこんなに天気がいいのに俺は何やってるんだろう。
「ほら、いつまで寝てるんだい!続けるよ!」
そう言って俺の腹を蹴るのはシェーラさんだ。赤髪の美人の年増さんだ。ちなみに胸は・・・デカい。下から見上げるとそれはもう絶景だ。
「なんだい?いやらしい目で見てないでさっさと起きな!ったく、これだから童貞は・・・。」
「どどど、童貞ちゃうわっ!」
俺たちは町はずれの墓地のさらに外れまで来ている。一応、俺の実力を見るために動ける場所を探した結果ここしかなかったわけだ。というのも、盗賊ギルドに修練場なんてないのだ。訓練したい場合は冒険者ギルドで申請するんだが、俺がいることでシェーラも使えないのだ。いやいや、迷惑かけるね。疫病神で申し訳ない。そんなこんなで公園とかで
行おうとしたところ、警らの騎士に通報されたり、もちろん俺がシェーラを襲おうとしているってことになってたりでまともな場所が見つからなかったからこんな遠くまできたわけだ。
ちなみにこの場所を見つけるのに、すでに昼を回っている。シェーラの機嫌も悪くなるばかりだ。そろそろ起きないと額に青筋が出来ている。眉間の皺が取れなくなったら大変だ。
「また変なこと考えてるだろ!?」
「む、なぜそれを?」
「考えるんじゃないよ!」
「考えるな、感じろってことか!」
「何の話をしてんだい!」
「あんまり怒ると小皺になりますよ。」
「戦争したいようだね・・・。」
「あっ冗談です。続きをお願いします。」
そろそろ、からかうのを止めないといけなそうだ。周りには誰もいないのをいいことにシェーラは俺を投げたり蹴ったりぶん殴ったりやりたい放題だ。もちろん、俺にダメージは通らないし疲れるわけじゃない。
それでも体術を使うシェーラの動きは洗練されているように感じる。体術Lv3なのでそんなに高レベルではないはずだが、レベル以上の動きに感じる。
「シェーラさん、本当に体術Lv3なのか?」
「ん?そうだよ。なんでだい?」
「レベルのわりに動きが洗練されているっていうか無駄がないように感じるんだけど。」
「へぇ、そうだね。体術は古流体術っていう部類のものだからかもしれないね。」
「流派が違うってこと?」
「そうそう。私が修めた流派は体術と護身術に分かれる前のものだから体術とは厳密には違うかもね。でもよくそんなことに気付いたね。」
「あーうん、体術って殴る蹴るってイメージだったから。」
「もちろん、それも大事さ。でも古流体術は投げも関節技も取り入れてるし何より力の使い方に重きを・・・。ってあんたに説明してもわかんないだろ?」
「そんなことないよ、俺は理論派だから。教えてもらったほうが分かりやすい。」
「まぁ簡単に言えば相手の力を利用して制圧するってことさ。だから回転するような動きが得意なのさ。」
さっきの組み手を思い出す。そういえば回るような足さばきだけで俺の背後を取ったり投げたりしてたな。対応できない動きじゃないけど俺には使いこなせていない動きだ。これはレベルが低いとかではなく身に着けておきたい技術だ。
「投げて行動不能にさせて蹴る・・・えげつない。」
「人聞きが悪い!殺さずに行動不能にさせてるだけだろ!?」
あれ?優しさで修めた技なのかな?まぁ人には何かしら事情があるだろうから気にしない気にしない。とりあえず、シェーラの足さばきを会得するところから始めるか。円の動き円の動きっと。
「ったく、はぁ。そろそろご飯にしよう。」
「えっと・・・俺、カネナイ。」
「なんでカタコトなんだよ。とりあえず、弁当持ってきてるから安心しな。」
「もうデレた!?」
「デレ?何?」
「いや、手作り弁当なんて作ってくれるのは何でかと。」
「手作りなんてするか!買ってきたんだよ!あんたどうせ店で物とか買えないだろ?」
