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第81話 美咲、仕掛ける

 ナミたちは大量のスケルトンが出る通りを強引に中央突破し、地下2階への階段を降りると、ナミは全員を先導するように先に進みながら全員に全回復薬を送信して言った。


「みんな、スケルトンとょく戦ってた。これで回復して」


「「ありがとうございます!!」」


 ナミは後ろを歩いていた寅次郎とララ助にも笑顔で言った。


「2人とも強かった。このぁともマラツンたちをたすけてぁげて」


「にゃぁぁ」

「クルルル」


 寅次郎とララ助が嬉しそうに返事をすると、その時、マラツンが何かに気づいてナミに尋ねた。


「ナミさん、なんか左側だけ暖かくないっすか?」


 それを聞いたナミは足を止めてマラツンに言った。


「なら、この壁の向こうがイフリート」


「ええっ、まじすか!!」


「イフリートの隠し部屋ゎ毎回ぃどうする。でも、温かい壁でわかるってァーボンがぃってた」


「な、なるほど……」


 するとナミは業炎の壺を出現させて壁際に置くとマラツンたちに言った。


「爆破する。はなれて」


「はっ、はいっす!!」


 ナミは寅次郎とララ助を抱えて離れると、マラツンたちが壁から離れた事を確認してから業炎の壺に矢を放った。


 ヒュッ……

 ドガァァァアアン!!


