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もう魔王やめます。  作者: まさきえき
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序章:ここはどこ?011

ご都合主義駄文ですが、ご容赦ください。今日は外は雨、気が滅入るところです。

序章:ここはどこ?011



 おはようございます。六角ことロッカクです。ようやく研究が一段落付くかと思ったんですが名付けから2週間が経とうとしている今日この頃。俺もノエルも平常運転です。


 轟々と窓の外が騒がしい。雨粒が窓を打つ音が俺の耳に付き目が覚める。ぼんやりと目を開けると天蓋からハンモックを吊り下げ、きっちり執事服に身を包み、うつ伏せでこっちを見ているノエルと目が合う。ノエルも俺が目を開けたのを確認してニヤァッと笑う。いや嗤う。背筋が凍り嫌な汗が吹き出るのが分かる。最近のノエルの行動が常軌を逸しているようで怖い。いや、マジで。


 昔は美少女と眠るような妄想をしたもんだが、おそらく一晩中見つめられていることになろうとは・・・。されたら気まずすぎるだけだった。笑えないな。魔王ってこんな苦行を強いられるもんだったのか。


「お、はよう。」

「おはようございます!ロッカク様、お食事の用意は出来ています。」

「食事?」

「はい、今思えば以前ロッカク様がおっしゃられていた愛情を込めるって言う意味がようやくわかった気がします。うふふ。」

「いやいや、なんか怖いから!目がイってるって!」

「では、持ってまいりますので少々お待ちください。それとも先に・・・お召し物を・・取り、取り替えますか?」

「君はいったい何を想像しとるのかね。自分で出来るから食事を頼む。」

「畏まりました。」


 はぁ、朝から溜息が止まらない。それはそれは深い溜息がね。ちゃんと作れるようになったのか?あまり期待は出来ないが様子見といくか。手早くいつもの魔王のローブに着替えて杖がわりに無名を持つ。随分手に馴染むようになってきた。今では取り回しに困るようなことはない。


「ロッカク様、よろしいですか?」

「構わない。」

「失礼します。」


 執事服姿で入ってきたノエルは食事を乗せた台車を持ってきており手早くテーブルの上にセッティングしていく。料理自体はまだ蓋がされており見ることは出来ない。セッティングだけ見れば上等な食事だろうことが想像できるが蓋の中身だけは予測不可能だ。


「では、エヴァーワームのイナミソースがけと付け合せにリエチの実とウオンのソテーになります。」

「・・・・。」


 どうしよう、知ってる食材が一つもないぞ。食えるものなのか?そして色が・・・なんで紫色のソース?ってワームってミミズか?いやいや、ミミズだって食べられる種類があるはず。にも関わらず真っ黒だ。これはあれだな、炭だな。えぇ、わかります。焦げた匂いしかしないから。黒と紫のコントラストが食欲減退効果に拍車をかける。あとなんとかの実ってソテーって言ってたからこのまま食べるんだろうけど、フォークを刺そうとすると金属音がするんだけど、これって咀嚼出来るものなのか?


「ノエル、味はどうだった?」

「え?摘み食いなどいたしませんよ。」

「・・・味見はしなかったんだな。」

「召し上がらないんですか?」

「まず、君に一口食べる栄誉を与えよう。」

「よろしいんですか?」

「さぁ、口を開けて。」

「え?これは・・・あ~んっていうやつです、よね。」

「さぁさぁ。」

「は、はい!では、いただきます!」


パクッ


「!!!~~~~~!!」


 そのまま、口を抑えてどこぞへ走り去っていった。やはり食べられないものか。あれほど厨房に立つなと言ったのに。せめて味見を覚えて欲しいものだ。

 

 なんだかんだで、こっちに来てから2ヶ月目も半ばだ。早ければあと2週間で勇者が再度攻めてくることになる。まだ時間はあるはずだけど、気が晴れない。準備は徐々にできているはずだ。どこまで通用するかは対峙してみないとわからない。予備の案もあるが起死回生とはならないだろう、せいぜい時間稼ぎ程度だ。


「悩んでても仕方ない。風呂でも入るか。朝風呂なんて贅沢は社会人時代じゃ考えられなかったな。」


 そんなことを呟き魔王城の風呂場へ向かう。そこは毎日お湯が張ってあり天井も高く至るところに美術品や芸術作品が所狭しと並べられている。まさに王侯貴族のそれと言えよう、後から聞いた話だが湯に浸かるというのは高貴な人しか出来ない贅沢なんだそうだ。庶民はどうしてるんだろう。 


「で、ノエルは何故俺が風呂に入っているのにそこにいるんだ?」

「もちろん、お背中をお流ししようと思っています。」

「いらんから、風呂から出ていてくれ。」

「そ、そんなぁ。」


 そう言いながら上目遣いで俺を見上げる、ノエル。く~っかわいいやつめ!


