仮面舞踏会
王宮で開かれるパーティーは夕刻からと招待状には書かれていた。僕は着替えて、従僕が差し出した仮面を受け取る。装飾過多なその仮面を見て、「それにしても」と呆れた声で呟いた。
「仮面舞踏会とは、いったいどういうつもりだろうね?」
ルカーシュ国王のただの趣味というわけでもないだろうに。何かの思惑か算段があると見て間違いないだろう。仮面舞踏会ともなれば、参加者の素性は伏せられる。誰が参加していても不思議ではなく、それを追及する事も無粋となるわけだ。
国王が暗殺者を一人紛れ込ませていたとしても分からない。もっとも、国王主催のパーティーで帝国の使者である僕が殺されたとなれば大事になる。当然、あのカールが黙っているわけもなく、今度こそこの王国を蹂躙し尽くすだろう。それは、間違いない。
これは僕らの友情が絡んだ問題ではなく、国同士の面子と対面の問題だ。僕は帝国の公爵で、帝国を代表してこの国に来訪している。その僕に万が一の事があれば、それは十分に戦端を開く理由になり得るということだ。それをルカーシュ国王が理解していないはずがない。いくら愚かだと言っても、そんな事を企てれば、周りの側近が止めるはずだ。その側近の忠言にすら耳を傾けない暴君である可能性もあるけど。
ただ、殺しはしなくても、嫌がらせの一つや二つくらいは用意しているかもしれない。僕に対してではなく、オフェリアに対して。あるいは、僕らがまだつかめていない情報があるのか。まあ、なんにせよ、ルカーシュ国王とはこれが初対面となるのだ。
僕が考え込んでいると、フェリックスが側にやってくる。
「……懸念があるようですね」
「そりゃね。思いっきり怪しいだろう?」
「ええ、それは。護衛の者を増やしましょうか?」
「いいや……どのみち、王宮内に護衛は入れないだろ?」
護衛騎士のフェリックスも随行を許されるのは王宮に入る前までだ。馬車で待機してもらう事になっている。王宮内に入れば僕も武器類は持ち込めない。唯一同行を許可されているのは、オフェリアの世話をする侍女のレーネだけだ。それも、控え室からは出られないだろう。
「まあ、行ってみれば分かるだろう? せっかく招待されたのだから、せいぜい楽しませてもらうさ」
僕は仮面をフェリックスに見せて笑う。
「十分にご用心を。何かあれば、すぐに駆けつけます」
「簡単に言うけれど、王宮の護衛に止められるだろう?」
「突破しますので、ご心配なく」
あっさり答えて、フェリックスは僕の手から取った仮面を後ろで結んでくれた。
「君って本当、格好いいな。敵わないよ」
「主人の身を護るのが務めてですから」
ほら、そういう台詞がスルッと出てくるところが格好いいって言うんだ。
マントを羽織って部屋を出て、一階のホールへと向かう。階段を下りたところで待っていると、「イグナーツ様、お待たせしてごめんなさい!」とオフェリアの声が聞こえた。レーネを伴って急ぎ足で階段を下りてくる彼女に、僕はつい見とれてしまう。
黒い髪を結って一房だけ肩に垂らす髪型だった。レーネが飛び切り手をかけた事は一目見ただけでも分かる。急遽用意したドレスも、最初から彼女のためにあつらえたようにピッタリで、耳には僕が贈ったイヤリングが揺れていた。
急いでいた彼女は、階段の最後の段で躓いてよろめいていた。彼女から目を離せずバカみたいに突っ立っていた僕は、ハッとして咄嗟に両手を出す。腕に収まった彼女を無意識に抱き締めてしまっていた。
僕は「うーん」と、小さな声で唸る。
「どうしよう……パーティーに行くのを急にやめたくなってきた」
「あの……私がどこかおかしいからでしょうか? もしかして……連れていくのが恥ずかしいくらい……」
彼女が僕の腕の中でアワアワしている。頬が赤くなっていて、カールした髪を恥ずかしそうにギュッとつかんでいた。
その真反対だ。かわいくて、君を大勢の前に晒すのが嫌なんだ。僕の妻がこんなに素敵だという事は、僕だけの秘密にしておきたいじゃないか!
