第6話 ひろし、スクランブル
アーボンはイリューシュとルルの会話を聞くと、内容を察してイリューシュに尋ねた。
「イリューシュさん、もしかしてタケチのグレートリセットを悪用して誰かが……」
「ええ。無差別に弱いプレイヤーに襲いかかるプレイヤーがグレートリセットと叫んでいて……」
「……なるほど。って事は無差別殺戮をしているプレイヤーの責任が全部タケチに……」
「はい、そういう事になりますね……」
するとその時、ルルが会話を遮るように言った。
「ちょっ、コレ見てイリューシュ。偵察してURL手に入れた『グレートリセット会員限定配信』始まった。これ、やばいかも」
イリューシュはルルから送信された動画のリンクを選択すると、「ライブ配信」と書かれた動画が再生された。
「えっ、タケチさん!?」
イリューシュは思わず声を漏らすと、アーボンが驚きながら尋ねた。
「え、タケチが何かしているんですか?」
「え、ええ。いまライブ配信を……」
「えっ!? そんな馬鹿な!」
アーボンは慌てて部屋から庭に出て走り出すと、下にあるアーボンのチームの家を見下ろした。
しかし、チームの家の窓からはタケチとマラツンたちが家の中で楽しそうに話しているのが見えた。
「やっぱ居るよな」
アーボンは急いで部屋に戻ってイリューシュに報告した。
「タケチ、下の家に居ます。何かの間違いじゃ……」
それを聞いたルルは呟いた。
「AIで作ったフェイク動画ね」
そしてルルは急いで部屋から出ていった。
イリューシュはアーボンに「ライブ配信」のURLリンクを送ると、少し真剣な表情でアーボンに言った。
「アーボンさん。いま、何者かがタケチさんになりすましてライブ配信をしているみたいです」
「な、なんだって!?」
アーボンは慌てて「ライブ配信」のURLリンクを開くと、なんとタケチが堂々とした口調で演説をしていた。
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いま、立ち上がるべきです! バトルの無いゲームの何が楽しいのでしょうか!
アーボンさんが消され、ベンドレさんが消され、マリさんも消され……
このゲームはバトルの強いプレイヤーを次々と消して平穏な暮らしを強要している!
いまこそ、この世界を壊すのです!
まずはピンデチを破壊しましょう!
グレート・リセットの幕開けです!!
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それを見たアーボンは驚いた表情で声を漏らした。
「これ、タケチのフェイク動画配信か……。ちょっとヤバいっすねイリューシュさん」
「ええ。タケチさんのAIフェイクの事を運営本部に報告しておかなくてはなりませんね」
「はぁ……。タケチ、とんでもない事に巻き込まれちまったなぁ。それにしてもピンデチを破壊するって言ってましたけど、どういう事なんすかね?」
「そですね……。ピンデチでは戦闘できませんし、建物も破壊できませんし……」
するとその時、イリューシュに緊急のボイスチャットが入った。
「エージェント、緊急事態だ! ピンデチでプレイヤーが戦闘をしている! 急いで対処に当たってくれ!」
「えっ!?」
イリューシュは思わず立ち上がって声を上げると、驚いたアーボンがイリューシュに尋ねた。
「イリューシュさん、どうしたんすか!?」
「大変です! ピンデチで戦闘が!」
「え、ま、マジすか!?」
ドガン!!
するとその時、庭で大きな音がした。
イリューシュとアーボンは窓から庭を見ると、なんと庭の桜の下で茂雄が3人の騎士たちと戦っていた。
「茂雄さん!」
「あいつら!」
イリューシュとアーボンが急いで庭に出ると、なんと玄関の前でも、おじいさんたちが大勢のプレイヤーたちと戦っていた。
イリューシュは弓を持って茂雄と戦っている騎士たちに矢を浴びせると、アーボンも走っていて両手剣で斬りつけた。
「でやつ!」
ズバッ!
「えっ!? HPがっ! 嘘だろ!」
シュゥゥゥウウ……
アーボンの異常な攻撃力で1人を消滅させると、茂雄はその後ろにいた騎士に伝家の宝刀の右フックを炸裂させた。
ズバン!!
「クッ……。ピンデチの村の雑魚ごときに……」
騎士は消滅していくと、残りの騎士もイリューシュによって倒され、消滅していった。
「アーボンさん、茂雄さん、ひろしさんたちに加勢しましょう!」
「はい!!」
「はい!」
イリューシュはアーボンと茂雄と共に走り出すと、なんと空に無数の光の魔法陣が現れた。
それを見たイリューシュはG区画へと続く道のほうを見ると、ルルが沢山の騎士に囲まれているのが見えた。
「ルルさん!」
イリューシュが思わず声を漏らすと、空の魔法陣から無数の光の矢が降り注いだ。
スダダダダダダダダダダダ!
「うぁぁああ!」
「ひ、光の魔法なんて聞いてねぇぞ!」
「く、くそう……」
ルルを取り囲んでいた騎士たちは一斉に消滅していった。
「ルルさんは大丈夫そうですね」
イリューシュはそう言うと、おじいさんたちが戦っているプレイヤーたちに弓を引いた。
その頃、アーボンのチームの家ではタケチとマラツンが召喚したベヒーモスが家の前で騎士たちと戦闘になっていた。
「タケチさん! 後ろから来ます!」
「はい!」
「ベヒーモス! 雷撃だ!」
ブモォォォオオ!
パンッ! バリバリバリバリ!
しかしその時、マラツンがタケチに叫んだ。
「タケチさん、すみません! ベヒーモス、HPが限界っす!!」
「大丈夫! ベヒーモス戻して、家の中に逃げて!」
「す、すす、すみません!」
タケチはマラツンと仲間たちを家に避難させると、片手に持っていた盾を仕舞って片手剣の二刀流に変更し、眼光鋭く呟いた。
「やっとアーボンさんとの居場所ができたんだ……。ここは、僕がぜったいに守る」
タケチがそう言った瞬間、敵の騎士の一人が慌てた様子で声を漏らした。
「あっ! え!? タケチさん!?」
するとそれを聞いた敵の騎士たちは一斉に武器をおろして次々に声を漏らした。
「た、タケチさんだ!」
「え? なぜ」
「すみませんタケチさん!」
「こんな所に居るなんて知らなくて」
タケチは驚いていると、敵の騎士たちは武器を仕舞って頭を下げた。
◆
その頃、ピンデチの村のメインストリートではおばあさんたちと、偶然スマイル道具店に全回復薬を買いに来ていたベンドレと黒ちゃんが共に侵入してきた敵と戦っていた。
ベンドレと黒ちゃんを攻撃の中心にしてマユが周りから攻め、メイと黒猫の防御魔法陣の後ろからナミとおばあさんが攻撃して、順調に敵のプレイヤーたちを減らしていた。
「メイ! 横から何人か抜けてそっち行った!」
「おっけー! まかせて!」
メイはマユの声に返事をすると、店の中で待機させていたドラちゃんに笑顔を見せながら言った。
「ドラちゃん、出番だよ!」
「はっ」
ドラちゃんはイケメンの姿て店から飛び出すと、真空波攻撃の態勢をとりながら瞬間移動するかのようにプレイヤーたちを切り裂いた。
シャッ!
敵のプレイヤーたちは突然HPがゼロになってうろたえた。
「え?」
「HPが! まじかよ!」
「な、何が起こった!?」
シュウゥゥゥウ……
敵のプレイヤーたちは消滅していった。