「そんな目で見てもダメなものはダメ!」

「はい、畏まりました・・・。」


 一体いつの間にあんな真似を覚えたんだか。ノエルが距離を詰めてきているのは感じているが、こんな爺に何を求めているんだか・・・。って父性かな?元の世界では子供もいなかったからな。早く子供を産んでたらあんな子がいてもおかしくはないのか。




 倉庫で小麦粉を取り出し、朝食の準備をしていると小麦の袋に穴が空いているのに気づく。さらさらと漏れ出す小麦と袋の穴を見ながらぼんやりとしていると何かこう引っかかるものがある。この違和感なんだろうな。袋・・漏れる小麦・・・。


 書庫まで走り思いついたことを実験に移す。影潜り(シャドウレイテント)を発動させ影の中に空間を作り出す。もちろん影の外側からは中身を見ることは出来ない。そこでその最大体積を座標で固定し広大に広がるだろう影の中にさらに隔離空間を構築する。そして穴を開けるようにつなぐ影をゲートとして物の出し入れを行う。これでおそらく影の中に物が収納できるはずだ。


「おぉ!上手くいった!」


 やってみると何てことはないが思いつかないと、イメージできないと使用することは出来ないだろう。だけどとてつもなく便利な魔法だ。使い手が増えると流通が変わるだろうな。影があればどこでも使えるし、自分の体に写した影からだって物が取り出せる。手品みたいなことだって簡単に出来てしまう。うん、魔法チョー便利!


 面白くなって目の前に置かれてる魔導書を手当たり次第に影の中に収納していく。内容量はレベル依存のようだが俺の闇魔法はLv6。Lv10がMAXだから中位から高位に入るくらいか。それでも広大な空間を感じる。これがいっぱいになるなんて想像が出来ないな。


 バタバタと実験に入ったから腹の減りを感じる。一段落したので朝食にするか、もう昼にかかりそうだ。外は曇天、雨が降り出しそうな天気だ。そういえば今日はノエルが顔を見せていない。いつもならストーキングに余念がないに、どうしたんだろう。また料理でもしてるのか?


 厨房に顔を出すも誰もいない。

 寝室にもいない。

 書庫に戻ってもいない。

 廊下を歩き回ってもいない。

 魔王の謁見の間にもいない。


 動悸が早くなる。こんなに焦燥に駆られる理由が思い当たらない。一体どこへ行ったんだ?いつの間にか走りながら探している。あと行っていないのは・・・。ノエルの同一個体がいた所か!


「ノエル?いるのか?」


 薄暗く培養槽だけが薄ぼんやりと緑色に光っている光景は背筋が寒くなる、中に浮かんでいる個体が皆こっちを見ているような錯覚を覚える。ガタッと奥の方で音が聞こえる、現在この城には俺とノエルしかいない。音を出す者はノエルと考えていいだろう。それは分かっているのに何故か足が踏み出せない。


「ノエルか?」


 声をかけると奥からゆっくりと歩み出る人影がある。それは紛れもなくノエルだった。俺はホッと胸をなで下ろす。


「そんなところで何をしてるんだ?探したじゃないか。」

「・・・い、いぃ、いい・・。」

「ん?どうした?」


 歩く姿がガクガクと不自然な動きだ、呂律も回っていない?


「イマまデ・・アリあリ・・・がとトト・・ござイ・・・ぅウぅ。」

「お、おい・・・ノエル?」


 それだけ言うと前のめりに手を付くこともせずに顔から倒れるように突っ伏した。慌てて駆け寄るが得に怪我なんかはしていないようだ。


「おい!しっかりしろ!大丈夫か!?」


 出来るだけ頭は揺らさないように声をかける。しばらく声をかけるとゆっくりと目を開ける。


「申し訳ありません、魔王様。取り乱しました。」

「そうか?大丈夫なのか?」

「はい、それよりお知らせしておかなければならないことがあります。」


 ビキビキビキビキビキビキ!!


 何か大きなものにヒビが入るような音がしたかと思うと、すぐに弾けるような音が響き渡る。


「魔王様、勇者が侵入しました。」


 ノエルが淡々と告げるのは、死の宣告と同義の言葉だった。



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