第61話 ひろし、レアアイテムを手に入れる
翌日のお昼、G区画の家ではイークラトのチームからゲットした景品のアイテムを大広間のテーブルに広げてワイワイとお喋りをしていた。
アカネは嬉しそうに良くわからない金属製のアイテムを手に持つと、首をかしげながらイリューシュに尋ねた。
「イリューシュさん、これ、なんすか?」
「それは、電撃罠ですね。戦闘中にそれを地面に置けば、その範囲5mを通った敵は電撃が流れて暫く動けなくなります。かなりレアなアイテムですよ」
「え、そうなんだ! 面白そうだから、もらっちゃお」
すると同じくアイテムを見ていためぐが、赤く輝く小さな溶岩を手にとってイリューシュに尋ねた。
「イリューシュさん。これってレアっぽいんですけど、なんですか?」
「あ、それは一度だけ使えるイフリートの召喚石ですね。その召喚石を地面に投げつければ15秒間だけ炎の召喚精霊のイフリートが戦ってくれます。これもレアですね」
「あ、それ助かるかも! じゃあ、わたしはコレをもらいます」
するとアイテムを見ていた黒ちゃんがおじいさんに言った。
「ひろしさん。こちらのアイテムはひろしさんに有効だと思います」
黒ちゃんは半透明のキャッチャーのプロテクターのようなものを引っ張り上げると、おじいさんに差し出した。
「これはスライム・キャッチャー・プロテクターです。スライムの柔軟な素材で出来ていまして、敵の攻撃を吸収してHPの減少を緩和するのです」
「ほお、なるほど。キャッチャー・プロテクターでしたら前面はほとんど防げそうですね」
「はい。このアイテムは防具の上から装備できるレアアイテムでして、装着した瞬間に透明になり、10回の攻撃を耐え抜きます。ぜひ、ひろしさんに装備して頂きたい」
「そうでしたか。では、すみませんが、わたしはキャッチャー・プロテクターを頂きます」
おじいさんはスライム・キャッチャー・プロテクターを手に入れて早速装備した。
すると黒ちゃんは手袋のようなアイテムと、スニーカーを引っ張り出すと、大熊笹と茂雄に差し出して言った。
「大熊笹先生、こちらはパワーグローブというアイテムで、手につければ腕力が強化されます。茂雄さん、こちらのスニーカーはステップを速くします。ぜひお使いください」
しかし大熊笹と茂雄は笑顔で答えた。
「いえいえ、そちらのアイテムは皆さんが戦った勝利品です。私が頂くわけにはいきません」
「ええ、その通りです。お気持ちだけ頂いておきます」
しかし、おじいさんたちは笑顔で2人に貰ってくれるように促し、大熊笹も茂雄もアイテムを受け取ることにした。
するとその時、黒ちゃんが何か団子のような物を見つけてイリューシュに尋ねた。
「イリューシュさん、これは何でしょうか……。何か団子のようですが」
「ふふふ、それは本当にレアアイテムですね。それはキビダンゴです」
「キビダンゴ? ですか」
「ええ。この世界の動物やモンスターが食べると人間のようになってプレイヤーのように振舞うんです。その人間になったプレイヤーはクエストを進めたり転職できたりするんですよ」
「おお、なるほど。……だとすれば、これは相当なレアアイテムですね。ちなみに、人間になった動物やモンスターは仲間になったりするのでしょうか……」
「はい。元々が動物でしたら良くしてくれた人に懐いたり、モンスターであれば、強いプレイヤーに従う傾向にあると聞きました。確かこのアイテムは、このゲームの初期くらいにソロプレイヤー向けに登場したアイテムですね」
「そうでしたか。……ですが、もしそれが本当であれば、ホワイト・ドラゴンのような強力なモンスターも……」
「あ、いえいえ。眷属にできるのは力の弱い動物やモンスターだけですので脅威はありません。もちろん育てれば強くなることもありますけれど。ふふふ」
「あ、ああぁ、なるほど! 少し驚いてしまいました。はははは!」
黒ちゃんは大笑いしながらキビダンゴをテーブルの上に置くと、イリューシュと相談して残りのアイテムは家の納戸に収納し、みんなが使えそうなアイテムは均等に分けたのだった。
◆
その頃、ピンデチふれあい苑では清がご高齢者たちにマガイルーで買った「魔法陣せんべい」配っていた。
「みなさん、しばらく畑をお手伝いできずに済みませんでした。どうか、みなさんで食べてください」
魔法陣せんべいを貰ったご高齢者たちは一斉に喜ぶと、サヤおばあちゃんが笑顔で清に言った。
