序章:ここはどこ?010
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ガラガラと荷台に載せられて様々な武器が持って来てくれたはいいが、全て髑髏や凶悪そうな角だったり完全悪役の武器が並んでいた。きっと威力もえげつないんだろうな。到底俺には使いこなせそうにない、今ですら釘バットがせいぜいなんだしね。そう思ってバット・・もとい棍棒っぽいのを探すがこれまたえげつない形をしたのしかない。棍棒の先が8つに分かれていてさらに返しの付いたトゲが標準装備だ。なにこれ?釘バットの最上位って感じだ。
ダグザの棍棒レプリカ:希少級。先端の八つ裂き瘤であらゆるものを粉砕し、根元で殴打すれば死者も飛び起きるほどの衝撃を与える。武器の中でも超重量を誇り使いこなせるものはいないと言われている。レプリカだがその凶悪な外見から威圧の意味で取引されることがある。
鑑定先生によると使いこなせる者はいないそうだ。見た目だけで俺の倍くらいのデカさだ。こんなの棍棒じゃないやい。丸太のほうがまだ可愛げがある。
剣にしろ槍にしろ、魔王っぽいのばっかりだ。ノエルの趣味なんだろうけど、俺はこう魔王っぽいのより勇者っぽいのが好きなんだけどな。ニコニコしてるノエルにそれを言えるわけもなく持ってきてくれた中から選ぶことにする。
「全部、希少級って出るけどどのくらい凄いものなんだ?」
「武器の等級ですが、神話級・伝説級・希少級・特級・上級・一級となります。さらに上位に創世級があると言われていますが、それこそ伝承によるもので真偽は定かではないです。」
「じゃぁここにあるのは等級から数えると上から3番目ってことか、かなり凄いんじゃないか?」
「ふふ、半数以上が希少級となります。これほどの武器を一同に返せば世界が取れるかもしれないですね。希少級から上級までの武器をお持ちしていますので。」
「それほどなのか、レプリカが多くてもそれだけの価値とは・・・。」
「とはいえ、レプリカです。元魔王さまも本物を全て持っていたわけではありませんが、この中の何本かは本物をお持ちです。使いこなす部下もいましたので元魔王様がいる限り挑むのはオススメしません。」
「どこにいるかもわからない奴に挑んだりしないさ。とりあえずの敵は勇者ってことだしね。」
「では、心ゆくまでお選びください。獲物は生かさず殺さず保存しておきます。」
「う、うむ。」
笑顔でとんでもなく怖いこと言いなさる、この娘さん。さて、武器だけど・・・実際、武器なんて使ったことないんだよな。さっきの棍棒は持てもしないから却下だけど。集められた武器は凶悪そうで無駄に装飾が多い、正直振り回したら自分に刺とか刺さりそうなんだよな。
しばらく見て回って手にしたのは真っ黒なハルバートと呼ばれるものだった。俺の記憶では刃の部分は柄の先だけで先端には円錐状のニードルが付いてる2-2.5mほどの槍だったと思うがこれはニードル部分はそのままだが斧の刃にあたる部分が異常に柄の方に長い柄の2/3ほどが刃という物だ。一般のハルバート自体は儀礼用としても用いられる為、装飾が施されていることが多いが、これには刃の側面に蛇の装飾が入っている程度だ。これまで見てきた物に比べると質素と言ってもいいだろう。
だが、俺はこれが気に入った。やっぱりシンプルイズベストだよな。ちょっと形は変わっているが、これまで見たのはちょっとじゃなかったからな。うん、これに決めた!
「ノエル、これにするよ。」
「それ、ですか?ロッカク様。」
ちょっと意外そうに残念そうに答える。何、何か問題でも?