モジモジして髪をいじっているオフェリアの手を取ると、手袋をしたその手にそっと口づけした。その途端に、オフェリアの頬がいっそうバラ色に染まる。
「今日が仮面舞踏会でよかったよ。そうじゃなかったら、僕は君に近付く男をずっと睨み付けていなくちゃいけないところだった。きっと、帝国の公爵はものすごく嫉妬深くて独占欲丸出しの狭量な男だと、王国中に噂が広まるぞ」
僕は溜息を吐いて、ニコッと笑って見せる。オフェリアは僕を見上げて、パチッと瞬きした。
コホンッと咳払いしたのは、後ろに控えているレーネだ。
「姫様、公爵閣下はからかっておいでなのですよ。お気になさる必要はありません」
「いやだなぁ。からかうだなんて! 本心だとも。つまり、ええっと……君を見つめていられる特権は僕だけのものにしておきたいって事だよ」
僕は笑って彼女を離し、腕を差し出す。その腕に手を添えたオフェリアは、ようやく伝わったのか、視線を彷徨わせていた。首も耳も薄ら赤い。僕はそこにあまねく口づけをしたくなる衝動をグッと堪えるしかなかった。人目がなければ、きっとそうしていただろう。
「さて、行こうか。オフェリア」
「は、はいっ!」
◇◇◇
王宮に到着すると、僕らは大広間に通される。すでに多くの客人たちが集まっていて、賑やかな声が廊下にまで聞こえていた。仮面舞踏会ということもあって、普段のパーティーよりは格式張っておらず、その分、客人たちの気も緩みがちなのだろう。楽団もテンポの速いダンス曲を演奏していて、すでにホールの中央では輪になった人達がダンスに興じていた。
「余計な紹介がない分は気が楽だな」
僕は彼女と一緒に大広間を見回して呟いた。それに、オフェリアも変に注目されなくてすむ。そこまで考慮して仮面舞踏会を開催するほど、ルカーシュ国王が気の利く人物だとは思えないけど。
僕の腕に添えられたオフェリアの手に少し力が入っていた。
「緊張する?」
「はい……少し……王国にいた頃、王宮で開催されるパーティーにはあまり出た事がないのです。いい顔をされなくて……」
オフェリアは小さな声で答え、視線を下げる。彼女が身につけている仮面も、僕とお揃いのものだ。そうか。彼女は祖国でパーティーを楽しむといった事は、あまり経験がないのだろう。大勢の目に晒されるのは、苦痛でしかなかったのかもしれない。
その時の事を思い出しているのか、彼女の表情が曇って見えた。
僕は彼女の頬に手を添えて、俯くその顔を上げさせる。見上げる瞳にはまだ不安の色が残っていた。
「大丈夫。今日は僕が一緒だろう? 君につまらない思いなんてさせるもんか。それに、今日の君はこの会場にいるどの女性よりも美しい。それは僕が保証するよ」
僕を見つめてくる仮面越しの瞳が潤んでいて、大広間の眩しいほどの灯りの中で輝いていた。
「イグナーツ様は……お世辞がお上手です……」
恥じらうように、オフェリアが視線を逸らす。
「本当の事だよ。だから、自信を持って。君は僕だけを見ていればいいんだ」
僕は彼女を誘って移動し、ダンスの輪に加わる。
お辞儀をしてから、彼女の手を取り、反対の手を彼女の腰に添えて一歩寄る。
オフェリアは緊張しながらも、僕を見上げてくる。
だけど、この国のダンスはまだ慣れていなくて、躓きそうになるのは僕の方だった。そのたびに咳払いで誤魔化していると、オフェリアが「フフッ」と笑う。
おかげで、緊張も解けたようで、動きが滑らかになっていた。
「情けないな……格好をつけようとしたのに、君の方がダンスがずっと上手なんだから。君にリードしてもらわなきゃならない」