 業炎の壺は大爆発を起こして壁に穴を開けた。


 ◆


 ちょうどその頃、なんとおばあさんたちスマイル道具店のメンバーも魔城を攻略するために転移ポイントに来ていた。


 スマイル道具店のメンバーは、前衛の美咲とマユを先頭に、軍神零式を召喚した和代と大量の豪炎の壷と氷結の壺を用意してきた哲夫が補助アタッカーとして準備した。


 そして後衛はメイとおばあさんが支援し、ポンちゃんが遊撃アタッカーとして動く陣形で第1階層へと進んだ。


 第1階層はメイが作り出す大司教の防御魔法陣を起点に美咲とマユが次々とスケルトンを倒してゆき、体のある魔物が出現する第2階層もポンちゃんの活躍で難なくクリアした。


 こうしてスマイル道具店のメンバーは無傷で第2階層までクリアすると、美咲が少し申し訳なさそうにメンバーに言った。


「次の階層に行くとボスと転移ポイントがあるんだけど、……ちょっと私のわがまま聞いてもらっても……、いいかな……」


 するとメンバーは笑顔で答えた。


「もちろんだよ!」

「ぜんぜんOK!」

「ええ、もちろん」

「もちろんよ!!」

「気にしないでな」


 それを聞いた美咲は少し笑顔を漏らしながら言った。


「あのね、この階にイフリートっていう召喚士が召喚できる精霊がいるんだ。だから、おばあちゃんにって……」


 美咲がそう言うと、和代は思わず嬉し涙を目に溜めながら美咲に言った。


「美咲ちゃん……、私のため……、に?」


「うん。でも、みんなの助けが必要だから……」


 すると和代は慌てて振り向くと、おばあさんたちに深く頭を下げながら言った。


「みなさん、私のためにご迷惑かもしれません! あの……、ええと……」


 和代が言葉に詰まると、おばあさんたちは皆駆け寄って和代に抱きつきながら言った。


「和代さん、仲間なんだから!」

「そうだよ! 気にしないで!」

「そうですよ水臭いわ和代さん」

「和代、良かったな。ほんとに」


 こうしてスマイル道具店のメンバーもイフリートに挑むことになった。


 ◆


 おばあさんたちは美咲の案内で暖かい壁を発見すると、哲夫の豪炎の壺で壁を破壊して中へと入っていった。


 壁の中は広い部屋になっていて、奥にはイフリートが大きな椅子に腰かけていた。


 イフリートはおばあさんたちが入って来た事を確認するとゆっくりと立ち上がっておばあさんたちに言った。


「お前ら。間違ってこの部屋に入ったのならば帰るがいい。だが、この俺を倒そうというのならば灰にしてやる。どうする?」


 イフリートの威圧するような言葉におばあさんたちは構えたが、美咲は静かに前に出てイフリートに言った。


「イフリート。君と戦いたい。そして、おばあちゃんの召喚精霊になってほしい」


 それを聞いたイフリート大笑いをしながら体に炎を纏わせた。


「はぁーっはっはっは! おい、小娘。面白いことを言うな。今までそんな事を言うやつには会ったことがないぞ」


 そしてイフリートは両手に炎の剣を出現させると、少し嬉しそうに美咲に言った。


「お前は嫌いじゃないぞ。しっかりと俺を楽しませてくれよ!」


 イフリートはそう言うと一直線に美咲へと飛び込んでいった。


 美咲はそれを見透かしていたかのように低い体勢でイフリートへと飛び込み、それを見たイフリートは両手の剣を同時に美咲へと振り下ろした。


 すると美咲はニヤリと笑って少し離れたところに居たマユと目を合わせると、俊足スキルを使って直角にマユの居る方へと飛び退いた。


 ズザッ!!


 それを見たイフリートは、美咲を追撃するように剣を切り返しながら言った。


「小賢《こざか》しいマネを!!」


 ゴォォォオオ……


 しかしその時、イフリートはジェットエンジンの音に気づいて音の方へ視線を送ると、なんと和代の零式が氷結の壺を大量に詰め込んだ風呂敷を抱えて飛び込んできているのが見えた。


「ちっ! ハメられたか!」


 イフリートは慌てて魔法を詠唱して炎の壁を出現させ、防御の体勢をとった。


 しかしその瞬間、


 ズバッ! ドドドッ!!

 ズドン!!


 美咲の肩を使って飛び上がったマユの「駆け上がり脳天割り」と美咲の「居合抜刀」からの連続突きがイフリートに命中した。


「くっ! しまった!!」


 イフリートは大きく飛び退いて美咲たちと距離を取ると、なんとそこへおばあさんの氷の氷柱《つらら》が襲いかかった。


 キィィィイイン!!

 ドドドドドッ!!


 そして畳み掛けるように哲夫が無数の氷結の壺を投げ込み、和代の零式がイフリートにタックルを食らわせた。


 ドガァン!!!

「くっ!」


 イフリートは大きく吹き飛ばされると、それを追撃するように美咲とマユが飛び出した。


 するとイフリートは両手を高く挙げて大声で言った。


「分かった分かった! 負けだ負けだ!! まいったぜ!!」


 それを聞いた美咲とマユは足を止めると、イフリートはゆっくり立ち上がって美咲に言った。


「約束は守るぜ。今からおれは、おまえの祖母の召喚精霊になってやる」


 そしてイフリートは和代に言った。


「お前は良い孫を持ったな。楽しい戦いだったぜ」


 シュゥゥウウ……


 イフリートはそう言うと消えてゆき、和代の視界の下にはイフリートが追加された事を知らせるアイコンが現れた。


 ◆


 その頃、同じくイフリートと戦っていたナミ一家《いっか》は苦戦を強いられていた。


 前衛で戦っていたツックンとサソリはハヤブサシリーズの武器の良さを引き出せずに苦戦し、マムシの氷系の攻撃アイテムもことごとくイフリートの剣で弾き返されていた。


 寅次郎とララ助が辛うじて善戦していたが致命傷には至らず、マラツンもビビりながらベヒーモスに指示を出していたため、完全にイフリートのペースになっていた。


 ナミは後衛から弓で支援していたが、ビビリながら焦って戦うマラツンたちに指示を出しても上手く伝わっていなかった。


 しかしナミは根気強く指示を出し続けた。


「マラツン、ベヒーモスはイフリートのぅしろに走らせて。ツックン、もっと距離をとって。サソリ、いったん離れて。マムシ、回復支援して」


「ベヒーモス後に回れ!」

「きょ、距離……をっ!」

「は、離れられません!」

「か、回復薬どこだ??」


 しかしベヒーモスはなぜかマラツンの後ろへ移動し、ツックンは距離を取ろうとして転んだ。


 そしてサソリはイフリートの剣で牽制されて動けず、マムシは必死にアイテム欄をスクロールしながら回復薬を探していた。


 そう、マラツンたちは完全にパニックになっていた。


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