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第10話 タケチ、立つ

 アーボンたちがロープで武者プレイヤーたちを囲い込むと、ロープに引っかかった武者プレイヤーたちは転んだり、左右のプレイヤーたちにぶつかって身動きが取れなくなっていった。


 それを見ていたマラツンの後輩たちは心配そうに声をあげた。


「これで良いんすか?」

「ダメージ少なそうっすけど!」

「倒せるんですか!?」


 アーボンは後輩たちの声を聞くと自信満々のドヤ顔で答えた。


「倒せるわけがないだろう!!」


「「ええっ!?」」


「いいか! おれらは弱い! だが安心しろ! 必ず強い人が倒してくれる! 信じるんだ!!」


「「はい!!」」


「おれらが出来る最大の攻撃は、時間稼ぎた!! 強い人が攻撃しやすいように全力で足止めするんだ!!」


 アーボンの言葉を聞いたマラツンの後輩たちはキラキラした笑顔で答えた。


「はいっ、そうっすね!」

「頑張ります!」

「足止めます!!」

「そのとおりです!」


 するとその時、マラツンと一緒に走ってきたベヒーモスも回ってきた。


 それを見たアーボンは大声で叫んだ。


「もう一周だ! 泥臭く時間稼ぎをするんだ! 敵の足を止めろ!!」


「「「はいっ!!」」」


 アーボンたちは必死にロープを引っ張って走り、武者プレイヤーたちを足止めした。


 そこへおじいさんたちは総攻撃を仕掛け、武者プレイヤーの数は半数を切る程になっていた。


 しかし、ロープを引っ張るマラツンの後輩たちに異変が起きた。


「ア、アーボンさん足が」

「走りすぎて……」

「限界っす」


「なんだって!?」


 アーボンはチート級の最大HPと耐久値を持っていたので気づかなかったが、マラツンの後輩たちはHPが限界まで来ていて、体の耐久値が落ちていた。


 マラツンの後輩たちは異常な疲労感を感じて、その場に倒れ込んでしまった。


「お、おい! おまえら! 早く回復薬を!!」


 すると、その機会を伺っていたかのように武者プレイヤーたちはゆっくりと広がり始めた。


 アーボンは慌ててロープを引くとマラツンの後輩たちに言った。


「やばいぞ! このままじゃヤツらにやられる! 起きろ!」


 しかし、マラツンの後輩たちはあまりの疲労感に勝てず、動くことはなかった。


「おい! 起きろ! がんばれ!」


 するとその時、アーボンの背後から声がした。


「みんなのアイドル〜、ルルだよっ!」


 ガバッ!


「!!」

「はっ!」

「ルル様!」

「まじすか!」


 マラツンの後輩たちはルルの声に起き上がると、キラキラと光り輝くルルがポーズを決めて立っていた。


「みんな〜。みんなが頑張ってたところ見てたよ。よく頑張ったね」


 ルルの言葉にマラツンの後輩たちは一斉に立ち上がった。


「はい!」

「ありがとうございます!」

「ひゃいっ!」

「ルル様ー!」


「これからルルが光の魔法を放つから、もう一回あのプレイヤーたちを足止めしてくれないかなぁ〜」


「「はい!!」」


 マラツンの後輩たちは一斉に立ち上がってロープを持つと、清々しい笑顔でアーボンに言った。


「「アーボンさんお願いします!」」


「お、おう、わかった」


 するとアーボンはマラツンに手を振って指示を出した。


「マラツン! またベヒーモス走らせて!」


「はいっ!」


 マラツンはベヒーモスを再び走らせると、また武者プレイヤーたちを囲うように回り込んだ。


 アーボンたちも反対側に回り込み、武者プレイヤーたちを囲い込んでいった。


 その様子を見ていたルルは、信じていたミナモトのメンバーたちが本当に攻め込んできて来ていた事実を知って肩を落としながら目を潤ませた。


 しかしルルは、それを跳ね除けるように魔法陣を展開しながらおじいさんたちに言った。


「ひろしさん、大熊笹さん、茂雄さん、アカネちゃん! 一度下がって!  光の矢を落とすから!」


「はい!」

「はい!」

「わかりました」

「おっけー!」


 おじいさんたちは素早く武者プレイヤーたちから離れると、ルルはアーボンたちにも大声で叫んだ。


「みんなー!! ロープを捨てて離れてーー!!!」


 ダダダダダダダダ……


 ルルの声を聞いたアーボンたちは一斉にロープを離して逃げ出した。


 マラツンもベヒーモスを戻して武者たちから離れるように逃げ出した。


 その瞬間、


「……信じてたのに」

 ズドドドドドドドドドドド!!