「はい、ごもっとも。昨日もお店の前を通っただけで水掛けられました。」
「うわ・・・引くわ。」
「それも数軒されたら買いに行く勇気なくなりますです。」
「・・・じゃ、昨日はあれから何も・・・?」
「食べてないね。これが最初の食事。」
「これも食べときな。」
そっとシェーラからサンドイッチが手渡される。この人はお人好しだ、俺は優しさで目が痛い。
「別にこれは昼からの訓練に支障があるからやるんだからな!」
うん、その年でデレルのはちょっと遅かったと思うんだ。
「そういう顔でほほ笑むのをやめろ!」
ありがたくいただきます。
昼からは長い獲物を使った訓練だったけど、長い棒を使った俺と短剣サイズの棒を使った手合わせだったが、体術を組み合わせたシェーラに翻弄されて惨敗。こちらも手を抜いているとはいえ疲れた。魔法は実戦で確認しようということになった。今日はこれで終わりか。
「あんたに一つやるものがあるんだ。」
「くれるなら何でももらうぞ。カモンカモン!」
「嫌なテンションだな。まぁいいや、これだよ。」
「なんだこれ?」
それは仮面に動物の毛?のようなものが付いていた。見た感じ完全に呪いのアイテムだ。仮面自体の装飾はほとんどない。動物の毛はくすんだ青色だ。目の部分を隠すためだけの簡易な物だな。と、これを見ながら気付く。これを付ければ黒髪は隠せる?
「気づいたみたいだね。」
「これがあれば・・・。」
「そうだよ、これがあればあんたの黒髪に気付かなくなる。どうだい?」
「これは・・・確かに俺用みたいなアイテムだな!!」
「ふふん、そうだろう?」
「感謝する気があるんならこれからも私に尽くすんだよ。」
「これまでもこれからも尽くす気はないけどありがとう!これで・・・これで念願の買い物ができるよ。金はないけど!どうせなら金もくれ。」
「念願って・・目標が低いんだよ!ついでに金までたかるんじゃない。そんなところは盗賊っぽいねぇ。」
「ん?それは褒めてるのか?」
「褒めてないよ!」
「あんまり怒鳴ると小皺が増えるぞ。」
「OK、喧嘩売ってるんだね。買ってやるよ?」
「まぁまぁ、軽い冗談だ。短剣をしまおう、な?」
「ふん。」
ずいぶん軽口を聞くようになったが、最初に騙されたのもあるが案外面倒見のいいシェーラに少し気を許したってのもある。良い物もくれたし。だが、気を許しすぎないようにしないと、また裏切られたら堪らない。
「まぁ、あんたの実力はわかったよ。そこそこ使えそうだ、明日は町の周りで軽い討伐クエストでも受けてみるか。」
「軽いの?」
「連携出来るかとかわかんないと面倒なクエストなんて出来ないだろ。長物は使えるみたいだけど、あんた
の戦い方は素人に毛が生えた程度なんだし。」
「わかった、必要なものはあるか?」
「・・・無一文に準備なんて望んでないよ。」
「お、おう。」
「回復薬や飯は準備してやる。あんたのやることはまずはケガをしないことだ。無駄金を使う気はないからね!」
「素直に俺のことが心配だって言えばいいのに。」
「・・・あんたねぇ。」
心の声が漏れていたようだ。呆れた顔でシェーラがこちらを見ている。ため息をつくんじゃない、傷つくだろうが。
「はぁ、とりあえず今日は解散だよ。あとは好きにしな。明日は朝からギルドに集合だから遅れるんじゃないよ。」
「朝って言ってもいつだ?」
「ん?街は初めてなのか?なら鐘が二つ鳴る頃に来な。」
「鐘が二つだな、了解した。」
「じゃーね。今日はしっかり休むんだよ!」
何気に体調を気遣うあたりにお人好しが出てる。まったく美人なんだからそれなりにしていれば男なんていくらでも来るだろうに。あっ来るのは不幸か、不幸招来ってのがあったな。難儀なもんだ。




