第68話 アーボン、必殺の剣
ミナモトの一団は敵の集団を囲みこむと、一斉に鬼切丸の太刀で斬りつけ、敵の集団を消滅させた。
反対側の端でもミナモトの一団は強固な壁となって敵のプレイヤーたちを徐々に中央へと押しやっていたが、敵も反撃をし始め、とうとう中央突破するために土壁を破壊し始めていた。
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たくさんの土壁の奥で指揮を執っていた清はボイスチャットで現場の状況を聞くと、同じく状況を聞いていた補佐のヨリトミが大きく頷いて清に言った。
「清さん。敵も左右の圧力に耐えきれず反撃を始めましたね」
「はい。これ以上左右から圧力をかければ、こちらも危ういかもしれません。中央の土壁を消しておびき寄せましょう」
清とめぐは中央の土壁を消滅させて、ベンドレたちが待ち構える本陣へと一本道を作った。
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中央の土壁が消えると大勢の敵のプレイヤーたちが罠かもしれないと知りながらも走りこんできた。
その状況の報告を受けた清はヨリトミに言った。
「ヨリトミさん、やはり多くのプレイヤーが入ってきましたね」
「はい。彼らは腕に自信があるのでしょう。罠かもしれないと思ったはずですが、飛び込んできたのですから」
「間違いありませんね。敵は相当の自信を持っているかと……」
「ええ。では清さん、ハイレベルな敵はベンドレさんたちにお任せしましょう」
「はい。私はアーボンさんたちと一緒に後ろに残っている敵のせん滅に向かいます」
「承知しました。では私もベンドレさんの加勢へと急ぎます」
「ではご武運を!」
「はっ! 清さんも、どうかご安全に!」
こうして作戦は2段階目へと移行した。
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罠と知りつつも飛び込んできた敵の集団は、連携をとる様子もなく、1人で待ち受けているベンドレに一直線に突っ込んできた。
先頭のベンドレは居合抜刀の構えを見せると、敵の先頭の剣士が顔を歪ませて笑いながらベンドレに突っ込み、沢山の敵プレイヤーたちもそれに続いた。
しかしベンドレはニヤリと笑って左へ飛び込んで伏せると、なんと少し後ろでゴーストとメイがウィンド・ブッチャーの構えを見せていた。
「メイさん、では砂浜スレスレで」
「わかった! 超がんばるね!!」
「ふぅぅんん!!」
「ウィンド・ブッチャァァアアア!!」
ズザザザザザザザザザ!!
ズザザザザザザザザザ!!
ゴーストとメイのウィンド・ブッチャーは大量の砂を巻き込んで威力を増しただけでなく、大量の砂埃もまき散らして一面を砂の嵐のように視界を遮った。
ゴゴゴゴゴゴゴ……
すると、敵を包み込んだ砂嵐の中からメチャクチャに矢が飛び出したり、あらぬ方向へと魔法が発動されたり、突然空に向かって召喚したモンスターが飛び出したりして、敵は完全にパニックに陥った。
その状態になるやいなや、遠距離攻撃のできる仲間たちが一斉に飛び出した。
ルルは砂嵐に向かって光の矢を落とすと、おばあさんも続いて氷の氷柱を投げ込み、マラツンがベヒーモスで雷撃を食らわせ、イリューシュがオロチの矢を何度も放った。
◆
その頃、後方に残った敵のプレイヤーたちとは、おじいさんと清、大熊笹と茂雄とアカネ、スノたんとナミ、マユとめぐ、ツックンとサソリとマムシがそれぞれチームになって戦い、アーボンがトドメを担当していた。
中でも、おじいさんと清のペアは抜群のコンビネーションで敵を減らしていた。
おじいさんと清は離れることなく一緒に移動すると、清が土壁を2枚作って防御し、おじいさんは2枚の土壁の隙間を縫うように火薬玉を投げつけていった。
そして敵の遠距離攻撃で土壁が壊されると、即座におじいさんがネバネバの実を投げて足止めをし、その隙に清が新しい土壁を作り出して防衛した。
そして清は、隙を見ては素早く魔法回復薬で回復し、敵が多く集まってきたら土壁を放棄して、おじいさんと一緒に離れることなく移動していった。
その戦いぶりを見ていたマユとめぐは、戦いながら感心したように話した。
「めぐ! ひろしさんと清さん、すごいね!」
「ほんと! わたしたちも負けてられないね」
めぐはそう答えると、マユに迫る敵に岩の塊を命中させ、シールドバッシュではね飛ばした。
ドガァァアアン!!
