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第66話 ひろし、海を楽しむ

 おじいさんたちは砂浜で遊んだり、タッちゃんやララ助やお母さん、茶太郎にちゅちゅチュールをあげたりして遊んでいると、あっという間に夕方になってしまった。


 するとその時、沖の方に1隻の船が見えてきてイリューシュにボイスチャットが入った。


「エージェント。わたしだ」


「はい社長。イリューシュです。到着なされましたね」


「うむ。今から着岸するので、皆に知らせてくれ」


「承知しました」


 こうして、社長たちを乗せた船は砂浜に着岸した。


 ◆


 船からは、社長、大谷専務、鶴居田常務をはじめとした戦闘が得意な社員たちと、翠と黒のメンバー、ライラと海、そしてイークラトからピンデチに移住してきたレインたちが降りてきた。


 降りてきたレインはイリューシュを見つけると笑顔で手を降り、ニジも清を見つけると嬉しそうに手を振った。


 そして翠も美咲を見つけて手を振り、ライラと海はルルに頭を下げた。


 社長を先頭に社員たちは、おじいさんたちに一斉に頭を下げると、社長が大きな声でおじいさんたちに言った。


「皆様のご協力、大変感謝いたします! 本日は夕方になりましたので、夜間は我々が引き継ぎます!」


 こうして砂浜の警備は社長たちが引き継ぐことになった。


 ◆


 おじいさんたちはログアウトしていったが、めぐとマユ、大熊笹とアカネと黒ちゃん、そして清は砂浜に残っていた。


 めぐとマユは興味津々で社長や大谷専務、戦闘の得意な社員たちのスキルを目をキラキラさせながら勉強し、大熊笹とアカネと黒ちゃんは砂浜で稽古を始めた。


 そして清はレインたちの輪に入って嬉しそうにニジやレインたちの話を聞いていた。


 常務の鶴居田は沖を眺めながらウンウンと頷き、WEBブラウザを開きながら呟いた。


「ふむ。やはり夜に敵襲は無さそうだな。夜ともなれば、この島も真っ暗になり戦いづらい。それにSNSを検索しても強いプレイヤーを集めるような動きもないな」


 鶴居田の呟き通り、夜は平和に過ぎてゆき、翌朝も特に何も起きずに過ぎていった。


 ―― 翌日のお昼頃 ――


 おじいさんたちは、少しずつログインして島に転移してきて社長たちと交代すると、今日も砂浜でバーベキューをしたり、海で遊んだりしていた。


 そしてナミは、なんとイグラァから貰った荷台つき三輪モービルの運転を練習していた。


 あとから転移してきたメイとマユはナミを見つけると、驚きながらナミの元へと駆け寄った。


「ちょ! すごっ!!」

「え! ナミ運転!?」


「ぅん。朝ぃちで原付免許とってきた」


「え、やば! 免許ってそんなスグ取れるの?」

「ナミすごいよ! 今日いきなり合格でしょ?」


「ぅん。試験場行きのバスの中でべんきょぅして楽勝だった」


「え? 原付免許、そんな簡単なの?」

「でもメイ、90点以上取るんだよ?」


 するとナミはウィンカースイッチを動かしながらマユに言った。


「マユ。ゎたし、勉強してルールはゎかったけど、コーシャタとかの公道にはぃったら、ウィンカーとか、ちょっと自信なぃ。ぉしえて」


「もちろんだよ! じゃあ練習しよう!」


 こうしてナミの運転練習が始まった。


 ◆


 その頃、島の大きな寺ではヨリトミとミナモトの団員たちが話し合っていた。


「ヨリトミ様! さすがに、あまりにもピンデチの皆様に顔を出さないのは失礼なのでは!」


 しかしヨリトミは冷や汗を流しながら答えた。


「そ、それは百も承知だ! しかし……、しかしだ! 砂浜には水着の女子で溢れている! お前たちは絶えられるのか!?」


 それを聞いた団員たちは一斉に顔を下に向けた。


「そ、そそ、それに今は稲作が大事な時期だ! 今は稲作に……」


 ヨリトミがそこまで言うと、なんと突然、寺の扉が開いた。


 バンッ!!


