第78話 ひろし、んーーー
結局、テイマー志望のプレイヤーはイリューシュに諭されてナミの写真は週に1枚しか投稿しないと約束し、おじいさんたちは転職の神殿までやって来ていた。
すると、初めて神殿を訪れる清が居たので神殿を守る2体の剣を持った石像が動き出し、おじいさんたちに襲いかかってきた。
するとアカネは笑顔になって石像に言った。
「今日はリベンジだよ! このあいだは熊じぃしか投げられなかったからね!」
アカネはそう言うと、リキャストしていた気合と剛力のスキルを発動して剣を持った石像へと走り込んだ。
「やぁあぁああ!!」
剣を持った石像は走り込んでくるアカネに剣を振り下ろすと、アカネはニヤリと笑って素早く懐に入り、剣を振る石像の右腕を巻き込むように一本背負いに持ち込んだ。
グオォォオオオオ!
剣を持った石像は、剛力スキルで強化されたアカネの投げに絶えきれず、その重い体は宙を舞った。
そして剣を持った石像は激しく地面に打ち付けられると、バラバラになるように消滅していった。
「おっしゃーー!!!」
アカネはガッツポーズをして振り返ると、清がもう1体の剣を持った石像を土壁で囲んで制御しながら、その中へ火薬玉を投げ入れているおじいさんが見えた。
するとアカネは笑顔になって業炎の壺を手に出現させ、おじいさんと一緒に石像に投げ込みながら言った。
「じぃちゃん、清じぃ! 加勢するよ!!」
◆
こうしておじいさんたちは無事に剣を持った石像を討伐したが、その様子を見ていたイリューシュは少し引きながら声を漏らしていた。
「アカネさん……、あの石像を投げるだなんて……」
イリューシュはあごに手を当てながら考え込むと、思わず呟いた。
「ひろしさんといい、アカネさんといい……。この世界の無職は、今となっては最強なのかもしれませんね……。間違いなく運営の想定外ですし……」
イリューシュは驚きながらも、少しどこかで嬉しく感じていた。
―― 夕方 ――
おじいさんは神殿で僧侶へと並行転職を済ませ、G区画の家へと帰ってきていた。
おじいさんはイークラトで購入した僧侶の杖と僧侶のローブを装備してみると、アカネとめぐが嬉しそうにおじいさんに言った。
「うわっ! じぃちゃん、めっちゃ似合ってるよ!」
「うんうん! おじいちゃん、僧侶がぴったりだね」
なんと、おじいさんの柔和な表情と僧侶のローブがマッチして、やさしい老齢のベテラン僧侶のようになっていた。
しかし、おじいさんは笑いながら答えた。
「ははは。ですが僧侶は初心者ですので、今のところ治癒魔法も防御魔法も使えません。ははは」
するとそれを聞いためぐがおじいさんに言った。
「おじいちゃん。たしか僧侶って魔法攻撃力が高いと治癒魔法も防御魔法も効果が高いって聞いたことあるよ。おじいちゃん、ステータスポイントって残ってない?」
「あぁ、そういえばポイントがありましたね」
おじいさんはステータスポイントの事をスッカリ忘れていたので、ステータス画面を開いて確認してみた。
するとなんと、まったく変換していないステータスポイントが9220ポイントもあった。
「え、ええと……、9220ポイントもありました」
「ええっ! もしかしておじいちゃん、この間のピンデチ戦いのステータスポイント、変換してなかったの?」
「ええ、ははは。それどころか、ベンドレさんたちと戦い終わったあたりから変換するのをスッカリ忘れてしまっていて……」
こうしておじいさんは、9220ポイントを復活していた変換率100%で変換して、魔法攻撃力は9220ポイントになったのだった。
―― 翌日の昼頃 ――
おじいさんはアーボンの家の訓練場で、大司教のメイ、そしてナミとアーボンの協力を得て僧侶の練習をしていた。
メイはおじいさんの横に並んで杖を構えると、優しくおじいさんに言った。
「ひろしさん、えっと、治癒魔法する時ってチョットだけ詠唱するんですけど、視界の下に治癒詠唱ってある感じですか?」
それを聞いたおじいさんは視界の下を見ると、おじいさんの視界には治癒詠唱が書いてあった。
「あ、はい。ええと……、この世界に宿りし精霊よ、その大いなる力を与えたまえ……、でしょうか」
「うん! それそれ! で、それを詠唱したら、回復したい人を見て、ん----って杖にするんですけど……、えっと、そういうのって何て言えばいいんだろ」
「んーー……、でしょうか……」
「そうそう、えっと……、ぎゅーーーって杖に邪念を送るっていうか?」
それを聞いていたアーボンは慌ててメイに言った。
「おいおい、邪念を送ってどうするんだよ。あれだろ? 念を送るんだろ?」
「あ、それそれ! アーボンさん天才! ひろしさん、杖に念を送ってください!」
それを聞いたおじいさんはウンウンと頷いて答えた。
「なるほど分かりました、やってみます!」
するとその瞬間、ナミが超至近距離でアーボンをヘッドショットした。
シュッ、ドスッ!
