第59話 メイ、くつろぐ
攻撃目標を失った敵の大司教はハッと気づいてメイのほうを見ると、メイはすでにウィンド・カッターを発動して敵の大司教へと放っていた。
「く、くそう」
敵の大司教は防御魔法陣を展開してメイのウィンド・カッターを防ぐと、なんとその瞬間、敵の大司教の足にシロたんの尻尾が絡みついた。
「えっ!」
そしてシロたんはそのまま敵の大司教を湖の中へゆっくりと引きずり込むと、逆にナミを乗せた頭を湖の上に出してナミに言った。
「ナミ様。このままあの人を湖の中に入れておけばいいのよね。なんだか杖で必死に叩いてるけれど」
「ぅん。大司教の風のまほぅは、ぉ水の中だと前にすすまなぃ。ゎたしたちの勝ち」
「そうみたい。あの人消えちゃったわ」
こうしてナミとメイは清の作戦で大勝利を納めたのだった。
◆
その頃、ナミがスノたんと一緒に空へ飛び上がった時に確認した賢者たちの位置情報はボイスチャットで全員に伝わっていて、砦の3人は会議をしていた。
アーボンはその情報を聞いてから腕を組んで考え込んでいた。
「敵の賢者の1人はアスレチックで待機してて、残りの2人は湖の両側から1人ずつ攻めてきてる。ちょっと予想外だなぁ」
それを聞いた清は冷静に判断してアーボンに言った。
「はい。確かに少し想定外でした。ですが、面白い策があります。タケチさんには砦の護衛に回っていただきます。そして私とアーボンさんは湖の右側の賢者へ向かいます」
「おっけー!」
「はい!」
こうしてアーボンたちは次の作戦へと移行した。
◆
湖の右側を走っていた敵の賢者は、遠目に清と清に謝っているアーボンを発見すると、仲間割れかと思い、木の陰に隠れて暫く様子を見ることにした。
アーボンは困った様子で清に言った。
「すいません、清さん! 何でもするんで、この模擬戦をやめるなんて言わないでくださいよぉ」
「アーボンくん、そうは言っても私にとっては時間の無駄なんだよ。わかるかね?」
清は芝居するようにアーボンに言うと、アーボンは大げさに言った。
「清さんが大司教で賢者、それに光の魔法まで使える凄い人だとは分かってます!! ですが、そこをなんとか! 今回の模擬戦は勝ちたいんです!」
「私だって、こんな岩の杖なんか持って正体を隠すのはプライドが許さないんだよ! 君が言っている敵を油断させる作戦というのも、どこまで敵に通じるのかね?」
その会話を聞いた賢者は冷や汗を流しながら全員にボイスチャットを繋いだ。
「緊急通信、緊急通信。敵の老人は大司教で賢者、それに光の魔法も使う手練だ。アーボンが油断させるために岩の杖を持たせていた模様。老人とアーボンは目の前にいる。ゴーストさん、指示をください」
それを聞いたゴーストは驚きながら答えた。
「なるほど、アーボンさんも中々の策士だったか。スノードラゴンといい、白蛇といい、もしかしたら我らはアーボンさんの術中に嵌っているのかもしれん。全員一時退却だ。砦まで戻れ」
「「はい」」
賢者たちは一斉に砦へと戻り始めた。
◆
その頃、湖の左を進んでいた賢者が自陣の砦まで戻ろうと走っていると、なんと目の前にメイとナミがいた。
「うっ、うわっ!」
それを見たメイとナミは思わずお互いに言った。
「ほんとだ。清さんの言った通りだね」
「ぅん。清さん、なかなかゃる」
敵の賢者は慌てて杖を構えると、なんと背後からタケチが俊足で迫った。
シャッ
ドスッ!
