【J】宿泊地点
とりあえず方向を把握したいというのにメイがうるさい。結果、再び捕獲してノアに押し付けると、少し離れた位置に見える遺跡のシルエットと日の傾き具合に目を走らせる。とりあえず屋根があれば騒ぎも減るだろう。来る途中に休憩した掘立て小屋を目指すことにする。
「おい、休憩地を目指す。付いて来い。」
「なるほど……でも、ご飯は期待できないな~、切ない~。」
「ノア、泣いちゃダメー。ジェイドが泣かしたー!」
「……さっさと来い。」
落ち込んだふりをするノアとそれをノリノリで慰めて叫ぶメイをげんなりと見つめ、さっさと歩き出す。騒がしく付いて来るのを背中で聞きながら相性が良いコンビは性質が悪いとため息をついた。このコンビが酒場に行くたびに騒ぐのか……いや、多少は商売だということを頭の隅におくだろうか。
期待はできないだろうな。数瞬で都合の良い希望的観測を捨てる。その方が余裕もできるというものだ。
「ねーねー、ジェイドー。ねーってばー。」
「……なんだ。」
「ジェイドとノアは仲良しなのー?」
「あ?」
突拍子のない言葉に思わず足を止めて振り向いた。メイは小首を傾げて目の高さに浮いている。ノアも意外だったらしくきょとんとしていた。
「だってー、お迎えに2人で来たしー、ジェイドの突込みが速いしー。」
「逢って数時間で、ステラに言われてそうなっただけだ。」
「ふぅん……これぞ運命の糸だね!」
「わけわかんねぇ気色悪いこと言ってんじゃねぇ、この浮かれチビ!!」
ステラの影響なんだろうが思考回路がどこか壊れている。何をどうやったら野郎同士で運命の糸なんて発想になるんだ。しかもこの得体知れない奴と。
怒りがエネルギーに変換されたのか休憩地には予想よりも早く着いた。当然、2人のブーイングはうるさかったが。
掘立て小屋の中は古いテーブル椅子がある休憩スペースと一応煮炊きができるスペース。奥に家畜用なのか、簡易寝床用なのか干し草がわっさりと腰の高さまでに積まれた小部屋がある。メイは干し草の山が気に入ったのかキャッキャと遊んでいる。誘われてノアも参加しだしたのは気のせいと思うことにして一度小屋を出た。こういった休憩地には建物の裏手に薪が備蓄されている。適当に数本掴んで中へ戻った。
相変わらず戯れている2人を無視して煮炊きスペースを物色して鍋を引っ張り出す。贅沢言うなと言ったものの、温かいものは食べたい。騎士団で携帯食を楽しもうと工夫したことを思い出し作ろうとしたのだが問題は水。
昼間ノアに渡した魔導具はまだあるが、全部使いきることには抵抗がある。眉間に皺を寄せて荷物から2回り大きい球体を取り出した。行く間際にフェイトが試作品として押し付けてきたものだ。試してみることにした。
「あれ、団長何してるんですかー?」
「ジェイドー?」
バシャン!
水が満ちたと思ったら破裂した。奇跡的に鍋に水は満たされたが、こっちはずぶ濡れだ。奇妙な沈黙が落ちる。強面が料理しようとしているという違和感か、またはいきなりずぶ濡れになって怒りに体を震わせていることに対してか。
「……フェイト、帰ったら覚えてろよ……。」
「ジェイド、水も滴るいい男……?」
「てめぇら、そっちに、行ってろ。」
その後、干し肉が軟らかくなるまで煮た中に、小麦主体のブロックを放り込み作った簡易パン粥は割と良い評価だったことがせめてもの慰めだ。