「痛っ!!!」
ナミはアーボンにヘッドショットすると、おじいさんに言った。
「ひろしさん、やってみて。アーボンHPへった」
「あ、は、はい、わかりました!」
おじいさんは慌てて治癒魔法の詠唱を済ませると、アーボンを見て杖に念を送るように握りしめた。
パァァァアアア……
するとアーボンの体は薄っすらと緑色に光り、HPがぐんぐん回復されていった。
それを見ていたメイは思い出したようにおじいさんに言った。
「あ、ひろしさん、言い忘れてた! んーーーーってするのを止めると魔法が終わるのと、回復してる時って、どんどんMP減るから気を付けて!」
おじいさんはメイの言葉を聞いてMPを見てみると、ゆっくりと減っているのが確認できた。
そしてアーボンのHPが最大値まで回復すると、自動で治癒魔法がキャンセルされてMPの消費が止まった。
その様子を見たおじいさんは治癒魔法のやり方をなんとなく理解した。
◆
おじいさんは暫く治癒魔法の練習をしたあと、今度は防御魔法陣の練習を始めた。
メイはおじいさんに並んで杖の先端を突き出すように構えると、おじいさんに言った。
「ひろしさん、こうやって杖を構えると、杖の先に赤い丸が出て……」
おじいさんはメイを真似るように杖の先端を突き出すように構えると、杖の先端に赤い線で描かれた防御魔法陣と同じくらいの大きさの丸が現れた。
「はい、赤い丸が現れました」
「そしたら、その赤い丸を、んーーーーって押したり、ビューーーーって横に動かしたり、ヨイショって上に向けたりして位置を決めてグッとすれば防御魔法陣がそこにできて……」
それを聞いていたアーボンは戸惑っているおじいさんの横に行って、おじいさんに言った。
「あの、ひろしさん。たぶんメイちゃんは脳波のイメージで赤い丸を動かしてると思うんですよ。なんで、イメージで動かすんじゃないかと……」
「な、なるほど……、やってみます」
おじいさんは脳波で赤い丸を、んーーーーっと押したり、ビューーーーっと横に動かしたり、ヨイショっと上に向けたりして位置を決めてみた。
「ははは、メイさんの言う通りの感覚でした。おかげさまで赤い丸が動かせました」
それを聞いたメイは嬉しそうに答えた。
「でしょ! そしたら、ひろしさん。杖にグッて念を入れてみて!」
「はい、わかりました」
おじいさんは杖に念を送ると、赤い丸は防御魔法陣へと変化した。
「おぉ、これは良く見る防御魔法陣ですね」
すると、おじいさんの防御魔法陣の横に4つの防御魔法陣が並んだメイの大司教の防御魔法陣が現れた。
それを見たおじいさんは驚きながらメイに言った。
「それは先日の戦いで見た防御魔法陣ですね。これはメイさんの魔法陣だったのですね」
「うん! これは大司教の防御魔法陣で、この間わたしとゴーストさんが使ってて……。よいしょっ!」
メイはそう言うと、大司教の防御魔法陣のすぐ横に、さらに大司教の防御魔法陣を展開しておじいさんに言った。
「MPがあれば、こんなふうに防御魔法陣も増やせてメッチャ安全っていうか。ははは」
おじいさんは防御魔法陣の便利さに目を見張った。