「清さん、気を使わないでね! あたしたちが清さんに強くなって欲しいって言ったんだから、畑はあたしたちに任せてくれれば良いのよ!」
「いやぁ、とはいえ……、ははは」
「清さんには強くなってもらって、この世界の色々な所へ行ってもらって、それで、あたしたちを楽しそうな所へ連れて行ってちょうだい。みんな、この世界でも観光したがっているのよ。うふふふふ」
「も、もちろん! いま、アーボンさんという格上の皆様と仲良くなって少しずつ経験を積んでいます。近いうちに皆さんを観光に連れていきます!」
清がそう言うと、ご高齢者たちは拍手しながら口々に清に言った。
「さっすが清さんや」
「楽しみだべなぁ!」
「ええ、そうですね」
それを聞いた清は少しだけ緊張したが、皆さんの期待に応えようと気持ちが高ぶった。
◆
しばらく後、清はアーボンの家にやって来ると、居間にいたアーボンたちに気になることを尋ねた。
「アーボンさん、ピンデチの外れにある『桜の群生地』のアンデッドモンスターはどのくらい強いのでしょうか。私では辿り着けない所なのでしょうか」
それを聞いたアーボンは疑問に思いながらも答えた。
「そうだなぁ……。アンデッドのサムライの亡霊は結構俊敏でさ。もし、おれらが清さんをサポートしたとしても、まずハデスの闇属性がアンデッドに効かないから、戦えるのはタケチだけになっちゃうかなぁ」
「な、なるほど……」
「ってか、どうしたんですか清さん。桜の群生地で桜の木が欲しいんですか?」
「え、あ、いえ……。あの……、ピンデチふれあい苑の皆様を桜の群生地へご案内差し上げたいのです。今のところ、一番近い観光地だと思いまして」
「観光……、ですか?」
「はい、何といいますか……。ピンデチふれあい苑の皆さんは、ピンデチから外へ出ることが難しいのです……」
「あぁぁ、なるほど。お年寄りの皆さんはモンスターとは戦いづらいですもんね。そういう事だったら、上のイリューシュさんたちも助けてくると思うので後で話してみますね」
「す、すみませんアーボンさん。なにしろ、我々くらいの歳になると敵と戦う事自体が出来ない方々もいらっしゃって、なかなかピンデチの外に出られないのです」
それを聞いたアーボンは表情を曇らせながら呟いた。
「……それって結構な問題なんじゃないか……? お年寄りの皆さんは戦闘が苦手で、この世界を自由に楽しめないって事だよな……。これは大谷さんに連絡するべき案件だな……」
アーボンはアゴに手を当てながら考え込んだ。
◆
夜、なんとアーボンの家に専務の大谷が菓子折りを持ってやって来た。
「アーボンさん! この度のご連絡、大変参考になりました!!」
大谷は玄関に入るなり直角に頭を下げると、アーボンたちも慌てて頭を下げた。
そしてアーボンは顔をあげると、事の成り行きを説明した。
「大谷さん、実は清さんが桜の群生地にお年寄りの皆さんを連れていきたいって言っているんですけど、お年寄りの方の中には戦闘ができない方がいるって聞いたんで、これは連絡しておくべきかなぁと思いまして」
「いえ、大変貴重なご意見でした。今までご高齢者の方々は、ひろしさんたちをはじめ、元自衛官の方々はベイリゲンまでたどり着き、バンドをしている方々もエストンレルトでライブをなさっていたので、心配をしてなかったのです」
「あぁ……、って、その方たちはお年寄りの中でも元気すぎる方々ですね……。たぶん普通のお年寄りは戦闘なんか出来ないですよ」
「そう言われますと、何も返す言葉がありません……。しかし、早速対策を打たせて頂きました」
「え、まじっすか!? 早っ!」
「アーボンさんからご連絡を頂いてから暫くして、『ピンデチふれあい苑サポートメンバー』を募集したのです。すると、ピンデチふれあい苑のスタッフルームに住む代わりにサポートしたくださるプレイヤー様が」
「それは良いですね! そのプレイヤーがある程度強ければ皆さんのサポートになりますもんね」
「はい。しかもサポートに名乗り出てくださったのはイークラトでも名の知られた5名で、ザ・フラウ頂上決戦のイークラト代表の方たちなのです。ちょうど昨日、ひろしさんたちと模擬戦もしたようで」
「ええっ! ってか、完璧すぎるサポートですね。じゃあ、桜の群生地に行くのも楽勝ですね」
「はい。早速明日、社長のマイクロバスで桜の群生地に行く予定です」
「いやぁ、それを聞いて安心しました。お年寄りの皆さんも、この世界を楽しんでくれるといいなぁ〜」
アーボンが満面の笑顔になると、大谷もめずらしく嬉しそうに笑った。