 無数の光の矢が武者プレイヤーたちに降り注いだ。


 その光の矢はことごとく武者プレイヤーたち甲冑を貫通し、ほとんどの武者プレイヤーたちが消滅していった。


 そして光の矢が()むと、残った武者プレイヤーたちにアカネと大熊笹と茂雄が走り込み、おじいさんは火薬玉を浴びせた。


 ◆


 その頃、再びタケチのフェイク動画に(あお)られたプレイヤーたちがピンデチの入り口に集結して、中へ侵入しようとしていた。


「はっはー! ピンデチを破壊しろ!」

「録画してるか!? 前代未聞だぜ?」


 プレイヤーたちはピンデチの入り口に走り込んだが、全く誰も居なかった。


 そして、入り口を守っているはずのベンドレ・チームも居なかった。


「お、おい、誰も居ないぞ。おかしい」

「きっと怖くて逃げたんだろ!?」

「よっしゃ、いけぇ! グレートリセットだ!」

「ひゃっはぁー!」


 ドゴォン!!


「ぐえっ!」


 しかしその瞬間、物陰から現れた黒ちゃんのモーニングスターが侵入者に炸裂し、ものすごい勢いで吹き飛ばした。


 ズバッ! ズバッ!


 そこへベンドレが走り込んで一気に数名を()ぎ倒すと、侵入者たちは恐れをなして立ち止まった。


「やべぇ! ベンドレだ!」

「あいつは撲殺紳士!」


「だめだ! 退け、退け!」


 ダダダダダダ……


 侵入者たちが一斉に入り口に戻ろうとすると、なんとロビとミツとゆぅが武器を構えて待っていた。


 ザザッ……


「おい、あいつらもヤベェぞ」

「ああ。クリア代行のプロプレイヤーだ」

「ちっ……」


 侵入者たちはベンドレたちとロビたちに挟まれると、意を決したように走り出した。


「に、逃げ場はねぇ!」

「くそっ! 戦えー!」

「グレートリセットだぁ!」


 ◆


 その頃、裏口のおばあさんたちのところにも10人ほどのプレイヤーたちが現れて侵入を試みていた。


 おばあさんたちは慌てて記念撮影に来たプレイヤーたちをログアウトさせると、武器を構えて準備をした。


 するとその時、なんとタケチが現れた。


 タケチはおばあさんたちの前に出ると、侵入を試みたプレイヤーたちは驚いて声をあげた。


「タケチさん!」

「え!? なんで」

「あれ、さっきはエストンレルトに……」


 タケチは一歩前に出ると、真剣な表情でプレイヤーたちに言った。


「僕は本物のタケチです! みなさんが見たのはフェイク動画です!」


 ザワザワザワザワ……


 ざわつくプレイヤーたちに、タケチは話を続けた。


「僕はもうグレートリセットなんて望んでいません! みなさん、もう止めましょう!」


 タケチがそう言うと、なんとプレイヤーたちは薄ら笑いをしながら口々に声を漏らした。


「は? べつにグレートリセットしたいわけじゃないっつうの」


「暴れたいだけだし」

「なんなら本物のタケチ殺す?」

「ははは! それいいじゃん!」

「めっちゃ再生回数稼げるぜ!」


 その声を聞いたタケチは、振り返って後ろにいるおばあさんたちに言った。


「本当に、僕のせいでごめんなさい。ここは僕が1人で戦います」


 タケチはそう言うと、ホワイトドラゴンの片手剣と盾を装備した。

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