第60話 アーボン、不正入手したアレ
ゴーストは自陣の砦で最後の味方になった賢者と話していた。
「とうとう我ら2人だけになってしまったな」
「はい、ゴーストさん。アーボンなかなかやりますね」
「まさか、これほどとはな。しかし、リスポーンした賢者からの情報によれば、手練れの老人は離脱し、メイさんとナミさんは戦意喪失という事だ」
「それは逆に言えば2対2の戦いということですね」
「ああ。現在の敵はアーボンさんとタケチさんのみ。彼らは間違いなく砦を守っているだろう」
「どうしましょうかゴーストさん。攻めますか?」
「いや。敵には俊足スキルを使えるタケチさんがいる。我ら2人で攻めれば、隙を突かれて先にタケチさんが我らの砦の水晶を破壊するだろう」
「しかし、我らのどちらか1人が攻めに行っても……」
するとその時、なんとタケチが俊足スキルでゴーストたちの砦を急襲してきた。
「でやぁぁあああ!」
「タケチさん!」
「しまった!!」
ゴーストと賢者は杖すら装備していなかったので完全に出遅れた。
ゴーストは慌てて杖を装備したが、タケチはパリィでゴーストの杖を弾き飛して俊足で反転し、賢者に向って居合抜刀の構えを取った。
そして全力で賢者を斬りつけると、仰け反った賢者を踏み台にスキルの駆け上がり脳天割りを放った。
「やぁああああ!!!」
ズドン!!!
「うわぁぁああ!」
賢者はタケチの攻撃にHPを大幅に減らして吹き飛ぶと、ゴーストはタケチと賢者の間に大司教の防御魔法を展開してタケチに言った。
「タケチさん、素晴らしい急襲でした。ですが、ここまでです」
しかしそれを聞いたタケチはニヤリと笑い、業炎の壺を片手で抱えられるだけ出現させると、急いで着火剤を片手剣に振りかけて着火し、シールドバッシュで賢者を守る魔法陣へと突っ込んでいった。
ガオォォオオン!!
パリッ
タケチの渾身のシールドバッシュはゴーストの防御魔法陣にヒビを入れた。
そしてタケチは業炎の壺と火のついた片手剣を防御魔法陣へと投げ込むと、業炎の壺は大爆発を起こしてゴーストの防御魔法陣を破壊し、HPが残り少なかった賢者は爆発に巻き込まれて消滅していった。
タケチは爆発を盾で受けながら吹き飛んだが、受け身を取って立ち上がって、慌てて全回復薬を出現させて飲もうとした。しかし、
パリン!
そこへ正確にゴーストのウィンド・カッターが炸裂し、全回復薬は弾け飛んだ。
タケチは諦めて新しい剣を構えて腰を低くすると、ゴーストはタケチの俊足スキルがリキャスト時間に入って使えなくなったと察してタケチに言った。
「タケチさん、ここまでのようですね。ですが、さすがの攻撃でした」
ゴーストはそう言うと、タケチにウィンド・ブッチャーを放った。
◆
ゴーストはタケチを倒すと、ゆっくりとした足取りでアーボンの砦へと向った。
途中、湖の上でくつろいでいるメイとナミを見つけると、思わず小さく呟いた。
「メイさんもナミさんも、戦いをやめて楽しんでいるな」
ゴーストは少し笑顔になると、そのまま湖の横を進んでアーボンの砦が見えるところまでやって来た。
ゴーストは砦の壁にもたれかかってガックリと座っているアーボンを確認すると、砦の近くまでやってきてアーボンに言った。
「アーボンさん、見事な作戦でした。では最後に一騎打ちといきましょう」
それを聞いたアーボンはゴーストに気づいて立ち上がると、暗い表情でゴーストに答えた。
「そうだよな……。ゴーストさん、最後にメイちゃんとナミちゃんにボイスチャットしていいかな」
「ああ、それは問題ない」
するとアーボンはメイとナミにボイスチャットを繋いだ。
「メイちゃん、ナミちゃん! ゴーストさん、引っかかったよ!!」
それを聞いたゴーストは急いで杖を構えて詠唱を始めようとしたが、なんと砦から清が飛び出して来てゴーストの前に出た。
ゴーストは清の出現に驚いて防御魔法陣を展開すると、ドラゴン状態のシロたんに乗ったナミとメイが遊覧船から全速力で向かってきた。