「練習した時よりずっと、お上手になっていますよ?」
オフェリアは微笑んで、僕をキラキラした目で見つめてくる。
うぐっ、かわいいな……。
おかげで、僕の方がドキドキしてしまって、足運びがもたつきそうになる。
おかしいな。これでもダンスはわりと得意だったはずなんだけど。
マルク王国のダンスと、帝国のダンスは若干違うから、招待状が届いた後にオフェリアに練習に付き合ってもらったのだ。俄仕込みだけれど、なんとか覚えたと思ったのに。
仮面舞踏会という事もあり、みんな好きに踊っているから、僕らに注目している人はいない。おかげで、僕の下手なダンスもあまり目立っていないようだ。だから、僕は気楽に楽しむ事にした。
同じ相手と何度も踊らないとか、そんなルールもあまり気にしてないようだ。だから、オフェリアと思う存分ダンスを楽しんだ後、僕らはホールの端に移動する。椅子に座って談笑しているのは、年配の人達だ。
従僕が配っていたお酒のグラスを二つ取って、そのうちの一つをオフェリアに渡す。
オフェリアはグラスに口をつけてコクッと一口飲んでから、ふっと息を吐いていた。
「本当は、今日のパーティーが不安で仕方なかったんです。王宮に戻るのも久し振りで……」
オフェリアは傷を隠すような微笑みを浮かべて、グラスを見つめていた。
「でも……今日はとても楽しいです。イグナーツ様が一緒だから、何も怖くないんです」
「そう? それはよかったよ。僕でも騎士役が務まったかな?」
僕は彼女の頭を少し引き寄せて、艶々の黒髪を梳くように指を滑らせる。
「もちろんです! いつも、こんな私を守ってくださるから……」
「当たり前じゃないか。君は僕にとってとっても大事な人なんだから」
笑って答えると、オフェリアは僕の袖をギュッとつかむ。
「イグナーツ様……私……あの……私…………」
言い淀む彼女の顔が真っ赤になっていた。僕が顔を覗き込むと、彼女がパッと視線を逸らす。
「オフェリア?」
「あの……私……イグナーツ様に…………」
えっ、な、なんだろう。改まったように言われると、緊張してしまう。
僕がドキドキしながら彼女の言葉の続きを待っていると、近付いてくる人物がいた。
「クラッセン公爵とお見受けしたが、間違いないだろうか?」
声をかけられた僕とオフェリアが振り返ると、一際華美な衣装を着た男が女性を伴って立っていた。少し離れた所には数人の騎士が控えている。仮面を付けているけれど、誰かは問わなくても分かる気がした。オフェリアも顔を強ばらせて一歩寄る。僕はさりげなく彼女の腰に腕を回して引き寄せながら、一礼した。
「これは、ルカーシュ国王陛下。お初にお目に掛かります。ご挨拶が遅れましたが、ご招待いただき心より感謝いたします」
「堅苦しい挨拶は無用だ。そなたは我が義妹の夫君。私にとっては義弟も同様だろう。義妹のオフェリアは母は違うが、半分は王家の血を引いているのだ。帝国と我が国の友好の証として、嫁がせる事になった時にはいささか不安もあったが……どうやらうまくやっているようで安心したよ。不出来な義妹が君に迷惑をかけてはいないかと心配していたのだ。帝国の習慣に馴染めず、恥を掻かせているのではないかと案じていたからね」
鷹揚な態度を見せながらも、ルカーシュ国王は冷たさを含む視線をオフェリアにチラッと向ける。
オフェリアは下を向いたまま、その言葉にビクッとしていた。僕は彼女の腰に回した腕に、ギュッと力を込める。大丈夫という合図の代わりに。
