第71話 ルル、稲を刈る
―― 翌日の朝 ――
ヨリトミの一団とイグラァの社長と大谷と鶴居田、そして早番の社員たちが総出で稲刈りをしていた。
そして、午前中の仕事で待機時間が長すぎたので島にやって来ていたルルは稲穂の中身を確認して驚きながら声をあげた。
「わっ! これ、シッカリお米じゃない! すごいわ!」
その声を聞いた大谷とミナモトの一団はルルの声に笑顔を見せた。
するとルルはミナモトの一団がモタモタと稲刈りしている姿を見て、居ても立っても居られずに、近くで稲刈りをしていたフトシに言った。
「ちょっと、フトシくん。そんなに引っ張っても稲は切れないわよ。ちょっと、わたしに鎌を貸して。わたし小さい頃、コンバインが入れない所はおばあちゃんと一緒にやってたから得意なのよ」
「あ、は、はい。ははは」
フトシは鎌をルルに渡すと、ルルは滑らせるように鎌を動かして次々と収穫していった。
その様子を目をキラキラさせて見ていたフトシは嬉しそうにルルに尋ねた。
「ルルさん、すごいや! どうやってやってるのかなぁ?」
それを聞いたルルは鎌をフトシに差し出して言った。
「稲刈り用の鎌はノコギリみたいにギザギザがあるから、こうやって引っ張るのよ。やってみて!」
「あ、はい!」
フトシはルルから鎌を受け取ると、ルルの言うように鎌を滑らせるようにして稲を収穫した。
「あ、ははは! ルルさん、ほんとだ! すごいや!」
「なによ、やればできるじゃない! フトシくん、最高よ!」
「ははは! ぼくでも出来た!」
フトシが喜ぶと、それを聞いていたミナモトの一団とイグラァの社員たちも真似して稲を収穫していった。
そしてその様子を見たルルは、小さい頃に鎌の使い方を優しく教えてくれたおばあちゃんと、コンバインで収穫する格好いいおじいちゃんの記憶が蘇って、優しい笑顔になった。
◆
その頃、UVMでは会議が開かれていた。
(英語で会議をしていますが、読みやすさを優先して日本語で表記しています)
「おいおい、あのイグラァが島を隠してまでやってた原因が光る虫だったって?」
「ああ。良く分からないが、日本の人たちはあの光る虫が好きみたいだ。ネットで調べた」
「ただの光る虫にか? そこまでして光る虫見るのって日本の伝統なのか?」
「調べた所そんなところだ。俺たちもグラウンドホッグデー(毎年2月2日、グラウンドホッグが巣穴から出た時に、自分の影を見て巣穴に戻るかどうかで春の天気を占うもの)を伝統的にやってるしな。きっと同じような物なんだろう?」
「まぁー、そうだな。あれはバカバカしいけど、一応結果はチェックしちまうからな」
「たぶん日本人も光る虫を見て占ってんだよ。光ったらラッキーとかあるんじゃねぇか?」
「あぁー、それはあるかもな。じゃ、上に報告するのはそんな感じでいいよな」
「だって、捕虜になったプレイヤーたちは光る虫以外おかしな所は無かったって言ってるんだろ? じゃ、光る虫が原因としか言えないだろ」
「オーケー、じゃ、それで。……ああ、そういえば、イグラァから機密データ持ってウチに移籍してきた日本人ってどうなっちゃうんだろうな?」
「え? ああ、今回の件で不正チートデータ作らせた彼かい? まぁ今回は、ウチのプレイヤーたちが捕まってチートがバレちまっただろうからなぁ……。彼には気の毒だが……」
「だよな。証拠隠滅で、移籍は無かったことにされて……、サヨナラだろうな。ははは」
こうして、UVMの社員は大谷の芝居に完全に騙され、ピンデチ騒ぎを起こした元営業部長もUVMへの移籍に失敗したのだった。
◆
その頃、アーボンはベイリゲンの鍛冶屋でホワイトドラゴンの両手剣を大量に注文していた。
「すいませーん! ホワイトドラゴンの両手剣50本お願い」
すると鍛冶屋は大笑いしながら答えた。
「はっはっは! たしかに素材とプクナは足りているようだが、50本も何に使うんだい? ホワイトドラゴンの両手剣でダーツでもやるのかい?」
「いやぁ、ははは。まぁ、ちょっと近いんだけど。ははは」
「まぁ、ちょっと待ってな! すぐ作ってやるからな!」
カンカンカン! キンキンキン!
