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第7話 ひろし、善戦する

 その頃、おじいさんたちもG区画の家の前で善戦していた。


 アカネと大熊笹は敵の騎士たちを次々と投げ飛ばし、転がった騎士にアーボンが順番にとトドメを刺していった。


「はい」

 ドス


「はい」

 ドス


「はい」

 ドス


 それを見たアカネは大笑いしながらアーボンに言った。


「あはは! アーボン、めっちゃ強いじゃん! 一撃で倒してる!」


 それを聞いたアーボンはドヤ顔をしながら答えた。


「はっはっは! おれの攻撃力はベンドレ師匠と同じくらいだぜ! でも動いてる敵には剣が当たらない!」


「うぷぷっ! 剣持ってるのに当たんなくてどうすんだよ!」


「鋭い! おれも、どうしようも無いと思ってる!」


 アーボンがさらにドヤ顔をして親指を立てると、アカネはまた笑いながら言った。


「気に入ったよ! あたしと熊じぃが投げるから、じゃんじゃんトドメ刺して!」


「おう、まかしとけ! そういう事なら、おれは強いぜ!」


 アーボンはアカネと大熊笹が投げる騎士たちを片っ端からトドメを刺してまわった。


 その頃、おじいさんは後方から火薬玉を投げつけ、遠くで魔法を放とうとしているプレイヤーたちにダメージを与えていた。


 シャァァアアア……、ドガァン!

 シャァァアアア……、ドゴォン!


「うわぁ! 火薬玉投げてくるヤツいるぞ」

「やべぇ、詠唱が中断される!」

「だめだ、HPが!」


 おじいさんは少しずつ魔法使いの数を減らしていくと、突然遠くから大きな声が聞こえてきた。


「おい、退却だ!! タケチさんからの命令だ!!」


 それを聞いた敵のプレイヤーたちは攻撃を止め、急いで退却を始めた。


 ー 株式会社イグラァ、ザ・フラウ運営本部 ー


 その頃、社長室では社長が社員からの報告を受けていた。


「社長、ようやく事態が収拾しつつあります」


「そうか。それよりも、ピンデチの村が戦闘可能になった原因は分かったのか?」


「それが……、何者かが戦闘禁止エリアを荒野エリアに移動したようで……」


「なんだと?」


「戦闘禁止エリアの座標が、そのままそっくり4km程ずらされていました」


「そうか。それで村が戦闘可能になったのか……」


 するとその時、専務の大谷が社長室にやって来た。


「社長、失礼します」


「おお、大谷くん。ピンデチの村の戦闘禁止エリアは修復できたか?」


「すみません。調査の結果、社内のメインサーバーに侵入できる何者かが非戦闘区域の座標を移動させロックした事が分かりました。しかし、この広大なプログラムのどこからアクセスしているのかが(あぶ)り出せません」


「なんだと!? それは特定するのに、どれくらいかかるのだ」


「申し訳ございません。敵が大きく動いたり、その影響でバグが出れば即座に特定出来るのですが、今のところその兆候はありません。しかし、メインサーバーに侵入できるのは限られた社内の人間かと……」