「とんでもない。彼女の美しさに一目で心を奪われてしまったのは、僕の方なのです。この結婚を神に感謝してもしきれないくらいですよ。この縁を結んでくださった陛下には感謝しかありません」
にこやかに答えると、ルカーシュ国王は鼻白むような表情を一瞬見せてから、「それは結構な事だ」と笑った。
「オフェリアよ、お前も王国の面汚しとならないようにせいぜい、気をつける事だ。自分の役割くらいは分かっているだろうからな」
ルカーシュ国王が一瞥を向けて、蔑みの態度を隠そうともせずに言い捨てる。それにオフェリアが答える前に、僕は「陛下」と彼の言葉を遮った。
「そのご心配は無用かと。オフェリアは素晴らしい女性です。僕にはもったいないほどですよ」
ニコッと微笑んでおくと、ルカーシュ国王は面白くなさそうな表情を見せる。
「そうか。それならばいいが。ああ、そうだ。公爵にも紹介しておこう。いずれ正式に公表する事になるが……余の妃となるブノア王国のフォスティーヌ姫だ」
ルカーシュ国王は、伴っていた豊かな赤髪の女性の肩を抱き寄せる。その目が狡猾な光を宿していた。
ブノア王国…………。
さすがにこれには虚を突かれて、女性に目を向ける。
「帝国のクラッセン公爵様にご挨拶申し上げます。フォスティーヌ=ブノアと申します。公爵様のお噂は以前より聞き及んでおりました。若く、知略に優れた美男子という評判でしたけれど、評判通りの方ですのね。お会いできて光栄ですわ。以後、お見知りおきを」
胸に手を当てた女性は、優雅に微笑む。
オフェリアに挨拶をしなかったのは、わざとだろう。オフェリアはそのような扱いは慣れているとばかりに目を伏せただけだ。ああ、この女性は…………嫌いだな。
僕は不快感を隠して、笑みを作った。
「こちらこそ、お会いできて光栄です。フォスティーヌ姫。ご婚約お祝い申し上げます」
「ええ、ありがとうございます」
「では、また改めて会談の場を設けさせてもらおう。今日は気楽に楽しんでくれ」
ルカーシュ国王はそう言うと、フォスティーヌ姫を伴って離れる。
「どういう事だろうね……」
僕は思わず眉間に皺を寄せて呟いた。オフェリアが不安げな瞳を僕に向ける。
「私も驚きました。ブノア王国の姫との婚約など、一度も聞いた事がなかったので」
「ということは、前から決まっていた事じゃない?」
「はい。少なくとも、私が帝国に嫁ぐ事になった時には、お義兄様の結婚相手はまだ決まっていなかったはずです。といっても……私が知らなかっただけかもしれません。父上とお義兄様との間では話が進んでいたのかも」
ブノア王国は、マルク王国と同様に帝国に領土を接している。
マルク王国は先の帝国との戦争で、他国とも連合する動きを見せていた。けれど、実際には他国は軍を動かさず、マルク王国は孤立無援の状態で帝国と相対する事になり、それが敗因ともなった。
それがなぜ、急にマルク王国とブノア王国が手を結ぶ事に?
ルカーシュ国王と、ブノア王国のフォスティーヌ姫との結婚は、当然政略結婚だ。個人的な愛情で結ばれた関係ではないだろう。だとしたら、何かの思惑が絡んでいるはず。
「これは……すぐにでもゲーラー卿に知らせた方がいいかもな」
ゲーラー卿からも、ルカーシュ国王の婚約の話は聞いていない。と言うことは、まだゲーラー卿の耳には入っていないということだ。けれど、ルカーシュ国王は僕らを王宮に招き、まだ公式に発表されていない婚約の事を敢えて明かした。だとしたら、その意図はなんだ?