「どうした?」
「いえ、それを選ぶとは思いもよりませんでした。」
「どういう意味?」
「いえ、城内の武器庫からロッカク様に似合うような武器を選んで来たんですが、それは色だけで選んでしまったものなので。」
「色だけ?あぁ、真っ黒だもんな。」
「闇魔法に才がおありでしたので。」
「それで黒か、安直だが嫌いじゃないよ。うん、むしろこれを持ってきてくれて良かった。持ってみると手にも馴染む感じがする。」
「そうですか?気に入って頂ければ嬉しいですが、それは希少級ではなく特級に近い上級の物ですがよろしかったですか?」
そうなのか?あんまりその辺りは気にしてなかったが、使いやすそうなのがいいだろう。戦いにくいものだと意味がない、実用一番だ。とはいえ、鑑定してみるか。
無名:上級。突く・斬るに特化したハルバートに類似する槍。ハルバートの特徴である引っ掛けることを捨て、刃を伸ばすことで切断するということに関してハルバートより数弾優れている。ただ、刃が伸びたことで重量も増加しており、使いこなすには相当の筋力が必要。闇属性を纏っており、闇属性の使い手と相性がいい。
「どうやら、俺と相性がいいらしい。やはりこれで正解のようだ。」
「ふふ、ようやく棍棒からの卒業ですね。」
「む、そうだな。釘バットなんて世紀末だけで十分だ。あのまま釘バットだと俺もモヒカンになってしまう。」
「???」
「ん、独り言だよ。」
「では、今日の獲物をお持ちします。」
そうして、試し斬りが行われながら夜が更けていくのであった。
書庫に篭って魔法の研究を行っている。名付けを行って3日経っている。どうも独りでいるのにノエルに見られている気がする。前はそんなことなかったのに。
「ノエル」
ボソッと呼んでみる。・・・そうだよね、いるわけないよね。ホッと胸を撫で下ろす。
「傍におりますよ。」
「うわぁぁあ!」
「うふふ。」
時間差で安堵した俺の耳元で声かけやがった!ちょっとストーカーっぽいぞ。しかも俺に気配が分かるってことは隠す気もないってことじゃん。なんなのもう。
「あ~・・いつから?」
「いつ、というのは?」
「いつから見ていた?」
「それでしたら、3日前の正午ごろからですが。」
名づけてからずっとかよ!休む間ないな!そしてめっちゃいい笑顔してるし!別人具合が酷すぎて俺対応出来ないぞ。
「あぁ、その、見るのはいいけど、ちゃんと休まないだな。勇者が来た時万全で迎え撃てないだろ。」
「大丈夫です。いつもお側で休んでおりますので。」
「お側で休んでる?ちなみにそれはどこ・・・かな?」
「ロッカク様の天蓋の上だったり、ベットの下だったりです。」
「・・・・・・・・。」
「どうされました?」
「以後、禁止な。」
「えっ!?でもそれだと警護が出来ません!副官としてそれは認められません。」
「俺の安眠が妨げられるだろう!」
「大丈夫です!寝ている間にロッカク様が気づいたことは悲しいほどございません!」
「ぐぬぬ!」
「それに賊が寝所に入ってこないとも限りません、そうなれば無防備なロッカク様に防ぐ手立てはありません。やはり私が護衛する方が確実です。」
「ぐぬぬぬ。」
「そういうわけですので、添い寝・・・護衛は私が引き続き行います、では。」
「おい!今、添い寝って・・・いない!」
なんだよ、美少女に翻弄される爺って格好悪すぎるだろ。はぁ。
気を取り直して魔法の研究を行う訳だが、魔法の修行ではなく研究と言ったのには理由がある。これまで魔法を使いこなそうとイメージを詠唱に直していたが、ノエルと会話している時にイメージをそのまま投影できるのではないかということに気付き実践してみると思いの他、上手くいくことがわかった。ただ、ノエルも詠唱をしないと魔法は使えないということでイメージの方法に問題があるんだろうという結論に至った。より具体的に行う必要が出てくるということだ。それを補助するのがイメージを言葉に直した詠唱ってことだが、理科や物理、数学の知識があればより正確にイメージすることが可能となった。
所謂、本質の理解ということだ。そしてそれを起こす力をマナというわけで、そうなると可能性が広がってきたように感じて没頭しているというわけだ。ここのところ、魔物も武器の無名を使ってサクっと倒してすぐに魔法の研究に入ることが多くてノエルともあまり会話が出来ていなかった。それがさっきのやり取りになったのだろう。
「でも、時間ないしな。早く物にしないと。」
ノエルが言っていたユニーク魔法っていうのは二つ以上の基本属性の魔法を組み合わせたり、理解を深めて行使することで起こることだろうと推測される。例えば水という物質は温度が低くなるほど分子の振動が小さくなる。そして0℃以下(1気圧下)になると、運動するための熱エネルギーが極端に低く、水分子は動きをとめて互いに結合し氷を形成する。これは小学校の理科の授業でやったことだが、これを知っているというだけで魔法の効果を大幅に変えることが出来る。というか出来た。分子の振動をマナで抑制し結合させることで強制的に氷を作り出すことが出来た。これは俺の中で大きな発見だった。そしてマナというものの可能性を広げることになる。
取り掛かったのは闇魔法の改良だった。闇魔法は視界を奪ったり、幻覚を見せたりするというものだったが、その中でも目を引いたのが影の中に亜空間を作り出し潜む影潜りという魔法だ。これ自体は自分が相手の影に潜むというものだ。だが自分が潜れるなら物も潜れるのでは?という発想に至る。これは異世界ものでは標準装備のアイテムボックス的なやつになり得るんじゃないかと開発を進めているものだ。
「理屈は合ってるはずなんだけど、中々上手くいかないな。」
影という平面が2次元と考えればその中に潜むということは自分を2次元に変換しているということ。なら任意の物質を2次元に変換する、もしくは「影の中」が3次元であるとその中で時間が流れているならば4次元であると考えればいいのか。いやそもそも3次元に時間が流れているから4次元ってわけでもない。
だが、時間と過程して研究するしかない。ここにはそれを調べる書物もネットもない。結局は試行錯誤しかない。これまで影の中に物を入れることには成功しているが・・・取り出すことが出来ていない。入れたら入れっぱなしだ。そんな穴の空いた袋なんて使い物にならない。っていうか、そんなところに自分が入っているって考えるのも怖い。
「くそっ手詰まりか。あ~。」
書庫の机に突っ伏しながら、次は光属性の魔法を研究しなければと考えながら夢の世界へ旅立つのだった。