「くっ……。まさか社内から敵が現れるとは……。しかし大谷くん、ほかのエリアは大丈夫なのか? ピンデチのようになってはいないのか?」


「はい、大丈夫です。確認いたしました」


「そうか……。まずは早急にピンデチをなんとかしなければな」


「はい。現在は、エージェントやルルさん、ベンドレさん、黒ちゃんさん、美咲さんや翠さんなど、強力な協力者がピンデチを守ると名乗り出て頂き、警戒して頂いています」


「そうか。申し訳ないが少し甘えさせていただこう。他には協力してくださるプレイヤー様たちの話は聞いているか?」


「いえ。他のプレイヤー様たちは静観しているようです。きっと異常事態に巻き込まれたくないのではないかと……」


「そうだな……。以前、他社のVRゲームでエラーが起きて、そのエリアに居たプレイヤーたちのセーブデータが消滅した事案があったからな」


「はい。それに我が社としても初めての規模の異常事態です。プレイヤー様たちに何か起こってしまっては取り返しがつきません」


「うむ、その通りだな……。今は出来ることだけに集中しよう。できるだけ早くピンデチの村を戦闘禁止区域に戻すんだ」


「しかし、社長。ひとつだけ気がかりなことが」


「どうした」


「はい。念のため、ピンデチには入らないようにアナウンスをしたのですが、逆にSNS上では盛り上がってしまっていてログインするプレイヤー様が後を絶ちません」


「なに? それはどう事だ」


「ピンデチは異常に強い守護神のプレイヤーが守っているとバスり、みなさんログインして記念撮影をしているのです」


「記念撮影……。守護神とはエージェントたちの事か」


「はい。この流れを止めるとゲームの評価に影響が出そうなくらいにバスっています」


「そうか……。数はどれくらいだ?」


「平均して300くらいのプレイヤー様たちが入れ替わりながらピンデチ周辺に居ります」


「そうか。300くらいであれば、バックグラウンドでプレイヤー様たちのセーブデータをバックアップし続けることはできるな?」


「はい、それは問題ありません。すでにやっております」


「おお、さすがは大谷くん! それに守ってくれているエージェントたちが居ればプレイヤー様たちもグレートリセットを(かか)げる(やから)たちに倒されることはないだろう」


「はい」


「よし。では、わたしもピンデチを守りに行ってくる。早急にプログラムを修復をしてくれ」


「はい、承知しました。……社長、いつも大変なお役目を申し訳ありません」


「はっはっは! 何を言っているんだ大谷くん。わたしにしてみればプログラムを直してもらうほうが大変なお役目だ。頼んだぞ」


「はい。お任せを」


 大谷は返事をすると、早足で社長室を後にした。


 すると社長はおもむろに腰を上げて、報告をしに来た社員に指示を出した。


「わたしはログインしてピンデチを守りに行く。バトルに自信がある社員を集めてくれ」


「は、はい!」


 報告をしに来た社員は急いで社長室を後にした。


 ◆


 その頃、おじいさんたちはピンデチの5箇所に分かれて侵入者を警戒していた。


 ピンデチの入り口には、ベンドレ、黒ちゃん、そして夕方近くになってログインしてきたロビ、ミツ、ゆぅのベンドレ・チーム。


 裏口には、ララガを連れたナミ、メイ、マユ、おばあさん、そして美咲と哲夫と和代のスマイル道具店チーム。


 中心には、いつでも遠距離攻撃で援護できる、イリューシュ、ルル、翠、めぐ、そして転移してきた敵に対応するため、ライラと海が防御役のエージェント・チーム


 G区画とH区画周辺には、おじいさん、大熊笹、アカネ、茂雄のG区画チームと、アーボンの家チームが一緒になった、ひろし:チーム。


 時計台周辺には社長と社員たちのイグラァ・チーム。


 そして空からはドラちゃんと背中に乗った黒猫とハデスが警戒していた。


 チームのメンバーは空のドラちゃんと、ピンデチのはずれのおじいさんたちを除いて、たくさんのプレイヤーたちに囲まれながら記念撮影に応じていた。


 特に裏口のスマイル道具店・チームは大人気で記念撮影をするプライヤーたちが絶えなかった。


「わぁ! ララガかわぃぃ」

「ナミさんですよね、テイマーの!」

「すごい!」


「あ、これ大司教のローブ!」

「え、ほんとだ! すごい!」


「ええっ! うそ、カワセミさんだよね」

「え、やば! カッコイイ!」


「いつもお世話になってる店のコだ!」

「知らなかった強いんだね」


 スマイル道具店のメンバーが記念撮影に応じていると、美咲が突然走り出した。


 ダダッ!


 すると、それに気づいた1人のプレイヤーが逃げ出した。

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