僕は難しい顔で考え込んでしまう。あのルカーシュ国王の意図がはっきりと読めないのが気持ち悪い。
ゲーラー卿が王都にいれば、すぐにでも相談できただろうけれど。そういうわけにもいかない。
ただ、マルク王国とブノア王国が手を結ぶのは、帝国にとってはあまり歓迎された事ではない。なにせ、この両国に挟まれる形で帝国は存在している。となれば、同時に攻め込まれれば帝国は兵力を分散させなければならず、かなり苦しい立場に追いやられるだろう。
先の戦いで、一番懸念されていた事がそれだった。だが、実際には軍を動かしたのはマルク王国のみで、ブノア王国は静観していた。カールやゲーラー卿は周辺国がマルク王国の動きに呼応しないように手を打っていただろう。例えブノア王国が参戦していたとしても、カールなら負けはしない。けれど、かなり厳しい戦いになっていたはずだ。
ブノア王国は動かなかったのか、動けなかったのか……。
マルク王国とブノア王国の間で何かしらの協定が結ばれていたとしてだ。それなのに、ブノア王国はマルク王国に加担しなかったとなれば、マルク王国にとってブノア王国は裏切り者という事になる。帝国に敗戦した今になって手を結ぼうと思うだろうか?
信用できない国だと警戒する方が当然ではないだろうか。
あるいは、敗戦したからこそ手を結ぼうと考えた? マルク王国を属国化した帝国が、次に矛先を向けるのは自国だと考えたブノア王国側が、マルク王国に対帝国の軍事協定を打診したとか?
だが、そんな動きを帝国が見すごすはずがない。マルク王国は帝国の属国となったのだ。勝手に他国と軍事協定は結べない。そんな事をすれば、帝国は容赦なく今の国王の首をすげ替える。
帝国に楯突く王を、属国の国王として据えておくほど寛容でも、甘くもないからだ。
言ってしまえば、ルカーシュ国王がマルク王国の国王でいられるのは、前国王が帝国に恭順の意を示したからだ。当然、ルカーシュもその方針を受け継ぐはず……と、思っていたけれど、帝国と王国の間の講和条約は前国王とカールとの間で結ばれたものだ。
ルカーシュ国王はそれを破棄するつもりでいる?
「イグナーツ様……イグナーツ様……」
何度も呼ばれている事に気付いて、僕はハッとする。そうだ。オフェリアがいるのに、自分の思考に浸っていた。
「ああ、ごめん……気になってね」
「…………ブノア王国とマルク王国は、帝国に敵対するつもりなのでしょうか?」
オフェリアは周りに聞こえないように声を小さくする。どうやら、彼女も義兄とブノア王国の姫との結婚が、対帝国のためのものだと気付いたようだ。やっぱり、オフェリアは賢い。本当に得がたい人だよ。なんて、のろけている場合でもない。
「ああ、たぶんね。問題はなぜ、今、僕らにそれを明かしたかという事だ」
いずれ公表されるから、先に知らせておいても問題ないと思ったのか。あるいは、牽制?
「ごめん、オフェリア……ちょっと、君のレーネを借りていいかな?」
「あ、はい。それはもちろん!」
オフェリアはコクッと頷く。
「それなら、ちょっとこの場を外させてもらうよ」
僕は彼女の髪飾りを直す振りをして、耳元に顔を寄せる。
「…………手紙を届けたいんだ。ゲーラー卿に早めに知らせておいたほうがいいと思ってね」
僕は囁くとオフェリアは真剣な顔になる。その頬に思わず軽いキスをしてから、後ろに下がった。
「大丈夫。君は心配しないで楽しんでいて。すぐに戻ってくるから。あっ、でも……変な男に絡まれないようにね。大広間から出ないで」
「大丈夫です。そこまでうっかりしていません!」
オフェリアは顔を赤くして小さな声で答える。僕は笑って頬を撫でてから、彼女の側を離れた。
この時の判断を、僕はすぐに後悔する事になる。
一時でも、彼女から離れるべきではなかったのだと――。




