第100話 黒猫、アガる
おばあさんは考えた結果、黒猫が勧めた「トカイ・テイオー」とドラちゃんが勧めた「レオン・リュウホー」に単勝(1位を予想する買い方)でコインを5枚ずつ賭けることにした。
おばあさんはゲーム機にコインを投入すると、ドラちゃんは嬉しそうにしながらおばあさんに言った。
「洋子様、わたしの意見を聞いていただきありがとうございます! もしレオン・リュウホーが勝てば、コインは一気に500枚です!」
ドラちゃんがお勧めしたレオン・リュウホーは、高倍率のウマ女子だった。
しかし、黒猫は小さな声でドラちゃんに言った。
「ドラゴン殿。レオン・リュウホーの勝率は過去の戦績から計算すると2%ほど。勝つのは難しいのでは……」
するとドラちゃんは笑顔で答えた。
「だって、洋子様はレアな私を眷属にしてくれたんだもの。その確率は2%って聞いたよ。だから大丈夫だよ」
「……なるほど。確かに洋子様は強運の持ち主。無くはないかも知れぬ……」
「でしょ!」
ドラちゃんは屈託のない笑顔で黒猫に言うと、ゲーム機からアナウンスが流れた。
『ウマ女子、各々ゲートに入りました!』
メダルゲームのウマ女子たちはゲートに入って出走の準備を整えた。
黒猫は少し緊張しながらゲートを見つめると、一斉にゲートが開いてウマ女子たちが一気に飛び出した。
『さぁ、ウマ女子。一斉にスタートしました。一番人気の「トカイ・テイオー」は無難なスタート……』
黒猫はアナウンスを聞きながらトカイ・テイオーを追った。
『おおっと! なんとレオン・リュウホーが前に出ました! 一気に先頭集団へ!』
それを聞いたドラちゃんは嬉しそうに声をあげた。
「がんばれ! そのまま、そのまま! 洋子様のために走って!」
『なんとレオン・リュウホー、レースをリードしています! 予想外の展開!』
ザワザワザワザワ……
ウマ女子をプレイしていたプレイヤーたちは予想外すぎる展開に驚いていたが、黒猫もまた驚いてた。
「な……、なんという展開……。い、いや、しかし、あのウマ女子はドラゴン殿が賭けたウマ女子。共に洋子殿に仕える身として喜ばしいこと……」
しかしその時、突然レオン・リュウホーが失速し始めた。
『おおっと、レオン・リュウホー、失速! 後続集団が追いついて……、追いついて……、集団に飲み込まれたー!』
「「「おおーーー!!」」」
その様子を見ていたプレイヤーたちが盛り上がると、ウマ女子たちの集団は雪崩れ込むように最終コーナに飛び込んだ。
『さぁ、最終コーナーを回りました! 先頭はゴールデンシップ、そしてメグロマックイーンとキタサンフラッグがゴールデンシップを追います!』
するとその時、1頭の鹿毛(茶褐色の毛)の馬が大外から抜け出し、一気に加速した。
『ああっと、大外から矢のように1頭突っ込んでくる! なんとトカイ・テイオーだ! トカイ・テイオーが追い上げる!』
ボワン……
追い上げるトカイ・テイオーを見て興奮した黒猫は、思わず骸骨の姿に戻り、野太い声をあげた。
「トカイ・テイオーがっ!! おおお!!!」
おばあさんとドラちゃんは、握りこぶしをして興奮する黒猫を見て思わず笑みをこぼすと、骸骨になった黒猫はさらに食い入るようにレースを見つめた。
『さぁ、トカイ・テイオーが追い上げる! 先頭のゴールデンシップと距離はもう僅か! 追い上げる! 追い上げる!』
大外から一気に追い上げるトカイ・テイオーの姿を見て、骸骨姿の黒猫は身を乗り出すように応援した。
「行くのだトカイ・テイオー! お主ならやれる! 行くのだ! トカイ・テイオォォォォオオー!!」
「「「わぁぁああ!」」」
このレースに賭けていた他のプレイヤーたちも盛り上がると、トカイ・テイオーはさらに加速して先頭のゴールデンシップに並んだ。
『トカイ・テイオー、ゴールデンシップに並んだー! しかしゴールデンシップも譲らない! トカイ・テイオー、ゴールデンシップ、どちらが先にゴールするのかー!!』
ドドドドドッ!!
『トカイ・テイオー、ゴールデンシップ、ほぼ同時にゴール!! 写真判定です、写真判定となりました!』
骸骨姿の黒猫はアナウンスが言った写真判定の意味が分からず固まった。
「な……。これは……」
するとドラちゃんが黒猫に言った。
「猫さん、きっと1位が微妙だったから画像で判断するんだよ」
「う、うむ。確かにそれは平等で正しい手段……」
「って猫さん、顔色悪いけど大丈夫?」
「わ、我の顔色が? いや頭骨……、か?」
おばあさんはその会話を聞いて骸骨姿の黒猫を覗き込むと、なんと黒猫の骨が赤黒く輝いていた。
「あら猫ちゃん、顔が真っ赤よ!? 大丈夫?」
「も、申し訳ございません洋子殿。我としたことが興奮してしまい……」
するとその時、写真判定の結果がアナウンスされた。
『写真判定が確定しました。1着……』
黒猫はアナウンスを聞くと口をあけて硬直し、耳を澄ませた。
『トカイ・テイオー! 2着、ゴールデンシップ……』
ゴゴゴゴゴゴゴ……
見事予想が的中した黒猫は喜びのあまり体中から禍々しいオーラを吐き出した。
「猫さん! 猫さん!!」
「はっ!」
黒猫はドラちゃんの声で我に返ると、禍々しいオーラをかき消して我に返った。
「ドラゴン殿、申し訳ない。喜びのあまり、思わず暗黒魔法を……」
「ちょっ、猫さん! まぁ、施設内だから皆さんにダメージは与えられないけど、怖いよ猫さん」
「……うむ。反省……、している」
黒猫は反省して元の黒猫の姿に戻ると、おばあさんは黒猫を抱きかかえて黒猫に言った。
「うふふ。でも猫ちゃんのあんな姿が見られて嬉しかったわ。だって猫ちゃん、いつも良い子で少し心配していたんだもの」
「洋子殿……」
黒猫は少し恥ずかしそうに声を漏らすと、おばあさんは優しく黒猫を撫でて地面に降ろした。




