第76話 つむぎ、驚く
大盛況のカフェを支えるように、厨房ではレインたちがコーヒーや紅茶、焼きトウモロコシや冷やしトマト盛りなどを作っていた。
レインは器用にラテアートを完成させると、待機していたニジに差し出して言った。
「6番テーブルさんのカフェラテ、おねがい」
「うん、持っていくね」
レインの横で焼きトウモロコシに醤油を塗っていたキョウコは感心したようにレインに言った。
「しっかし、レインは器用だな。ラテアートなんてどこで覚えたんだ?」
「え? 大学生の時にスターパックスでアルバイトしていたんだよ。家にもエスプレッソマシンがあるからラテアートをすることもあるよ」
「家でラテアート? ってか、エスプレッソマシンが家にあるのか?」
「うん。やっぱり朝のコーヒーは幸せを運んでくれるしね」
「幸せを……、コーヒーがねぇ……。レイン、おまえもしかしてセレブなのか?」
「セレブ? そんな事はないよ。良くあるワンルーム・マンションだよ」
「ええっ!? ワンルームにエスプレッソマシンがあるのか?」
「うん。何か変かい?」
「い、いや……、確かに変ではないよな。お金をかける所は人それぞれだしな……」
ちなみにキョウコは6畳くらいの良くあるワンルーム・マンションを想像したが、レインのマンションは高輪にある20畳ほどのデザイナーズ・ワンルーム・マンションだった。
するとその時、冷やしトマトを切っていたズドンとテッペキが焦りながらレインに言った。
「まずいぞレイン! トマトがあと少ししかねぇ!」
「これだと、あと5皿くらいで終わりになっちゃう」
するとキョウコもレインに言った。
「トウモロコシもまずいぞ。あと、10本しか無い」
そえれ聞いたレインが慌てると、それを配膳カウンターで聞いていたニジが機転を効かせてお客さんたちに言った。
「みなさん、ごめんなさーい! 焼きトウモロコシは残り10本、冷やしトマトはあと5皿で終わりでーす! 先着になりますので、テーブルの端末から注文おねがいしまーす!」
こうしてカフェは大盛況で盛り上がり、サヤおばあちゃんたちの編物教室も大勢の人たちで賑わった。
◆
カフェが無事閉店すると、つむぎたちとレインたち、そしてご高齢者の皆さんは食堂に集まってお疲れ様会をしていた。
レインたちはお茶や紅茶やコーヒーを淹れて持ってくると、ニジが世界中のお菓子をテーブルに出現させてみんなに言った。
「みなさん、お菓子たくさん食べてくださいね。たくさん買いすぎちゃって、どうしようかって思ってたんです。うふふ」
ニジが出現させたお菓子を見たつむぎたちは、驚きながらお菓子に釘付けになった。
「あっ、ドラゴン大福! これおいしいの!」
「爆弾シュークリームだって! 美味しそう」
「レスカカル名物……、鹿のチョコふん??」
するとご高齢者の皆さんも嬉しそうにお菓子を手にとった。
「おや? これは清さんが持ってきてくれた」
「あぁ、せやせや。魔法陣せんべいやないか」
「あらまぁ、溶岩ようかんですって。うふふ」
「面白い名前ねぇ。でも、これ美味しそうよ」
「シャーム特産のドライマンゴーですって!」
「まぁ、わたしドライマンゴー大好きなのよ」
ご高齢者の皆様が嬉しそうにしていると、レインがお茶を淹れた湯呑みを持ちながら笑顔で皆さんに言った。
「みなさん、お茶も冷めちゃいますし、どうぞお召し上がりください!」
レインがそう言うと、そこに居た皆は和気あいあいとお茶とお菓子を楽しみ始めた。
するとその時、レインに大谷からメッセージが入った。
レインはメッセージを読むと、嬉しそうに目を輝かせながら皆に言った。
「み、みなさん! 今日の売上が出ました! なんと47万プクナの売上です!」
「「おぉぉお〜!」」
「これだけあれば、シャームの高級レストランで一番高いコースを頼めますよ! ぜひ行きませんか!?」
「おお! そりゃ、ええな」
「あぁ、行っでみでぇなぁ」
「一番高いコースですって」
「あらあら、まぁまぁ!!」
「セレブ気分で行きましょ」
「うふふ。それは最高ね!」
するとレインはつむぎたちにも言った。
「もちろん、つむぎさんもミッチさんもChocoさんもね!」
しかし、つむぎは驚きながら聞き返した。
「えっ!? いいんですか!?」
「もちろんだよ。だって、つむぎさんたちも働いたのだもの」
「でも……、高級レストランだなんて行ったことが無くて……、ちょっとだけ怖いっていうか……」
「心配しないで。どんな高級レストランだって、僕がしっかり皆さんをエスコートするから大丈夫。ははは」
レインが笑顔でそう言うと、つむぎは少し恥ずかしそうに答えた。
「えっと……、じゃあ……、行って……、みようかな」
「うん! じゃあ、決まりだね!」
こうして今日の売上でシャームの高級レストランへ行くことが決定したのだった。
◆
その日の夜、キョウコはスタッフルームの居間でレインに少し慌てながら話していた。
「ちょ、レイン。シャームの高級レストランってあれだよな? 宮廷料理を出すレストランだろ?」
「うん、そうだね」
「いや、あそこってドレスコードあっただろ? それにあたし、テーブルマナーとか分かんねぇぞ?」
「あ、それは大丈夫だよ。僕が内緒で10万プクナの大きな個室を予約するから、入ってしまえば好きに食べられるよ。それにあのレストランなら、お箸も使わせてもらえるしね」
「お、おぉ。なんだ、それなら良かったよ。さすがレインだな」
「僕はこの世界の高級レストランは全部行ったから、ふれあい苑の皆さんをお連れしやすいレストランを選ぶのは少し自信あるんだ」
「へぇぇ。でも、あたしドレス? とか持ってないけど大丈夫か? この間のワンタイの高級レストランはカジュアルな感じで行けたけど、次はドレスコードあるんだろ?」
するとその時、ニジからキョウコにスマートエレガンス系の上品なワンピースとヒールが送信された。
ニジからワンピースを受信したキョウコは驚きながらニジに言った。
「えっ? これ……」
「うん、着てみてキョウコ」
「お、おぅ」
キョウコは上品なワンピースとヒールを装備すると、普段から鎧を装備していた強いイメージのキョウコは一瞬で上品で女性らしいスタイルになった。
「「おぉぉおお!!」」
レインとドガンとテッペキが一斉に驚くと、ニジは笑顔でキョウコに言った。
「キョウコ、とってもキレイ。あの鏡で見てみて」
キョウコはニジに促されて全身鏡の前に立つと、自分の姿を見て驚きながら声を漏らした。
「こ……、これが……、あたしか?」
するとニジがキョウコの後ろから顔を出してキョウコに言った。
「レストランに行く前はヘアーセットとメイクもさせてね。いい?」
それを聞いたキョウコは顔を赤くしながら下を向いて答えた。
「あ、あぁ。た……、たまには、そういうのも悪くない……、かな」
その時、レインからスーツを送信してもらったズドンとテッペキも鏡の前にやって来て声をあげていた。
「こ、これがおれか? スーツは良いな!」
「僕の仕事用のスーツより仕立てがいいや」
それを聞いたレインは嬉しそうに言った。
「2人とも、とっても似合ってるよ。この世界はサイズが自動調節されるから良かった。ははは」
こうしてキョウコとズドンとテッペキは、レストランに行くのが楽しみになったのだった。




