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第64話 ヨリトミ、斬る

 ―― その日の午後 ――


 スマイル道具店はショッピングモールに完全に移転し、元の店舗は調薬と倉庫として使うことになった。


 そして午後になって慌ててやって来たルルは一等地に驚きながらも哲夫に言った。


「て、哲夫さん! この区画で私たちがお店やっても良いの? ってか、超が付くくらい一等地じゃない?」


「ええ、ルルさんとは協業関係にありますから。ルルさんの店から売れた物の手数料を頂く以上、ルルさんのお店を繁盛させるのは私たちのメリットにもなりますからな」


「で、でも、手数料って言ったって微々たるものじゃない……。人件費に比べたら……」


 すると哲夫は少しだけ真剣な顔でルルに言った。


「では商売の話しましょう。ルルさんのお店に花や虫を買いに来たお客様も、隣の我らのお店でアイテムを買ってくださる可能性が高いのです。その逆もしかりです」


「えっ……。でもだったら、哲夫さんのお店が独占したらそのほうが……」


「いえ、ルルさんのお店の花や虫はルルさんとベンドレさんを慕うハイレベルな方々が持ってきます。これは私たちのルートでは手に入りません」


「え、ええ。それは確かに」


「それに、その方々は花や虫を納品しにこの区画に来れば、スマイル道具店で全回復薬などのハイレベルなプイレイヤーさんたちが必要なアイテムを購入していく可能性が高いのです」


「あっ、確かに!」


「そこで提案なのですが、せっかく協業させて頂いているので、お互いに割引クーポンを発行しようと思うのですが、いかがでしょうか」


「あ、それ、良さそうですね! ウチのコたちもクーポンがあったらアイテム類はそちらで買うし、スマイル道具店さんのお客さんもクーポンもらったらお花とか昆虫を買ってくれるかも!」


