第1章;まずはどこへ行こうか?02
洞窟の中はひんやりしていて汗をかいた体には心地が良かった。濡れた布で体を拭きながら周りを見渡す。入口こそ茂みの影にあり隠れるように作られていたが内部はなかなか快適だった。所々、魔導具の光で照らされている、それでも薄暗いが洞窟に案内されてようやく一息つくことが出来た。
「いやー助かった、一人でやってたら今日中には終わらなかっただよ。」
「いやいや、こちらこそ。今晩泊めてもらえるだけでも有り難いっす。」
「食べ物はあんまりないから、期待されても困るだがね〜。なはははっ。」
「あっ、熊肉ならあるけど。」
「熊?この辺の熊ってダークグリズリーしかおらんがよ。子熊か?それなら仕返しされるぞ!?」
「いや、子熊ってことはないと思うけど・・・。でも、そのまんまなんで、解体しないといけないかな。」
「どっか置いてきてるのか?それならもう他の動物や魔物が食ってるだよ?」
「いや、持ってる?」
「は?」
何言ってんだ、こいつって顔してるドワーフを横目に影の中から熊の死体を取り出す。その光景に目を丸くする。
「こら、おったまげたー!かなりの大物でねーか!こんなのに出会ったら命がいくつあっても足りなねーな!運が良かっただなぁ。それに鮮度もいいみだいだな。」
「あはははっは。」
どうやら、死体に偶然出会ったとでも思ったのか勝手に納得しているようだ。もう説明も面倒だしそれでいいだろう。
「でも、処理がなっちゃねーなぁ。これじゃせっかくの獲物も台無しだぁ。せめて血抜きをしねーと。」
血抜き?魚で言うところのシメるってやつか?確か体の中に血が残ってたら美味しくないんだったか。
「今からやってもダメかな?」
「んーやらんよりやったほうがいいだな。鮮度もなかなかいいし。あと、内臓も出さねーと。坊主は解体はしたことないのか?」
「ないっす!現代人はパックの肉しか見たことないっす!」
「??何のことか分からんがないんなら、一緒にやるべ、教えてやるから。」
「助かるっす。学ばせてもらいます!」
ここに食料がない以上、自分でどうにか出来ないといかんよね。仕方ないから技術を習得させてもらおう。幸い血は臭いも見た目も大丈夫だ。自分の体で散々見てきたからな。そのうちスキルにグロ耐性なんて付くんじゃなかろうか。それはそれで嫌だな。
パチパチパチパチ
焚き火の音が響く。結局食事にありついたのは深夜だった。もっと早く血抜きを出来てたらそこまで手間取らなかったということだ。下準備って大事なことだったようだ。肉の解体からの下準備なんてしたことねーしな。疲れてたからか、焼いただけの肉を貪るように喰ってそのまま就寝した。
ちょっと目が覚めたので体を起こすとドワーフはまだ寝たままだった。そういえば名前も聞いてなかったな。まぁ、明日聞けばいいだろう。
「なぁ坊主は・・・。」
「おっちゃん起きてたのか?」
「坊主が起きたの気付いたからな。・・・で、坊主は何処を目指してるんだ?」
「とりあえず、街に行こうと思ってる。」
「街か・・・。なら、明日山脈の抜け道に案内するだ。」
「急・・・だね。」
「また人間が戻ってくるかも知れねーからな。おらも墓を全部作ったら離れるだよ。」
「それくらい手伝うよ。一人でやるより早いっしょ。」
「それは助かるけんど、いいのか?」
「軍隊には会いたくないけどね。すぐに来るわけじゃないだろうし、大丈夫。」
「じゃ、お願いしようかな。1週間前に引き上げていく軍隊見たから暫くは大丈夫だと思うだよ。」
「よし、ちゃっちゃと終わらせよう。そういうわけで、お休み。」
「んだ、おやすみ。」
本日は晴天なり、晴天なり。いやー晴れた晴れた!結局、獲物の解体をみっちり教わること3日、墓作り1日と1/4を俺の解体作業に充てさせてしまった。いやいや申し訳ない。あとドワーフの名前はレノと言うらしい。歳は俺より上と言うことだ。顎に蓄えらえてる髭を撫でながらそう言っていた。まぁおっさんでもジジイでもどっちでもいいか。年なんか興味ないしな。
洞窟の前で待ってるとレノ爺が大きな槌と手斧を腰に下げて旅支度で出てきた。何で旅支度かと言うと、どうせここを出るなら一緒に街まで行こうということになったからだ。
正直、俺としても有り難い。道も分からんし、何よりこの世界の常識ってのがまるで分からん。道中いろいろと話を聞いておこう。
「おう、待たせただな。」
「いいや、引き払うんだから時間かかって当然だよ。」
「なら行くべや。」
洞窟の方を向いて祈りを捧げているレノを眺める。この世界にも神がいて宗教とかあるんだろうな。ファンタジーっぽい神なのかな?ってか本当に現れたりするとファンタジーっぽくてありっちゃアリだ。今後に期待だな。
森に入り山の中腹の抜け道に入り約2日後には山脈の反対側に出たようだった。いやーこれ反則みたいなルートだった。何が反則って真っ直ぐ突っ切るルートだったからだ。これって王族とかが避難する為のものっぽかった。それくらい整備されてたということだ。素直に山越えした勇者たちが再度来るのに相当時間がかかっていたのを考えると思わずニヤける。むしろもっと苦労すれば良かったのに。
「何か悪そうな顔してるだな。」
「ちょっとした思い出し笑いだよ。」
「もうすぐ麓に着くだよ。でもその前にこの辺で野宿さして、明日は麓の村には寄らずに進むほうがいいだね。」
「寄らない?」
「魔王様の直轄地の側でドワーフが居たら怪しいっぺよ。」
「それもそうか。なら俺だけでも食料買い込んでおこうか?金は持ってないけど。」
「威勢良く言った割に無一文だか。でも、それはもっとやめた方がいいべ。言ってなかったけど、黒い髪に黒い瞳は魔王を連想させるから忌み嫌われてるだよ。きっと良い思いはしないど。」
「瞳はダークブラウンなんだが。それにしてもそっかー、嫌われるのか。その割にレノは何も警戒してなかったみたいだけど?」
「ビックリはしたけど、直轄地在住だったら怖がることないべ。魔王直轄地に魔王に似た姿の魔族がいるなんて珍しくもないべ。」
「そりゃ違いない。」
そんなこんなで更に1週間歩き、いくつかの村を華麗にスルーしながら辺境の街にたどり着く。その頃には、持ってた熊肉もとっくに底を尽き不定期に襲いかかる魔物を仕留めながら食いつないでいた。幸い水は魔法で出せる、これがなければ本当にヤバかっただろうな。