「うわっ!!」
敵の賢者は背後から片手剣で突かれると、大ダメージを受けて慌ててタケチのほうへ振り返った。
するとタケチは全力で盾を構えて小さくしゃがんでいた。
「えっ、なんで?」
敵の賢者は思わず声を漏らした瞬間、
「ウィンド・ブッチャー!!!」
なんとメイが敵の賢者の背後からリキャストしていたウィンド・ブッチャーを放った。
「しまった!!」
敵の賢者は慌てて足鳴らしの氷壁を出現させたが、氷壁はウィンド・ブッチャーに破壊されて、殆どが敵の賢者に命中した。
「や、やばい!」
そして最後にナミの矢が敵の賢者に命中した。
ズドッ……
「うわ……、やられたか……」
シュゥゥウウ……
敵の賢者は船着き場にリスポーンした。
◆
清の号令でアーボンたちは全員自陣の砦に戻ると、清は笑顔になりながら皆に言った。
「今のところは作戦が上手くいっているようです。みなさん、ありがとうございます」
清はそう言って頭を下げるとアーボンたちは笑顔で清に言った。
「いやいや、やっぱ清さん凄いよ」
「はい、僕もそう思います!」
「清さん、作戦すごいね」
「清さん、なかなかゃる」
それを聞いた清は照れながらも、次の作戦を説明した。
「ええと、次の作戦は30分以上何もしない作戦です。メイさんとナミさんは遊覧船で湖に出て遊んでいるように見せてください。アーボンさんは……」
こうして次の作戦へと移った。
◆
その頃ゴーストは自陣の砦で味方の賢者たちに指示を出していた。
「こちらは大司教と賢者を失って完全に劣勢だ。敵は総攻撃を仕掛けてくるだろう。ここは全員で砦の防衛をする。準備を怠るな」
「「はい!」」
―― 20分後 ――
アーボンたちに全く動きがなかったので、ゴーストは痺れを切らして味方の賢者に言った。
「おかしい。このチャンスに攻めて来ないのには何かある。君たちは砦の防衛を頼む。私は敵の偵察に行ってくる」
ゴーストはそう言って偵察に行こうとすると、賢者の1人がゴーストに進言した。
「ゴーストさん、これは敵の罠では? ゴーストさんが痺れを切らして偵察に行った瞬間、敵が全員で砦に攻めてくるのでは?」
それを聞いたゴーストは少し考えてから賢者の1人に言った。
「君の意見も一理あるな。では、君が偵察に行ってくれるか?」
「はい。では私が行って参ります」
賢者はそう言うと、ローブのフードを被って走り出した。
◆
賢者は森に隠れながら湖の近くまでやって来ると、なんと湖の上ではメイとナミが遊覧船でくつろいでいた。
ナミは釣りをして釣った魚をララ助にあげると、メイはララ助をワシャワシャと撫でながら遊んでいた。
その様子を見てた敵の賢者は状況が理解できずに考え込んだ。
「これはどういう状況なんだ……?」
ガサガサ!!
その瞬間、なんとアーボンが森の木の陰から飛び出して賢者に斬りかかった。
「とりゃー! 覚悟ー!」
しかし賢者は素早くアーボンの剣をよけて杖を構えると、土壁で防御して距離を取り、杖を構えてアーボンの出方を伺った。
それを見たアーボンは大声で遊覧船のメイとナミに助けを求めた。
「メイちゃん、ナミちゃん! 助けてくれー!」
しかしそれを聞いたメイは芝居するように大声で答えた。
「だって清さん、帰っちゃったんでしょー!? じゃー、わたしたちがアーボンさんに協力する理由ー、ないじゃーん!」
それを聞いた敵の賢者は全てを理解したように感じて頭の中で呟いた。
(なるほど、敵の大司教とテイマーはあの老人のために戦ってたのか)
敵の賢者は炎の最高魔法を発動すると、自分が作り出した土壁ごと吹き飛ばしてアーボンを狙った。
しかしその瞬間、
ズドッ!
なんと背後からタケチの片手剣が刺さっていた。
「しまった! タケチもいたか!」
そして敵の賢者が慌ててタケチから距離をとると、
ドスッ
今度はアーボンの両手剣が敵の賢者の背中を刺していた。
「うっ……、だめだ、やられた!」
敵の賢者が一気にHPを減らして消滅しそうになると、アーボンはわざとらしくタケチに言った。
「タケチ、おれら2人だけになっちゃったけど、頑張ろうな」
敵の賢者はその言葉を聞くと、静かに消滅していった。