するとそれに連携するようにマユはめぐの盾を使って駆け上がると、駆け上がり脳天割りを放って敵にトドメを刺した。
その頃、スノたんとナミはスノたんの王の盾を中心にドラゴンステップを連発して止めどなく矢を放って攻撃していた。
敵のプレイヤーたちはナミの正確で絶え間ない攻撃に怯みながらも、少しずつ前進していた。
するとその時、アーボンが現れてナミのサポートに入った。
「ナミちゃん、手伝うよ!」
しかしナミは矢を放ちながらアーボンに言った。
「でも、ァーボンの剣、ぁたらなぃ」
それを聞いたアーボンは腰の両手剣に手をかけると、嬉しそうに答えた。
「ふっふっふ。それは前までのおれの話さ。今のおれは、スキルを手に入れたぁ!!」
「ぇ? ぃままでスキルつかえなかったの?」
「え、あ、ははは……、実は……。で、でで、でもっ! 今はベンドレ師匠のように居合抜刀が使えるようになった! 今こそ試すとき!!」
アーボンはそう叫ぶと敵のプレイヤーたちに向かって走り出した。
そして王の盾で防衛しているスノたんに並ぶと、目を少し伏せてゆっくりと息を吐き、静かに腰を落とした。
その様子を見たスノたんは、いつもと様子がちがうアーボンの気配を察知して笑みをこぼした。
「ふっ……。アーボンさんも、やる時はやるようね」
アーボンは迫りくる敵のプレイヤーたちを静かに睨みつけると、両手剣に手をかけて雄たけびをあげた。
「必殺!! 居合抜刀ぉぉぉうぅぅっ!!!」
アーボンは、両手剣では制御が難しい片手剣のスキル「居合抜刀」を気合もろとも発動すると、アーボンの右手は薄っすらと輝いて閃光が走り、一瞬にして両手剣が鞘から飛び出した。
スカッ
「あれっ!!」
なんとアーボンは引き抜いた両手剣を制御することができず、ものすごい速さで両手剣を投げ飛ばしてしまった。
「うわわわわわ!! 剣が飛んでっちゃった!!!」
しかしアーボンが投げ飛ばした剣は、高速に回転しながら次々と敵のプレイヤーに当たって大ダメージを与えたり、消滅させたりしながら一直線に飛んでゆき、そのまま海へと落ちていった。
アーボンは慌てて他の両手剣を装備すると、横にいたスノたんがアーボンに言った。
「アーボンさん。笑ってしまったけど、沢山の敵が倒れたわ」
するとナミも後ろからアーボンに言った。
「ァーボン。カッコゎるかったけど、リキャストしたら、またやって。それ、つよぃ」
「え、お、おぅ……。でもこの分だと、毎回剣がなくなっちゃうんだけど……」
「だいじょうぶ。ァーボンはプクナだけはぁる男」
「ま、まぁ、そうだな。おっけー、任せとけ! ある意味、おれにしか出来ない必殺技ってことだよな!」
「ぅん。ァーボン、たすかる」
その後も、大熊笹と茂雄とアカネも連携をとりながら敵をさばいてアーボンがトドメを刺し、ツックンとマムシとサソリもハヤブサの武器を生かしながらマムシがアイテム類で敵をけん制して勝利を重ねていた。
するとその時、ヨリトミから全員にボイスチャットが入った。
「敵の数も減ってきました! 最後の作戦に入ります! 我らミナモトの一団は防具を解除して突撃! みなさんは中央を進んでベンドレさんたちと挟み撃ちをお願いします!」
こうして作戦は最終局面に入った。