「あいよ! ホワイトドラゴンの両手剣50本だ!」
ガシャガシャガシャガシャガシャ……
鍛冶屋がホワイトドラゴンの両手剣を大量にカウンターに置くと、アーボンはホワイトドラゴンの両手剣をアイテム欄に仕舞っていった。
こうしてアーボンは剣を投げ飛ばす居合抜刀の武器を大量に手に入れたのだった。
◆
アーボンが家に帰ってくると、家の前でタケチが嬉しそうにアーボンに言った。
「アーボンさん! ミナモトの一団の方がアーボンさんの投げた両手剣を持ってきてくださっていて!」
「え!? おれの投げ飛ばした剣を?」
「はい、こちらの方が」
タケチがそういうと、横にいたキリ丸が元気に頭を下げてアーボンに言った。
「こんにちは! ぼくはミナモトの一団のキリ丸です。そちらの剣の詳細を調べたところ、アーボンさんの所有物となっていましたので持ってきました!」
キリ丸はそう言うと、2本の両手剣をアーボンに差し出した。
するとそれを見て驚いたアーボンは両手剣を受け取りながらキリ丸に尋ねた。
「あ、えっと、こっちのホワイトドラゴンの両手剣はベンドレ師匠が弾いた剣だから見つかるかもだけど、もう1本はオロチの両手剣だよね? 海に落ちたんだけど、どうやって見つけたの?」
「はい! ヨリトミ様がアーボンさんの剣が海に落ちた事を確認しておりまして、ヨリトミ様の命により団員総出で探しました!」
「ええっ!? 海の中を!?」
「はい! 我々にとっては、さほどの苦労もございません。みなさまのご協力で我らの島は守られました。みなさまの武器をお返しするのは当然でございます!」
「そ、そうか……。それにしても、ミナモトの一団の君たちは気持ちの良い人たちだね。本当に心からありがとう。あとで島に行って皆さんにもお礼してくるね」
「ありがとうございます、アーボン様! そのようなお言葉、一団の雑魚のような僕が聞いてはもったいないお言葉です!」
「ちょっ、いやいや、自分を雑魚だなんて言っちゃだめだよ。ってか、おれのほうが……」
アーボンがそこまで言うと、突然アーボンの家の庭で大きな音がした。
ドォォォオオオン!!!
「えっ!?」
アーボンが驚くと、なんとアーボンの家の広大な庭には大谷が約束した「訓練場」が設置されていた。
それを見たアーボンとタケチは驚きながら声を漏らした。
「お、おお……。あれが訓練場か……」
「思ったよりも、本格的というか……」
訓練場は四方をフェンスで囲まれた闘技場のようなスタイルで、中には木々や荒れ地、池が設置されている本格的な訓練場だった。
それを見たタケチは嬉しそうに訓練場に入ると、訓練場の中を見て回りながらアーボンに言った。
「アーボンさん! ここは凄いですよ! 本当にイークラトあたりの森みたいです!」
タケチは満面の笑顔で岩場を使ってスキルを発動したり、池の水の中に入ったりしていると、その様子を見ていたアーボンがタケチに言った。
「タケチ、ごめんな。おれが強かったら模擬戦でもしてやれたんだけど」
「いえいえ! この環境があれば、上の家の方たちとも勉強させていただけるかもしれません! ははは」
するとその時、キリ丸がタケチに言った。
「タケチさん! 僕は弱いですけど、もしよかったら模擬戦のお相手をさせていただけませんか? ご恩をお返しさせてください!」
それを聞いたタケチは思わず嬉しいくなると、キリ丸に頭を下げてお願いした。
「キリ丸さん、宜しいのでしょうか! でしたら、ぜひお願いしたいです!」
それを聞いたキリ丸は嬉しそうに答えた。
「はい! よろしくお願いします!」
2人の会話を聞いていたアーボンはキリ丸に敷地に入る権限を付与すると、キリ丸は深々と頭を下げてから訓練場へと入っていった。




