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第9話 ひろし、加勢する

 ー G区画の海岸 ー


 おじいさんたちは大勢の甲冑を身につけたプレイヤーたちと戦っていた。


 アーボンは戦いながらタケチに言った。


「おい、コイツらみんなデッケー刀持ってるぞ! 戦国ヲタクか!? 歩くの遅いくせに攻撃が重い!」


 タケチは片手剣の素早さを活かして攻撃を続けながらアーボンに答えた。


「いえ! あれは戦国オタクではなく源氏の武士を信仰している『ミナモト』という集団です!! あの太刀と甲冑はまずいです!! かなり重くて動きは遅いですが全てに光属性が付与されています!」


「なっ! なんだって!? なんで、そんなヤバい刀を持ってるんだ!?」


「理由はわかりません! ですが、あの甲冑と太刀は修行のようなクエストをクリアしなければ手に入らない物です。あの数で光属性が付与された攻撃を受けたら……!!」


「や、やばいよ、やばいよ!! タケチ、ど、どうしたら!?」


「と、とにかく全力でミナモトを止めましょう!!」


「あ、ああ……、けど、おれらじゃ……」


「アーボンさん! 諦めないでください!! 僕も片手剣であの数を相手にしたら全くダメージが通りません! でも諦めたら……!!」


 するとその時、上空からドラちゃんが降りてきた。


 バサッバサッバサッ……

 ズゥゥン……


 そして砂浜に着地すると、背中からハデスと黒猫が飛び降りた。


 ドラちゃんはそれを確認すると、大きく羽ばたいてまた空へと戻っていった。


 バサッ!!


 アーボンはハデスの姿を見ると安堵したように言った。


「おおー!! ハデス、待ってたぜ! こいつら全員やっちゃって!」


 しかしハデスは少し難しい表情を浮かべてアーボンに答えた。


「アーボン様。残念ながら、彼らの装備は300回も同じボスを討伐するという苦行を経て手に入れた楯無(たてなし)の鎧と鬼切丸(おにきりまる)の太刀。私の闇の属性が通用しないうえに光属性が付与されています」


「なぁっ!!!! それはどういう事なんだハデス!?」


「私の大鎌(おおがま)が闇属性のダメージを与える事ができません。物理ダメージは与えられますが、アーボン様の攻撃力には及ばないかと……」


「……あ! あ、あわわ! ほんとに! ほんとに、やばいよ、やばいよ!」


 するとアーボンは四つん這いになりながら戦っているアカネの元へと走った。


 バタバタバタバタ!


 そしてアカネの元へたどり着くとアカネに叫んだ。


「やばいよ! こいつらの武器と防具はリアルガチでヤバいヤツだ! なんたってハデスの闇属性が効かない! おれの奥の手が通用しない相手だ! 急いでイリューシュさんに伝えて!」


「ま、まじか! 良くわかんないけど、闇の属性が通じないって言えば良いんだね? 分かった!」


 アカネは戦っている一体を投げ捨てると、後ろに下がりながらボイスチャットを繋いだ。


「イリューシュさん! なんか敵がヤバい武器と防具を着けてるんだって! 闇の属性が効かないとかで……。そんであいつら、武士みたいな格好してる!」


「えっ、武士みたいな格好!? それに闇の属性が効かないのですか? わ……、わかりました!」


 イリューシュはボイスチャットを切ると、振り向いてルルに言った。


「ルルさん、どうやら闇属性が効かない強敵がG区画の海岸に……。私の記憶で察するに『ミナモト』の一団かもしれません……」


 それを聞いたルルは少し考え込んでからイリューシュに答えた。


「ミナモト……? あの子たち人見知りだけど悪い子たちじゃ無いし、そんな事をする子たちじゃない……。何かあったのかしら……。いつも、あんなに屈託のない笑顔で歓迎してくれていたのに……」


 しかしイリューシュは合理的な判断の元、ルルに言った。


「ルルさん。今、現実に起こっている事が全てです。過去の美しい記憶は現在の判断を鈍らせます。人は変わります」


「……うん。……そうね。イリューシュの言う通りだわ……。おっけー。じゃ、行ってくるわね。この目で確かめてくるわ」


 ルルはそう言うとG区画の海岸へ転移しようとマップを開いた。


 しかし、マップは白黒になっていて転移ができない状態だった。


「もうっ、なによ。転移もできないの? ここからだと海岸までチョット遠いのよね」


 タッタッタッタッタッ……


 ルルはマップを閉じると、G区画の海岸へと走り出した。


 ー G区画の海岸 ー


 おじいさんは離れたところから火薬玉を投げつけて少しずつ武者プレイヤーたちの数を減らしていたが、アーボンとマラツンたちは苦戦を強いられていた。


「アーボンさん! 大丈夫っすか!」


「いやマラツン。おれ、めっちゃ斬られてるわ。ははは。さすがに数が多すぎ」


 そしてマラツンの後輩たちも防戦一方になっていた。


「やばい!」

「あ、もうHPが」

「くそ、負けたくない!」


 その様子を見ていたおじいさんは、走り出してアーボンたちの援護を始めた。


 シャァァアアア……、ドガン!

 シャァァアアア……、ボォン!


 アーボンたちはその隙に逃げ出すと、回復薬を飲んでHPを回復した。


 アーボンはおじいさんに手をふると大声でお礼をした。


「ひろしさん! ありがとうございます!」


 おじいさんは笑顔で手を振り返した。


 アーボンは襲いかかってくる武者プレイヤーたちを見ながら両手剣を構えると、マラツンがアーボンに不安そうな表情で言った。


「アーボンさん……。ここは(いち)(ばち)かベヒーモスを召喚しますか?」


 アーボンはそれを聞くと、突然ひらめいた。


「あっ、(ひらめ)いた! 誰かロープ持ってない!?」


 するとマラツンの後輩のマムシが答えた。


「あります! 登山イベント用なんで50mあります!」


「でかした! じゃあ、マラツンはベヒーモス召喚して、マムシのロープを(つの)に結ぶぞ!」


「あ、はい!」

「はい!」


 マラツンはベヒーモスを召喚し、マムシは50mのロープを出現させた。


 マラツンはロープを拾い上げると、急いでベヒーモスの(つの)に結びつけた。


 アーボンはそれを見ると満足そうに笑いながら言った。


「おっし! これからカッコ悪い戦い方を見せてやる! カッコ悪い同盟の記念すべき日だ!!」


「「おおーーー!!」」


 マラツンたちはアーボンの自信に溢れた言葉に思わず片腕を上げて答えた。


 アーボンマラツンたちを鼓舞するとロープの端を掴んで、マラツンと後輩たちに言った。


「マラツン! お前はベヒーモスを武者プレイヤーの集団の横まで走らせて待機だ!」


「はい!」


「ツックン、マムシ、サソリ! お前らは、おれと一緒に武者プレイヤー集団の反対の端まで走るぞ!」


「「はい!!」」


「いくぞ!」


「「「おおーーー!!!」」」


 アーボンたちとマラツンは同時に広がるように走り、武者の集団の端から端までロープを張った。


 そしてマラツンが待機すると、アーボンはニヤリと笑ってマラツンに指示を出した。


「マラツン! あいつらを囲うようにベヒーモスを走らせろ!」


「はい!」


 するとアーボンは一緒にロープを掴んでいるマラツンの後輩たちに言った。


「おれらも走るぞ! 反対側から回ってベヒーモスに合流するんだ!」


「「はい!!」」


 アーボンたちは武者プレイヤーの集団を輪で囲うように走り出した。


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