「では決定ですな! 早速クーポンをご用意します」


「哲夫さん、本当にありがとう。哲夫さんと一緒に商売できて良かったわ」


「はっはっは。今までの商売人人生で私どもと協業させて頂いた方々は皆、ご発展なさいました。ですからルルさんのお店も繁盛致しますでしょう!」


「やった、嬉しい哲夫さん! これから頑張らないと! 元メンバーのコたちも儲けさせてあげたいし!」


 ルルは笑顔で哲夫の手を握った。


 するとその時、つむぎとミッチとChocoがやって来てルルと哲夫たちに挨拶をした。


「「みなさん、こんにちは!」」


「みんな、こんにちは!」

「あぁ、これはこれは!」

「あ、つむぎちゃんたち」

「わたし、お久しぶりだ」

「みんな、こんにちわ」


 お互いに手を振りあったり頭を下げたりして挨拶を交わすと、つむぎがルルに提案した。


「あの、ルルさん。わたしたちリアルな野菜を収穫することができたんです。もし良かったら、この新しいお店で販売しても良いですか?」


「えっ? リアルな野菜……? って?」


「あ、あの、これなんです」


 つむぎは用意していた試食用のトマトをルルに差し出すと、ルルは片手でつまんで口に入れた。


 もぐもぐ……

「えっ! うまっ!! 超トマト!!」


 するとミッチが用意していたトマトとトウモロコシのピザを1ピース差し出してルルに渡しながら言った。


「あ、あの……、これ、私たちが収穫した物で作ったピザです。ええと……、まだ材料不足で本当はチーズとかがあれば……」


 ミッチがそこまで言うとルルは笑顔で答えてミッチに言った。


「うぅ~ん! もう、すでに匂いが美味しいわよ~。頂くわね」


 ルルはピザの1ピースを受け取ると一口かじりついた。


 もぐもぐ……


「えっ!! やばっ!! なにこれ、本物!? えっ、怖っ!! 美味しすぎて怖いんだけど!!」


 ルルが驚いていると、ミッチは恐る恐るスマイル道具店のメンバーにピザを1ピースずつを差し出していった。


「み、みなさんも、良かったら……」


 ミッチの言葉を聞いたみんなはワラワラとミッチのところへ行ってピザを受け取ると、嬉しそうにピザにかじりついた。


「うわっ! これ凄いかも! やば!」

「えっ! ええっ! あたまバグる!」

「ぅん。小麦のかぉりとトマトの風味」

「おぉぉお! こっ、このピザは……」


 こうして、つむぎたちの野菜とピザはルルのお店で販売することになったのだった。


 ◆


 その頃、東の孤島ではヨリトミが青々と育った稲を眺めながら感慨深く呟いていた。


「なんと美しい風景だ。この島に田んぼの風景はよく似合う……」


 そしてヨリトミは稲の状態を見るとウンウンと頷いて再び呟いた。


「そろそろ中干し(一度水を抜く)の頃だな。しっかり根を育てないと稲穂の重さに絶えられないからな」


 ピィィィイイイ!!


 するとその時、警告を知らせる指笛が鳴り響いた。


 ヨリトミは慌てて櫓番《やぐらばん》をしている仲間を見ると、櫓番《やぐらばん》の仲間は手信号で「不審な船が近づいてくる」と知らせた。


 ◆


 ヨリトミは島の砂浜に近づいてくる船を確認すると、仲間の一団を隠れて待機させ、ヨリトミ1人で対応することにした。


 船は近づいてくると砂浜の浅瀬で止まって正面の出入り口が開き、中から外国人風の騎士が3人降りてきたかと思うと、突然武器を手に持って突撃してきた。


 それを見たヨリトミは防具は付けずに鬼切丸だけを装備すると、敵の騎士たちはニヤニヤと笑いながらヨリトミに斬り掛かった。


「Hahaha! Die!!(はっはっは! 死ね)」


 しかしヨリトミは大きく足を開いて鬼切丸を下段で構えて迎え撃つと、両手剣で突っ込んでくる先頭の騎士に跳び込むように踏み出し、体ごと回転させて斬り上げた。


「あいぃぃい!!」

 ズバン!!


「What!?(何ぃ!?)」


 さらにヨリトミは斬り上げた遠心力を生かして回転し、仰け反っている両手剣の騎士に美しい突きを繰り出した。


「はっ!!」

 ズドッ!!


 ヨリトミの突きは寸分狂わず敵の急所を捉え、敵の騎士は消滅していった。


 するとその時、ヨリトミの横から双剣の騎士が飛び込んできた。


「Good bye, samurai!(サムライ、さよならだ!)」


 しかしヨリトミは冷静に鬼切丸を砂浜に滑らせ、砂粒を敵の双剣の騎士へ浴びせて目潰しをした。


「Sh〇t!!(くそっ!)」


 双剣の騎士が思わず足を止めると、ヨリトミは逆方向から突っ込んでくるハンマーの騎士へと走り出した。


 するとハンマーの騎士は慌ててハンマーを構えた。


 しかしその時、櫓番《やぐらばん》が櫓の上から長弓でハンマーに騎士の頭を射抜いた。


 ズドッ!!

「Oh!!(うっ)」


 ヨリトミは一瞬怯んだハンマーに騎士を見逃さず、滑るようなモーションから、豪快な水平切りで一閃した。


「いやぁぁああ!!」

 ズバン!!!


 そしてその時、


 ズドドドドドドドド……!!


 背後にいた双剣の騎士に一団が放った無数の矢が刺さり、双剣の騎士は消滅していった。


 それを見たハンマーの騎士は、ハンマーを投げ捨ててヨリトミに言った。


「……You win, samurai. I gave in.(おまえの勝ちだ、サムライ。降参する)」


 ヨリトミはそれを聞くと、英語で尋ねた。


「What is your purpose?(お前の目的は何だ)」


「I was ordered to wipe the samurai out on this island.(おれは、この島のサムライを一掃しろと頼まれた)」


「Who gave you the order?(誰が指示を出した?)」


「……I can't tell you that.(それは言えない)」


「Okay. Good bye.(分かった。ならば、さよならだ)」


 ヨリトミは鬼切丸でハンマーの騎士にとどめを刺した。


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