「「うわぁぁああ!!」」


 扉の開く音に驚いた団員たちは一斉に振り向くと、そこには水着姿のルルが立っていた。


「ちょっと、あななたち! さすがに最初のヨリトミくん以外に誰も顔を出さないのは良くないわ。誰か顔を出してよ。コミュニケーションって大事よ」


 シャイな団員たちは、ルルの水着姿に戸惑ってアワアワしていたが、ふっくらとした笑顔の団員と小柄で元気な団員だけはヨリトミに言った。


「ヨリトミ様ぁ、ぼくが行ってもいいですか?」

「ならば、僕も行きます!」


 それを聞いたヨリトミは安心すると、笑顔で答えた。


「もちろんだ! お前たちの勇敢な申し出、大変感謝する! しっかりと橋渡しになってくるのだぞ」


「はぁい」

「はい!」


 こうして2人はルルと一緒に砂浜へと向った。


 ◆


 ルルたちが砂浜にやって来ると、なんと砂浜には元交通機動隊の黒ちゃんが描いた交差点や道などがあり、アーボンたちやマラツンたちが総出でナミの運転練習に協力していた。


 ナミは交差点に向って進んでいると、アーボンが「次の交差点を右折」のボードで指示を出した。


 ナミはそれを見て、三輪モービルの荷台に乗っていたマユに質問した。


「マユ、みぎに曲がるのって、ぁっちの道にぃくの?」


 ナミは2車線道路の左側を走っていたが、交差点近くで右折専用レーンが出現したため気になってマユに聞いたのだった。


 マユは3車線目の右折レーンを見ると嬉しそうにナミに答えた。


「そうそう、ウィンカー出して右の車線に移動して!」


「ゎかった」


 ナミは右ウィンカーを出して右折レーンに移動すると、おじいさんが「青信号」と書いたボードを持っていたのでナミはそのまま右折した。


 するとその瞬間、


 ウゥゥウウウウ……


 なんとバイクのモービルに赤色灯をつけた黒ちゃんがナミの後ろまでやって来てナミに言った。


「はい、そこの原付の方、左に寄せて止まってください」


「ぇ?」


 ナミは驚きながらモービルを左に寄せて停止すると、黒ちゃんがナミに解説した。


「ナミさん、原付の二段階右折です」


「ぁ! 勉強してぉぼぇてたけど、実践はなかなかむずかしぃ。黒ちゃん、とっても勉強になった」


 そしてマユも驚いて言った。


「あ、そうだった! わたし車しか乗ってなかったから、すっかり忘れてた。スクーターに乗ってる時は二段階右折だったね。ごめんナミ」


 マユが慌ててナミに謝ると、黒ちゃんは笑顔で道の先を指さしてナミに言った。


「ではナミさん、気を取り直して進みましょう。次は丁字路を左折です」


「ぅん、ゎかった」


 ナミは右ウィンカーを出すと、安全確認をしてから三輪モービルを発進させた。


 ◆


 ナミが運転練習をしている頃、ベンドレを中心に、哲夫夫婦、美咲、大熊笹、アカネ、イリューシュ、ゴースト、そして、おばあさんとG区画の動物たちや眷属たちはバーベキューを楽しんでいた。


 そして昨日は、シロたんとスノたんがスマイル道具店の店番をしていたので、今日は昨日参加していた黒猫とドラちゃんと店番を交代してバーベキューに参加していた。


 シロたんはナミからもらったケンタッキー・フライトチキンを網の端にちょこんと乗せると、嬉しそうに焼けるのを見つめていた。


 するとアカネはドラゴンのスノたんが何を食べるのか気になってスノたんに尋ねた。


「ねぇスノたん。スノたんってドラゴンでしょ? ドラゴンって何食べるの?」


「私は何でも食べるわ。植物からアンデッドまで何でも。でも、人間の姿の時は口が小さいからアンデッドは食べづらいわね」


「うわ、スノたんアンデッドも食べるの?」


「ええ。腐りかけって美味しいの。雪山は食料に乏しいから、何でも食べるようになったわ」


「え、あ、おぉ、そ、そうなんだ。腐りかけ……、ねぇ……」


 アカネは(いやアンデッドって、腐りかけっていうか、腐ってるよね)と心の中で思いながらも笑顔で肉を焼いていった。

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