第99話 洋子、メービーレーンを訪れる
おばあさんはしばらく黒猫とドラちゃんとお喋りをすると、黒猫と一緒にドラちゃんの背に乗り込み、メービーレーンへと飛び立った。
ドラちゃんは大きく羽ばたいて上昇すると、気流をつかまえて滑空し、真っ直ぐにメービーレーンへと向かった。
その時、おばあさんは気になることをドラちゃんに尋ねた。
「そういえば、ドラちゃんは寿命があるのかしら」
それを聞いたドラちゃんは首を振り向かせて得意げに答えた。
「わたしの寿命は推定1000年です。というより、誰かに倒されない限り死なないと言っても過言ではないでしょう!」
「まぁ、それは安心したわ。でも猫ちゃんには寿命があるなんて不公平ね」
「寿命? 冥界族の猫さんに?」
「ええ、そうみたいなの」
その会話を聞いていた黒猫は少し慌てるようにおばあさんに話しかけた。
「洋子殿。ちなみにドラゴン殿の明るく楽天的な性格は、長い寿命を生きるために制作チームがデザインしたとの事です」
それを聞いたおばあさんは納得したように答えた。
「そうだったのね。確かにクヨクヨした性格じゃ長く生きるのは大変よね。よかったわねドラちゃん」
おばあさんが笑顔でドラちゃんに言うと、ドラちゃんは少し良くわからなかったが笑顔で答えた。
「はい、洋子様が良かったと言うのなら、それは間違いなく良いことです!」
「うふふ。ドラちゃんも相変わらずね」
おばあさんたちは楽しくお喋りをしながらメービーレーンへと向かった。
ー メービーレーン ー
おばあさんたちはメービーレーン地区に到着すると、ドラちゃんはイケメンの姿に変身し、黒猫は猫の姿のままおばあさんにメービーレーンの説明をした。
「洋子殿。ここメービーレーンは岩山に囲まれた小さいエリアで、ほとんどのプレイヤーがあそこにあるゲームセンターを目当にやってきます」
「そうなのね。そういえば寿命が止まる箱はゲームの景品って言っていたわよね。他にも景品があるのかしら」
「はい。レアな武器や防具、特殊なアイテム、さらには玩具やぬいぐるみなど様々な物がコインと交換できます」
「あら、なんだか現実世界のゲームセンターと似ているわね。昔、兄と一緒にメダルゲームをしたことがあるわ。なんだか面白そうね。うふふ」
「お喜びいただけて何よりです。しかし、我のために洋子殿の貴重なお時間をお使い頂くのは気が引けますゆえ、洋子殿が退屈と思われたなら……」
黒猫がそこまで言うと、おばあさんは黒猫を優しく抱えあげて言った。
「猫ちゃん、またそんな事言って。今日は一緒にゲームを楽しみましょう。さぁ、いきますよ!」
おばあさんは黒猫を抱きかかえながらドラちゃんと一緒にゲームセンターへと向かった。
◆
おばあさんたちがゲームセンターに入ると、案内ロボットがやってきてゲームセンターの説明をはじめた。
「こんにちは。ワタシは案内ロボットです。みなさんは初めてですか?」
それを聞いたおばあさんは笑顔で答えた。
「はい。よろしくおねがいしますね」
すると案内ロボットはおばあさんに案内をはじめた。
「こちらのゲームセンターでは、お1人様につき1日50コインのみお貸し致します。お客様がお連れになられている方々は、ご眷属様でしょうか」
「ええ。お友達だけれども、そうなるわね」
「でしたらプレイヤー様はお1人ですので、こちら50コインお貸し致します。貸出料は50コインで500プクナになります」
案内ロボットはそう言うと、カップに入ったコインを50枚差し出した。
「ありがとうございます。じゃあ、はい。500プクナね」
おばあさんは500プクナを支払ってコインを受け取ると、案内ロボットは一礼した。
「ありがとうございました。ゲームはご眷属様もご参加いただけますので、ごゆっくりお楽しみください」
「はい、ありがとうございます」
おばあさんは案内ロボットに頭を下げると、カップに入った50枚のコインを見てつぶやいた。
「1日50枚なのね……。じゃあ、ナミさんはこれを1000枚に……。すごいわね」
するとそれを聞いていたドラちゃんが楽しそうにおばあさんに言った。
「洋子様、大丈夫です! コインが倍になる勝負を5回連続で勝てば1600枚です! 簡単ではありませんか!」
しかし計算が得意な黒猫は説得するようにおばあさんに言った。
「いえ、洋子殿。勝ち負けの確率は1/2。5回連続勝利となれば1/2 ✕ 1/2 ✕ 1/2 ✕ 1/2 ✕ 1/2で1/32。パーセントに直せば僅か約3%です」
ドラちゃんと黒猫の意見を聞いたおばあさんは、否定的な意見の黒猫に尋ねた。
「じゃあ猫ちゃん、どのゲームをやれば勝てそうかしら?」
黒猫はおばあさんの言葉を聞いてゲームセンターを見回した。
すると競馬のコインゲームが目に入った。
「洋子殿。あの『ウマ女子』という競馬のゲームであれば確率計算が容易です。精度の高い予測を致します」
こうしておばあさんたちは「ウマ女子」をプレイすることにした。
◆
♪タータタター、タタタター、タタタター、タタタター……♪
おばあさんたちは「ウマ女子」のコーナーで席につくと、黒猫がオッズ(掛金の倍率。ウマの評価が高いほど少ない倍率になる)を見ながらおばあさんに確率の説明をした。
「洋子殿。このレースは『トカイ・テイオー』の確率が群を抜いております。オッズは2.3倍ですがお勧め致します」
しかし、ドラちゃんは出走馬の名前を見ながら嬉しそうに言った。
「わたしは断然『レオン・リュウホー』です! だってリュウ(龍)ってついてるから絶対強いはず!」
「あら、2人とも違う予想なのね。どうしようかしら」
おばあさんは2人の意見を聞くと、少し考え込んだ。