メイは全速力で飛ぶシロたんの背中でアワアワしながらもゴーストに言った。
「ご、ごご、ゴーストさん! だ、だまして、ごご、ご、ごめんね!! は、ははは、はは」
メイがアワアワしていると、ナミはシロたんをゴーストの後ろへ着地させた。
ザザァァァアア……
メイは、体を伏せたシロたんからヨッコラショっと降りると、堕天の杖を装備してゴーストに言った。
「ゴーストさん、わたしがこの杖もってるとヤバいって聞いたけど、ほんと?」
するとゴーストは苦笑いをしながらメイに言った。
「全て悟られていたようですね……」
そしてアーボンたち4人に囲まれたゴーストは、完全に不利な戦いだと悟って両手を挙げながら言った。
「はっはっは! これは完全に私の負けです! 降伏します!」
ゴーストはそう言うと「降伏」を選択して模擬戦は終了した。
◆
その後、森の島の船着き場でアーボンはゴーストから闇属性吸収のローブを受け取ると、アーボンは深々と頭を下げながらゴーストに言った。
「ゴーストさん、正々堂々と戦わなくてごめんなさい。でも、どうしても闇属性吸収のローブは手に入れときたくて」
「いえいえ、アーボンさん。とんでもない。あれは立派な戦略です。我らは実力では有利でしたが、戦略に負けました」
「いやぁ、そう言ってもらえるとウチのリーダーも喜びますよ」
「えっ? リーダーですか? アーボンさんがリーダーでは無くてですか」
「ええ。ウチのリーダーはあちらの清さんなんです。今回の作戦も全部やってくれたんですよ」
それを聞いた清は足早にゴーストの前に出ると深々と頭を下げてゴーストに言った。
「この度は姑息な手段で格上の皆様と戦ってしまい申し訳ございませんでした」
しかしゴーストは清以上に頭を下げて清に言った。
「清さん。我々は数え切れないくらい有能なリーダー率いるチームと対人戦を行ってきましたが、今回は完全に翻弄されました。素晴らしい戦略でした。参考にさせていただきます」
ゴーストの言葉を聞いた清は思わず涙ぐむと、嬉しそうにゴーストに答えた。
「ゴーストさん、あなたのような魔法の頂点に立つようなお方にそう言って頂けて幸せです! ありがとうございます!」
清がそう言うと、ゴーストは清の人柄に感銘を受けて優しく握手を求めた。
◆
アーボンたちは森の島の模擬戦で勝利を収めると、アーボンの家で祝賀会を開いていた。
アーボンはイグラァビールを片手に持つと、嬉しそうに乾杯の音頭をとった。
「ではっ!! 本日の勝利と、清さんの正式なリーダー就任を祝して! かんぱーい!!」
「「かんぱーい!!」」
アーボンたちはイグラァビールを、メイとナミはイグラァソーダを煽ると、アーボンは大量のスイーツをテーブルに出現させてナミとメイに言った。
「ナミちゃんとメイちゃんにはホントお世話になっちゃったからな! 貴重な限定スイーツ、たくさん食べちゃって!!」
するとそれを見たメイとナミは驚きながら声をあげた。
「え、やば! 溶岩ようかん、しっとりクリーム&マロンって初めて見たかも!」
「こっちは、ドラゴンぃちご大福。見たことなぃ。アーボンなかなかゃる」
それを聞いたアーボンはドヤ顔で言った。
「おれが何年このゲームやってると思ってるんだぃ? おれは限定品が出るたびに不正をして大量購入してきたんだぜ? この世界には賞味期限がないからな!」
するとアーボンはさらに過去の限定スイーツを出現さて言った。
「じゃあ、これも食べちゃって! こっちは魔法陣せんべいスパイシー七味に、焦がし醤油味、んでこっちは爆弾シュークリームのチョコレート味に、濃厚ミルク味だぜ!」
それを聞いたメイとナミは嬉しそうにアーボンに言った。
「ちょ、アーボンさん天才!」
「アーボン、なかなかゃる!」
こうして祝賀会は大盛りあがりで始まり、みんなは楽しく過ごしながら夜が更けていった。




